えちえち体験談

ブーンは18歳になったようです

2009/06/18 21:52カテゴリ : その他


「開けろ、エロ本を売れ」

        ――漫☆画太郎著「ババアゾーン」より
―――――――――――――
プロローグ『解禁』

( ω )「…………」

ずっと、時計を眺めていた。
帰宅してからずっと。夕飯を食う時も。風呂に入る時も。
神聖な儀式である自家発電の最中、そして達する瞬間さえ、時計を眺め続けた。

ずっと、この日を待ち続けてきた。
アレの存在を知ったあの日からずっとだ。
そして明日、ようやく禁が解かれる。
ボクは、それが待ち遠しくて堪らなかったんだ。
あと、三秒――――二秒――――
そして――――遂に時計の短針と長針が零で重なった。
( ω )「……来た」

体が小さく、小刻みに震えた。
体の奥底から湧き上がる、はちきれんばかりの衝動に震えた。
でも、それも仕方のない事だろう。待ちに待ったこの日が、遂に来たのだ。
今までいついかなる時もこの日の事を心の何処かで考えていたのだ。

今日は、ボクの誕生日。ボクも、ついに18歳。
これでもう、携帯に保存したエロ画像で自家発電なんて情けない真似とはサヨナラだ。
堂々と誰にも咎められる事無く本屋でエロ本を買える。
そして、携帯とは比べ物にならないサイズのエロスを堪能出来るのだ。

素晴らしい。
まるで、世界がボクに微笑んでいるようだ。
誰も僕を止める事など出来はしない。
( ω )「……」

気付かぬ内に、ボクは右手で拳を作っていた。
いつの間に……いや、違う。
我が相棒も、エロ本という新たなる相手を待ち望んでいるのだ。
ならばやるべき事は一つ。
膨張しきった十代の逸物の様に、勢いよく立ち上がりながら拳を突き上げ、
(#゚ω゚)「STAND UP TO THE VICTORY!」
そしてボクはカーチャンに殴られた。
プロローグ「副題:夜中に叫ぶのは近所迷惑です」糸冬
―――――――――――――
第一話『挑戦』

隣町の本屋、VIPマーケット。
ボクはその店内で立ち尽くしていた。

(;^ω^)「ぐぅ……迂闊に近寄れないお」

エロ本コーナーは、本屋の中でその一角だけ明らかに空気が違っていた。
そこの空間だけ瘴気が満ち溢れている。
臆病者ならば前の通路を通るだけで失禁してしまいかねない、魔界と呼称しても良さそうな空間。
タフガイと一部で噂されているボクでさえ、その領域に十秒留まれば射精。
悠長に本を選びなどしていれば、MISAKURAが発動してしまうだろう。
3mほど離れた場所にいる今でさえ、その瘴気に触れてしまった僕の膝は生まれたての小鹿の様に震えている。
何という禍々しさ。何という淫猥さ。

(;^ω^)「……ここまでとは思ってなかったお」

……正直、ボクはエロ本コーナーを甘く見すぎていた。
本を手に取る前に崩れ落ちかけるなどと、誰が予想出来ようか。

(; ω )「仕方ないお、今日は諦めて……ッ!」

待て……ボクは、今何を考えた。
諦めるだって?
18歳になった瞬間の昂りをもう忘れてしまったのかボクは!
今までの屈辱(オカズは携帯のエロ画のみ)を忘れたのかボクは!
昨日、相棒と共に叫んだアレを忘れてしまったのかボクは!
否ッ!ボクは忘れてなどいないッ!
ボクの心はッ!まだッ!折れてなどいないッ!
ボクはッ!まだ倒れる訳には行かないんだッ!
(#゚ω゚)「STAND UP TO THE VICTORY!」
拳を掲げながらの絶叫。
そう、ボクはまだ戦えるんだッ!

(´・ω・`)「大変申し訳ありませんがお客様、他のお客様の迷惑になりますので……」

( ^ω^)「ですよねー」

そしてボクは本屋から追い出された。
第一話『副題:店内での他人の迷惑になる行為は控えましょう』糸冬
―――――――――――――
第二話『親友』

翌日、ボクは再びVIPマーケットを訪れた。
当然エロ本を購入するのが目的だ。
だが、それより先にあの店員に謝らなければならない。
お店に迷惑をかけるなんて、エロ本を買える18歳の大人として恥ずべき行為を行ったのだから。

( ^ω^)「えっと……いたお」

(´・ω・`)「いらっしゃいませ……って、君は昨日の」

( ^ω^)「昨日はホントすいませんでしたお」

(´・ω・`)「反省しているのならいいんですよ。おっと、他のお客様が呼んでいますので」

失礼します。そう言い残して店員さんは客の声のする方へと消えていった。

( ^ω^)「いい人だったお」

今後は漫画本を買う時はこの店を利用する事にしよう。
ボクはそんな事を考えながら振り返り、昨日の事を思い出しながら足を進める。
( ^ω^)「何もせずに行っても、昨日の二の舞だお」

自我を失っての絶叫。
あれを繰り返してしまえば、今度は出入り禁止になってしまうかもしれない。
出来る事なら出入り禁止だけは避けたい。
町内の本屋だと、知り合いに出会う確率が高過ぎるのだ。
そんな事になったら「エロリスト」などという不名誉な渾名が付けられてしまう。
エロ本のジャンルによっては「エロリーマン」や「痴漢者トーマス」などと言う……
ああ、何て恐ろしい。そんな事になったらボクの人生は破滅だ。
ならば、どうすれば……

