えちえち体験談

至上の鎖

2005/08/13 14:58カテゴリ : その他

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 三年の教室から生徒会室へ向かう廊下の途中に、一年の教室の一部が入っている。
 放課後都がその廊下を歩いていると、必ずその教室のひとつから弟の巧の声が聞こえ
てくる。飽きもせず毎日くだらないことを話していて、なかなか帰らない。
 三年だけ受験対策で終業が遅いため、部活のない下級生の大部分が下校しているタイ
ミングだ。
 つるんでいる仲間は三人ぐらいだろうか。
 その教室に差し掛かるときにいつもちらりと見るだけで、よくはわからない。
 生徒会の仕事をやるようになってから毎日同じ時間、ずっと