( ^ω^)「……お?」

(;゚∀゚)「くぅ……」

足を止めたボクの視線の先には、エロ本コーナーを窺う一人の男。
僅かに見える横顔はとても見知った顔。幼い頃からの親友であるジョルジュだった。
彼の体は小さく震え、その両拳は硬く握られている。
間違いない。彼はエロ本コーナーの瘴気に当てられてしまったのだ。
早く助けないと……彼も追い出されてしまうッ!
(;゚∀゚)「糞ッ……俺は……俺はよぉッ!」

( ^ω^)「ジョルジュ、このまま進んでも無駄死にするだけだお」

(;゚∀゚)「ぶ……ブーン!?何でここに……」

( ^ω^)「それより一度引くお」

(;゚∀゚)「それは出来んッ!逃げるような真似が出来るかよぉッ!」

(#^ω^)「ここはボクらみたいな素人が立ち入れる場所じゃないお!」

(;゚∀゚)「……チッ」
〜〜〜
……辛うじて近くの公園へと退避した僕らは、精神的疲労の余りその場にへたり込んでしまった。

(;^ω^)「……危なかったお」

(;゚∀゚)「……ああ」

本当に危なかった。まさに紙一重。
あと数秒遅かったらジョルジュは精神崩壊を起こしていた事だろう。
( ゚∀゚)「そういやよ、何でお前がここに?」

( ^ω^)「多分……いや、間違いなくジョルジュと同じ理由だお」

( ゚∀゚)「……なるほどな」

僕の言葉にジョルジュがニヤリと笑い、その手を差し出す。
そうだ。ずっと昔からそうだった。ジョルジュが一緒なら、怖いものなど存在しなかった。
そして今回も、ボクらなら……そう、ボクらならきっとやれるッ!
( ^ω^)「我が名はブーン!」
( ゚∀゚)「我が名はジョルジュ!」
( ^ω^)「「我らッ!一心同体阿吽の呼吸ッ!」」(゚∀゚ )
( ^ω^)「「今こそ叫ばん誓いの言葉ッ!」」(゚∀゚ )
(#゚ω゚)「「STAND UP TO THE VICTORY!」」(゚∀゚#)
今この瞬間、最強のコンビが再結成された。
そして、
(#^ω^)「虹最強に決まってんお!」
(#゚∀゚)「惨事のおっぱいに勝てる訳ねーだろ!」
崩壊の危機も迎えていた。
第二話『副題:嗜好に於いてNo1は存在しない。OnlyOneのみが存在する』糸冬
―――――――――――――
第三話『怪物』

拝啓
皆さん、ボクらは何時もの如く隣町の本屋に来ています。
未だ購入までは到っていないものの、あの領域から2m以上の距離ならば平静を保てる様になりました。

( ^ω^)「おっおっ、この調子ならもうすぐ買えるんじゃないかお」

( ゚∀゚)「だな。やっぱ俺らは無敵だぜ」

ボクらが組めばどんな困難にも打ち勝てるし、勝てる者など存在しない。
二人とも、そう心から確信していた。

だが……その根拠のない自信は、ある男の登場によって打ち砕かれた。

('A`)「あ……これにすっか」

やる気が全く無いかの様な言動と格好でエロ本コーナーに侵入したその男。
適当にエロ本を手に取った様にしか見えなかった。
だからこそ……
(;^ω^)「なっ……」

( ;゚∀゚)「まじ……かよ……」

だからこそ、ボクらは戦慄した。
あらゆる動作が自然すぎたのだ。
しかも、自然さの中にあらゆる動作が含まれている。
表紙に記載された作品名、作家名のチェック、表紙の絵師名。
そして……いや、これはボクの予想にしか過ぎない。
こんな事が出来る人間がいる筈が無い。人間にこんな事が出来る筈が無いんだ!

(; ω )「……ある筈が無いお」

(; ∀ )「……ある筈がねえ」

(; ω )「アイツ……あの一瞬で、金額、厚み、作家。その三つを統合して……」

(; ∀ )「……一番コストパフォーマンスの高い奴を選びやがった」

思わず腰が抜けそうになるが、そんな事は許されない。
ボクらはあの化け物の挙動全てを目に焼き付けなければならない。
天が与えてくれた機会を逃す訳には行かないのだ。
(;^ω^)「み、見失っちゃ駄目だお!」

(;゚∀゚)「分かっている、奴はレジに向かっている!」

ボクらは奴を舐めてなどいないつもりだった。
だが、エロ本コーナーさえ抜ければ後はどうとでもなる。
心のどこかでそんな事を考えていたのかもしれない。
だからこそ、そんな甘えた気持ちを粉々に吹き飛ばされてしまったのだろう。

そして――――ボクらはレジで更なる戦慄を味わう事になった。
第三話『副題:不審者ってレベルじゃねーぞ』糸冬
―――――――――――――
第四話『神業』

(; ω )「まさか……」

(; ∀ )「なんて事を……」

奴がレジに差し出したのは一冊、あの時チョイスしたエロ本だけ。
考えられない。まさか、カモフラージュをしないなんて。
エロ本のカモフラージュは、隣町の本屋と並ぶ基礎中の基礎の筈。
それをやらないなんてありえない。
あの奇跡的な挙動の一つ一つが偶然だったというのかッ!

(  ω )「アレはたまたまだったのかお……」

ボクは正直失望していた。
アレほどの行為を一瞬で行う歴戦の勇者と思われる男。
彼がこんなイージーミスを犯すなんて……

(;<○>∀<○>)「……違うッ!アレは全て計算済みの行為なんだッ!」

(;゚ω゚)「おまっ!きめええええええええええええええええ!」

限界以上に目を見開いたジョルジュの叫び。
ボクはその顔のキモさの余り、その言葉の意味に気付く事が遅れた。
(´・ω・`)「税込みで650円になります」

('A`)「じゃ、丁度で。それと袋はいいです」

(´・ω・`)「ありがとうございました。またお越しくださいませ」

( ゚ω゚)「――――ッ!」

言葉が浮かばない。
確かに、確かに複数の本を買えば紙袋に入れるペースが遅れる。
そもそも袋に入れる時点でかなりの時間を必要とする。
ならば単品、袋なしなら時間は劇的に短縮されるだろう。
だが、一歩間違えば変態扱い。奴はそれが怖くないのか?

( ∀ )「あれが……」

(  ω )「もう、言うなお……」

もう、ボロボロだった。
入店したときに満ち溢れていた自信。そんなものはとうに朽ち果てていた。
そしてついさっき、まさに神業としか言えない行為を見た時、ボクは確かに聞いたんだ。
枯れ木の折れる様な、心にヒビの入る音を。

第四話『副題:敗北の味は酷く苦く』糸冬
―――――――――――――
第五話『決意』

……彼が出て行った後も、ボクらは店内に立ち尽くしていた。
ジョルジュは人目に憚らず涙を流していた。

( ;∀;)「……人って、あの領域まで辿り着けるんだな」

(  ω )「……お」

( ;∀;)「しかもさ、俺らよりちょっと上くらいに見えたじゃん」

(  ω )「……お」

( ;∀;)「俺らもさ、あんな風になれるよな?」

(  ω )「でも……」

( ;∀;)「なれるって!俺ら二人なら何でも出来る!そうだろ?」

(  ω )「……」

……そうだった。
ボクらはコンビを組めば無敵だ。
今までがそうであったように、これからもそうでなければならない。
ボクは増長していたのではないだろうか。
努力し、高みを目指す事を忘れてはいなかっただろうか。
一度、心にヒビが入ったからなんだ。
なぁに、却って耐性が付く!

( ^ω^)「ジョルジュ!」

( つ∀;)「おう!」

( ^ω^)「あの人に、弟子入りするお!」

( ゚∀゚)「おう!」

心は折れてなどいなかった。
ただ、傲慢さという古い皮膜を脱ぎ捨てたに過ぎなかった。
ボクはまだ上を目指せる。
二人でならもっと上を。

第五話『副題:この手を離すもんか真っ赤な誓い』糸冬
―――――――――――――
第六話『毒男』

('A`)「はぁ……恥、捨ててるよなぁ」

公園のベンチに座り、つい先ほど買ったエロ本を見つめながら、俺はため息を吐いた。
初めてエロ本を買った時の事は、今でも目を閉じれば思い浮かぶ。
中一の冬休み、お年玉を握り締めて近所の駄菓子屋で買った。
あのときの胸の熱さ、初めてエロ本で抜いた時の感動は今でも思い出せる。

だが、20になった今はどうだ。
恥じらいなどどこにも無い。ときめきもどこにも無い。
エロ本はエロければ、あとはどうでもいい。
そんな浪漫も糞も無い思考だけでエロ本を買っている。

('A`)「彼女もいねえしなぁ……かといって……」

風俗は駄目だ。あれは値段が高すぎる。
一発抜くのにヘルスならエロ本13冊分、ソープに到っては50冊分だ。
そんなコストパフォーマンスの悪いものに貧乏学生が金を出せる訳が無い。
('A`)「ハァ……」

俺は何をやっているのだろう。
体が丈夫な訳でもない。頭が良い訳でもない。
ただ漠然と周囲に流されて大学へと進学し、そこで意欲的に何かを学ぼうという事も無い。
ただ適当に授業を受け、単位を取れればどうでも良いなどと考えている。
多分、ずっとこのままなのだろう。
好きな人に告白も出来ないまま就職し、漠然とした日常を過ごすのだろう。
童貞のまま。

('A`)「……欝だ……」

死のうかな。どうせ良い事ないし。
そんな事を考えながらページを捲る。
目に映るのは目の大きな少女が恥らいながらセーラー服を脱ぐ姿。
何気なく話を追ってみると、どうやら弟が借りたDVDを割ってしまったらしい。

('A`)「いやもうありきたりすぎだろ……」

何たるありがち。何たるドジッ子姉。何たる意外とでかい胸。
ああもう大好きだ。エロいの大好きだ。
食費削ってエロ本買っちゃうくらいに大好きだ。
もうやっちゃうぜ。漫画と一緒にやっちゃうぜ。
(*'A`)「DVD!DVD!」

(*^ω^)「「DVD!DVD!」」(゚∀゚*)

(*'A`)「DVD!DV……あれ?」

(*^ω^)「「DVD!DVD!」」(゚∀゚*)

(;'A`)「……」

……なんなんだこいつらは。いったいどこから現れた。
何でこんなにノリノリなんだ。訳が分からん。

(*^ω^)O彡゚「「DVD!DVD!」」゚ミO(゚∀゚*)

それにしても、何でこいつらはの目はこんなに輝いているのだろう。
なんで、俺の眼にはこいつらが眩しく映るのだろう。

……そいつは考える迄も無い事だった。
きっと、こいつらは俺が無くしたあの頃のときめき。
そいつを持っているんだろう。
だから、俺はこいつらから眼が離せないのだろう。

第六話『副題:こんな絡まれ方はいやだシリーズより抜粋』糸冬
―――――――――――――
第七話『師弟』

強い陽射しの降り注ぐ公園のベンチ。
俺はその前に立つ二人を見つめながら、半ば呆然としていた。
冷静に考えると、こいつらは俺をからかっているんじゃないかと思えてきたのだ。

(;'A`)「なぁ……お前ら何なんだ」

(*゚∀゚)「俺らはしがない18歳なりたてです!」

(*^ω^)「弟子にしてほしいお!」

なんて眩しい眼をしてやがるんだこいつら。
そんな眼で見られたら何でもお願い聞いて……って、何の弟子だよ。

(;'A`)「ちょっと待て。俺アレだぞ、しがない大学生だぞ。そんな俺の弟子になって……」

(*゚∀゚)「その本を買う時の神業、しかと拝見させていただきました!」

(*^ω^)「ぜひともボクらにその技を!」

('A`)「……なるほど」

……きっと、これは運命なのだろう。
神は、俺にヒヨッ子のこいつらを導けといっているのだろう。
ならば、その天啓に従おう。
この天啓は幻かもしれない。
7カウントで撤退してしまうかもしれない。
……それでも構わない。
こいつらが自らの手でエロ本を手に出来るのなら、どんな結果でも受け入れようじゃないか。
だが、その前に……

(’A`)「弟子にする前に一つ聞く」

( ^ω^)「はいっ!」

( ゚∀゚)「何でしょうかっ!」

(’A`)「お前ら、彼女とか……いないよな?」

これだけは聞いておかなければならなかった。
彼女持ちは敵だ。それだけは譲れない。

(  ω )「……」

(  ∀ )「……」

(;’A`)「あー、スマンかった」

やはりと言うか何というか。
俺もいないから人の事など言えはしないが。
('A`)「じゃあ、明日の九時、ここに集合な」

( ^ω^)「ハイッ、師匠!」

( ゚∀゚)「では、また明日!」

(*^ω^)O彡゚「「見送りの!DVD!DVD!」」゚ミO(゚∀゚*)

(;'A`)「ちょ……お前ら落ち着け」

(*^ω^)O彡゚「「見送りの!」」゚ミO(゚∀゚*)
(#゚ω゚)「「STAND UP TO THE VICTORY!」」(゚∀゚#)
(;'A`)「あぁ……」

神様、クーリングオフは可能ですか?

第七話『副題:無理(笑)』糸冬
―――――――――――――
第八話『講習』

師曰く、エロ本購入というものは非常に恥ずかしいものだ。
長年購入してきた自分でさえ、レジが女子なれば時間を改めてしまう。
自分でさえそうなのだ。若輩者の貴君らでは、男の店員でも失禁してしまうだろう。
だが、それらは全て心の問題なのだ。
だからお前ら、

(’A`)「恥は捨てろ。それが一番手っ取り早い」

(;^ω^)「……」

(;゚∀゚)「……」

言葉一つ出ない。まさに絶句。そうとしか言い様が無かった。
ボクらはスケベと呼ばれる事を何よりも恐れるピュアボーイズ。
トイレに行く時は「お花を摘みに」と、頬を染めながら言ってしまうピュアボーイズ。
大の時は「世界に一つだけしか咲かない花を摘みに」そう言ってしまうほどの純情さ。
そんなボクらが恥を捨てるなど……
('A`)「無理、だろうな。だから最初に教える事は、恥の軽減方法だ」

(;^ω^)「それを早く言ってくださいお」

(;゚∀゚)「心臓が止まるかと思いましたよ」

('A`)「まずは格好。とにかく無難な格好を選べ」

なるほど、木を隠すなら森の中と言う所か。
その点においてボクは完璧だろう。何故なら

('A`)「まずブーンはアウト」

(;^ω^)「えっ、何でですかお?」

('A`)「お前、黒尽くめとか……厨二病丸出しの格好じゃ誰だって覚えるぞ」

(; ω )「あああ……」

( ゚∀゚)「じゃあ俺はセーフですか?」

('A`)「全然。パンツイン、リュック、バンダナにケミカルウォッシュ。その組み合わせはオタ過ぎる」

(; ∀ )「ぐはぁ……」

('A`)「店には不特定多数の客が来るんだ。だから、普通は一々客の顔など覚えていない。けどな」
唐突な沈黙。
その沈黙は重く、たった何秒間かの時間がまるで数時間の様に長く感じられる。
そして……師匠が小さく溜息を吐いた後、ようやく次の句が紡がれた。

('A`)「特徴的な奴ってのは、嫌でも覚えちまうんだよ」

(;^ω^)「つまり、この格好ではアウトって事ですかお?」

(;゚∀゚)「普通の格好だと思ったんだけどなぁ……」

('A`)「……お前らの格好なら、厨二病とガチヲタってとこか」

(;^ω^)「それって、なんですかお?」

('A`)「何って、渾名だよ渾名。特徴的な奴はな、渾名が付けられちまうんだよ」

(;゚∀゚)「まさか店員が俺を見ながらひそひそ話してたのって……くぁせdrftgyふじこp;@」

唐突に奇声を発しながらのた打ち回るジョルジュ。
きっと思い当たる節があったのだろう。
その点ボクは……
(;゚ω゚)「くぁせdrftgyふじこぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉまいがぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

思い当たる節がありすぎて死んだ。
百万十回死んだ。百万回生きた猫余裕で越えた。ナンテコッタイ。
今まで、「あのハニーフェイスな坊やってかわいくない?」と言っていると思っていたアレ。
「母性本能くすぐるって言うか、可愛い系って言うか」と言っていると思っていたアレ。
それらは全て嘲笑だったのか。
もういいや、どうせだから百万十一回目に突入しとこう。

(  ω )「あばばばばばばばばばば」

(  ∀ )「あががががががががががが」
〜〜〜
('A`)「落ち着いたか?」

(;^ω^)「ご迷惑おかけしましたお」

(;゚∀゚)「サーセン」
('A`)「よし、それじゃあユニクロ行こうか」

( ^ω^)「あ、ちょっと待ってください」

('A`)「ん、庶民の味方ユニクロに何か問題でもあるのか?」

( ^ω^)「いえ、そうじゃなくてですね、学生服なんてどうですかお?」

師匠は最初の方で目立たない無難な格好と言った。
ボクはその言葉で、一つの名案が浮かんだのだ。
夏休みではあるものの、補修や部活などのせいか、学生服を着ている人間は結構多い。
ならば学生服はカモフラージュになるのではないか。そう考えたのだ。
だが

( ゚∀゚)「あれ、師匠?」

( A )「……それだけは止めとけ」

……師匠の反応は、まるで昔の古傷を抉られた様な、悲壮感の漂うものだった。
見ているこちらまで死にたくなる様な、そんな死臭漂う表情。
いったい師匠の過去に何があったというのだろうか。
( ゚∀゚)「なにか、あったんですか?」

( A )「友人がな、制服でエロ本を買おうとして……レジで説教されたんだよ。店員のババアに……」

(;^ω^)「うわぁ……」

なんという恥辱。なんという羞恥プレイ。
そんな事されてしまったら間違いなく本屋恐怖症か引きこもりコース。
本屋にそれほどまでに恐ろしい罠があったとは。
ボクらはその犠牲を無駄にしてはならない。その犠牲を糧にしなければ、彼も報われない。

(;^ω^)「で、その人は……」

('A`)「一時期引きこもってたけど……まぁ、今は元気だな。言動におかしいとこがあるけど」

(;゚∀゚)「……」

(;^ω^)「……」

第八話『副題:本屋には罠がいっぱい』糸冬
―――――――――――――
第九話『訪秋』

朱色の空を眺めながら、ボクとジョルジュは公園のベンチに座っていた。
涼しげな風と、少しばかり涼しくなってしまった財布。
それらは、夏の終わりをそっとボクらに告げていた。

( ゚∀゚)「もうすぐ、夏休みも終わっちまうな」

( ^ω^)「……おっ」

夏の終わりを惜しむような呟き。
もうすぐ、終わってしまうのだ。高校最後の夏が。
すこし、寂しいものがあった。
けど、心のどこかで仕方が無いと諦めもしていた。

( ^ω^)「夏休み終わったら、受験が終わるまでこんな風に遊べないお」

( ゚∀゚)「……」

( ^ω^)「ジョルジュ?」

( ゚∀゚)「……ウチのクラスのペニサスって知ってるか?」

( ^ω^)「ペニ……サス……」

ペニスペニスペニス……ちんちん。ω。
思い出した、ちょっと地味なジョルジョのクラスメイトか。
( ^ω^)「一応顔は分かるけど、それがどうかしたのかお?」

( ゚∀゚)「お前にだから言うんだからな。他の奴に言うなよ。絶対笑うなよ」

( ^ω^)「前向きに対処するお」

(* ∀ )「俺、夏休み中にエロ本買えたら……あいつに告白するんだ」

(;゚ω゚)「……」

何という事だ。
ジョルジュが口にした言葉は、間違いなく死亡フラグ。
というか、その発言の前半部は少しばかりペニス訂正ペニサスに失礼なんじゃないだろうか。
そういのは普通試合に勝ったらとか、戦争で生き残ったらとか……
あ、後者の死亡臭半端ないな。

( ゚∀゚)「大体、エロ本も買えない奴がさ、告白なんて出来ると思うか?」

(;^ω^)「エロ本買った事も告白したことも無いから分かんないお」

( ゚∀゚)「でさ、思うんだ。好きって気持ちが強いほど、告白する時恥ずかしくなるんじゃないかって」

( ^ω^)「んー……」

( ゚∀゚)「だからさ、せめてエロ本で勢い付けようって、そう思ったんだ俺は」
ジョルジュの気持ちは分かる。
生半可な気持ちじゃない、好きで好きで堪らない人に告白する時は、きっと恥ずかしくて顔が真っ赤になるだろう。
でも、それには恥ずかしいだけじゃなく、色んな感情が混じっているだろう。
ボクが思うに、恥ずかしいと同じくらいに恐怖があると思う。
振られてしまったら、その好きで好きで堪らない感情の行き場がなくなってしまうから。
それは、とても恐ろしくて悲しい事だから。

( ゚∀゚)「マジ、想像だけで顔赤くなるとかどんだけよ」

( ^ω^)「ねえ、ジョルジュ」

( ゚∀゚)「……なんだよ」

( ^ω^)「恐くは、ないかお?」

( ゚∀゚)「振られた場合考えたらめっちゃ恐ええ。でも、どんな結果でも受け入れるさ」

そう言いながらも、ジョルジュは笑っていた。
恐怖は勿論ある筈だ。だが、彼は勇気で克服したのだろう。
黄金の精神を秘めているであろう瞳が、雄弁にそれを物語っていた。
( ^ω^)「ジョルジュ、ボクは君が友人である事を誇りに思うお」

( ゚∀゚)「……あんがとよ」

( ^ω^)「お、本屋に行ってるねーちゃんめっちゃ美人だお」

( ゚∀゚)「ナイスおっぱい!」

こうして、ボクらは完全に日が暮れるまで話し続けた。
諸事情により、ジョルジュの時だけエロ本が売り切れれば良いのにと思った。

第九話『副題:他人の惚気話で殺意急上昇』糸冬
―――――――――――――
第十話『店員』

(´・ω・`)「……この子達は何なんだろう」

監視カメラで録画しておいた映像を見ながら、僕は独り呟いた。
店というのは色んな人が来る場所だ。
だから、時折訳の分からない人が来るのも仕方のない事だと思っている。

(´・ω・`)「うーん」

けど、この子達はそんな訳の分からない人たちとは何かが違う。
確かに挙動不審だ。物凄く挙動不審だ。童貞臭のプンプンする不審者二名だ。
でも、何故だろう。
他のキ○ガイじみた人達の時と違って、彼らを嫌悪する気持ちが全く湧かない。
(´・ω・`)「こういう眼が……覚悟している眼。って奴なのかなぁ」

彼らの強い信念を秘めた、一点の曇り無き眼差し。
その眼は食い入る様に、店の一角を見つめていた。
その一角、その名はエロ本コーナー。

(´ ω `)「は、ははは……フゥハハハーハァー」

思わず笑みが漏れた。

アレを求めるか。アレを求め、覚悟をしたか少年達よ。

甘さとほろ苦さの混じる青春時代、その象徴とも言うべき物を求めるか。

求めるならば汝のその手でその重みを知れ。そして、その手で掴み取れ。

勇気を振り絞り、智謀の限りを尽くしてレジまで持ってくるのだ少年達よ。

そして、我らを求めよ。我らは願いに応えよう。
我ら店員一同ッ!レジにて心よりお待ちしておりますッ!
〜〜〜
( ´∀`)「てんちょー、面接希望の大学生の子がきたモナー」

(´・ω・`)「えっ、もうそんな時間?」

( ´∀`)「ちょっと早めに来たって言ってたモナ。で、これが履歴書モナ」

(´・ω・`)「どれどれ……」

( ´∀`)「……」

(´・ω・`)「……ねえ」

( ´∀`)「モナ?」

(;´・ω・`)「志望動機の所にさ、一目惚れって書いてあるんだけど」

(;´∀`)「……モナに言われても困るモナ」
第十話『副題:万引き犯?ぶち殺すぞ〜それがVIPマーケットクオリティ〜』糸冬
―――――――――――――
第十壱話『秘匿』

(’A`)「今日は親不知についてやっとくか」

師匠は何の前触れも無く、唐突にそう言った。

( ^ω^)「……?」

( ゚∀゚)「歯とエロ本に何の関係が?」

(’A`)「歯じゃなくてだな……字の如く、エロ本を親の知らぬ存在とする方法だ」

( ゚∀゚)「本の隠し場所なら俺はちゃんと考えてますよー」

(;^ω^)「あ」

ボクは全く考えていなかった。
何故、これほど大切な事を忘れていたのだろう。
エロ本を家族に見られる恐怖。
机の上に置かれていた時の絶望。
夕食時に家族から向けられる憐憫の眼差し。
そして……ボクにその視線を向けた父親はきっとこう言うだろう。
「ブーン。お前も、大人になったんだな」
(;゚ω゚)「ノォォォォォォフゥゥゥゥゥゥゥチャァァァァァァァ!」

(;゚∀゚)「うおっ!?」

(;’A`)「ちょっ!?」

想像だけで魂が抜けそうになった。
そんな台詞が親の口から出た日には、間違いなくボクは発狂する。
直後、ボクの世界はそこで終わるだろう。
何という理不尽なリスク。何という理不尽な罰。
まるで、本の存在自体が穢れであると言わんばかりだ。
何故に人この様な物を作り出したのだろう。
こんなにも罪深い存在さえ無ければ……
否……罪深い存在だからこそだろう。
罪深く、淫靡。人の業の権化。
雄生命体としての本能を強く刺激する、ネクロノミコンと並ぶ禁断の書物。
其れこそがエロ本なのだ。
そういう存在だからこそ、人は古来から其れに惹かれ、畏れを抱きながらもそれを求めるのだ。性的な意味で。

(  ω )「これが……真理……」

(;゚∀゚)「お前、どうかしたのか?」

(’A`)「……悟ったか」

( ;ω;)「頭でなく、心で理解しましたお」

(;゚∀゚)「え?え?マジなんなの!?ねえ!」

何か本題から外れてしまった気がするが、ボクは気にしない事にした。
〜〜〜
(;゚∀゚)「あ゙ー、きになるぅー」

( ^ω^)「これは自分で気付かなきゃいけない事だお」

('A`)「じゃ、それじゃあボチボチやってくか。まず隠し方な」

(;゚∀゚)「うぅー」

('A`)「言っとくが、ベッドの下、箪笥、引き出し。この三つは見つかる場所TOP3だ」

(;゚∀゚)「ゲェッ!」

(#゚ω゚)「嘘だッ!」

('A`)「ここもな、悪い訳じゃないんだ。ちゃんと整理整頓と掃除やってればの話だが」

(;^ω^)「今日からちゃんと掃除するお」

(;゚∀゚)「俺も……」

そういえば掃除は母親に任せっ放しでここ数年やっていない。
だが、やらねばならない。見つかって自宅から居場所が消えるのは真っ平御免だ。
(’A`)「一応、お勧めはプラモや靴の空箱。それに、使ってない鞄の中とかか」

(;^ω^)「なっ、そんな手があったなんて……」

(0。゚∀゚)「古いリュックの輝く時代ktkr!」

眼から鱗とはまさにこの事だろう。
空箱は隅に置いておけば問題ないし、鞄もフックに掛けておけば弄られる事もない。
なんという神算鬼謀。恐るべし……いや、さすが師匠と言うところか。
だが、それを実行する前に一つ、大きな問題があった。
(;^ω^)「師匠、両方とも部屋に無いですお……」

('A`)「……お前、兄弟とかいるか?」

(;^ω^)「いえ、一人っ子ですお」

('A`)「少年ダディとか部屋に積んでたりするか?」

(;^ω^)「積んでますお」

……この質問は何なのだろうか。
エロ本を隠す事に何の関係があるのか全く分からない。
一体師匠は……
('A`)「じゃあ、それに背表紙を壁に向けて挟め。他に何冊か同じようにすると最高だ」

何を言ってるんだ、正気かこの人は。
エロ本を外気に晒すだと?
そんな触れようと思えば触れる事のできる場所に放置するだと?
冗談は止してくれ。そんなふざけた事を言わないでくれ。

(#^ω^)「そんな事……」

出来る訳が無い。怒りに任せてそう言おうとした時、

(#゚A゚)「出来るんだよッ!」

ボクは鋭い眼光に射抜かれた。
何たる威圧感。何たるプレッシャー。何たる本気を出したっぽい雰囲気。
思わず失禁してしまいそうだ。
これが、師匠の本気状態なのか……
(#゚A゚)「外見を隠すのは確かに大事だッ!しかしなッ、それより大事な事があるんだッ!」

(;^ω^)「ゴクッ……」

(;゚∀゚)「ペロッ……」

(#゚A゚)「人にそれを意識させない事だッ!分かるか小童共オォォォォォォォォッ!」

(;゚ω゚)「なんとぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

(;゚∀゚)「ヌァンダットゥエー!」

……なんて人だ。
師匠は、人の意識……そんなものまでも操作しろと言っているのだ。
確かに一流のマジシャンは人の意識を誘導し、観客を魅了する。
けど、ただの高校生であるボクにそれが出来るのか?
エロ本、それのみを求めて突き進んできたボクにそれが出来るのか?
出来る、出来るのだ!
師匠は、ボクらにも出来るからこそ言っている。
そう、不可能ではないッ!
マジシャンのように観客全てを騙す必要など何処にも無い。
騙すべきは……そう、カーチャンただ一人ッ!
ならばやれない事はないッ!

(#゚ω゚)「師匠ッ!やりますッ!」

(#゚A゚)「大事なのは自然さだッ!分かるかブタムシ野郎ッ!?」

(#゚ω゚)「Sir!敢えて乱雑に積む訳ですねッ!Sir!」

(#゚A゚)「YES!ベッドの下に雑誌をデコイとして用意するとより一層YES!」
(;゚∀゚)(……俺、兄貴いるからできねえよ)

ジョルジュはそう言いたかった。
だが、ノリノリな二人を見ていると、そんな事は口が裂けても言えなかった。
誰だって、空気読めない奴と思われるのは嫌なのだから。
〜〜〜
そして30分後、

'A`「ツマリ……タンコーボンナラ表紙ダケカエルノモ……有効デアッテ……」

そこには輪郭の消えかけた師匠がいた。
きっと、本気状態で体力を使いすぎたのだろう。
まぁ、そんな風に冷静に考えている僕も

ω「……ナル……ホ……ド」

塩をかけたられたらロストしそうな感じになっていたのだが。

第十壱話『副題:兄弟姉妹や空気読まない友人がいる方にはお勧めできない』糸冬
―――――――――――――
第十二話『隠蔽』

('A`)「よっし、次はオナヌしている事を悟られない方法だ」

( ^ω^)「おっおっ」

( ゚∀゚)「うっす」

('A`)「とりあえず、使用済みティッシュは全てトイレに流すのが一番確実だな」

( ゚∀゚)「え、ゴミ箱に捨てちゃ駄目なんですか?」

( ^ω^)「ジョルジュ、そいつは愚問って奴だお」

甘いッ!甘すぎるぞジョルジュッ!
使用済みティッシュはゴミ。そこに異論を挟むつもりはない。
だがしかしっ、そこが大きな落とし穴なんだよォ―ッ!
( ^ω^)「使用済みティッシュは特徴的過ぎるお。分かる人が見たらバレバレだお」

(;゚∀゚)「ッ!」

自分の方法を完全に否定されたジョルジョの顔が青褪めるが、ボクは容赦などしない。
確かにボクらは相棒であり親友。それは間違っていない。
しかし、それは「強敵」と書いて「とも」と呼び合う関係。つまりライバルなのだ。
一人の雄として、エロ本を求める者として、戦う宿命なのだ。

( ^ω^)(ジョルジュは三次専門だった気がするけどまぁいいお)
そして、ボクの口が追い討ちをかけるかの様に言葉を紡ぐ。

( ^ω^)「視覚を念頭に入れる事は基礎にして必須ッ!それを失念するとは笑止千万ッ!」

(  ∀ )「なら……お前はどうしているんだ?」

( ^ω^)「菓子の空箱に入れて、ティッシュが見えたり人の手に触れたりしないようにしてるお」

(  ∀ )「……それだけか?」

( ^ω^)「これが……最善の策だと思うお」

……ふと、違和感を覚えた。
青褪めた顔を俯かせ、ボクの言葉に耳を傾けるジョルジョ。
その身体は小さく震え、今にも崩れ落ちんばかりだ。
それなのに……
何故、面を上げた君の目は細められている?
何故、面を上げた君の唇は吊り上っている?

(  ∀ )「は……ははっ、ハァーッハッハッハッハッ!」

唇の両端を限界まで吊り上げ、狂った様に笑うジョルジュ。
何が可笑しい。何が可笑しくてそこまで笑う。

(#゚ω゚)「何がおかしいんだお!」

(  ∀ )「……ティッシュをそのまま捨てていた事……これは重大なミスだったと認めよう」

そう呟くジョルジュの頬が更に歪み、獣が牙を剥く様な笑みを形作る。
まさか……まだ終わっていないとでも言うのか?

( ゚∀゚ )9m「だがな、お前も重大なミスを犯している事に気付いているのかッ!?」

(;^ω^)「そんな訳あるはずがッ……」

ボクの空箱作戦にミスがあるだと?
そんな筈はない。ボクの作戦は完璧な筈だ。
人間の五感の内、触覚、視覚、聴覚、味覚を遮断し……
(;^ω^)「まさか……」

そうか、この場合に於いて視覚と並ぶくらいに重要な感覚。
そいつだけは、空箱では完全にカバーできない。

(;^ω^)「臭い……かお」

( ゚∀゚)「そう、臭いだ」

(;^ω^)「けど……それはジョルジュも……」

(#゚∀゚)「残念ッ!俺はなぁッ!毎日ゴミ箱をファブってるんだよォォォォッ!」

(;゚ω゚)「フヌォッ!」

何て奴……いや……ここは、それでこそ我がライバルッ!と言うべきだろう。
だが、まだ終わってはいない。あちらは五感の内一感を封じたに過ぎない。
こちらは五感の内、四感を封じれるのだ。まだ勝機はこちらにある。
(;^ω^)「まだだお!ゴミ箱見られたら終わる時点で欠点でかすぎだお」

(#゚∀゚)「甘え!俺のゴミ箱は蓋付きよッ!」

(;^ω^)「だけどッ!四感封じる時点でこちらの……」

(#゚∀゚)「消防の頃を思い出せッ!自宅の玄関を開けたらカレーの匂いがした時の事をッ!」

(;゚ω゚)「グアァァァァァァァッ!」

ジョルジュが言った状況でのwktk感は、その時嗅覚が他の四感を完全に凌駕していた証拠だ。
ならば、部屋に入った瞬間に烏賊の香りがした場合も同様ではないか。
悪臭に気付いた瞬間……間違いなく、他の四感を凌駕するだろう。

そして、完全に立場が逆転した今になって大事な事を思い出した。
自分の臭いは自分では余り気付けない。だが、他人はそれに気付くのだ。

(  ω )「皮肉な物だお……自分が放った物であるが故に気付かないなんて……」

( ゚∀゚)「どうやら……」
('A`)「あーもう、トイレに捨てたくないなら、ビニール袋に入れろ。そして口を縛れ」

(;^ω^)「……」

(;゚∀゚)「……」
父さん、母さん、ボクらの師匠はビックリするほど空気が読めません。
('A`)「うるせぇ、空気キャラになるよりは空気読めない方がマシなんだよ」

第十二話『副題:…………あれ?』糸冬
―――――――――――――
第十三話『過去』

('A`)「じゃあ最後に、オナヌをいかにして気付かれないか」

( ^ω^)「ktkr!」

( ゚∀゚)「wktk!」

('A`)「家族の行動パターンを覚えろ。それが全てだ」

( ^ω^)「つまり、安全といえる時間を把握する。という事ですかお?」

('A`)「そうだが……余りに不確定要素の多い家族がいる場合、その限りじゃない」

( ゚∀゚)「無職だったりとかですか?」

('A`)「それもあるが……世の中にはいるんだ。嫌がらせを至上の喜びとする人間が」

(;^ω^)「ま、まぁいますけど……」

(;゚∀゚)「もしかして師匠の身内に……?」

('A`)「ああ……初めての時にな、やられたんだ……」
〜〜〜
……アレは、五年と少し前、初めてエロ本を買った日の事だった。

(*'A`)「フヒッ……フヒヒ……」

エロ本を手に入れた俺は、自分でも驚く程に興奮していた。
ついでに勃起もしていた。
まぁ、それも仕方のない事だろう。
パソコンは高級品。携帯でインターネットはパケ料金が高すぎる。
そんな時代だったからな。

(*'A`)「ハッ……ハァハァハァハァハァハァハァハァ……ハァンッ!」

エロ本を手にして最初の射精はパンツの中。
衣擦れの僅かな刺激による発射だった。
(*’A`)「まぁいいや!さーて、ページオープン!」

あの頃の俺は若かった。
あの時の俺は漲り過ぎていた。
あの瞬間の俺はエロ本に夢中になり過ぎていた。
……だから、気付かなかった。
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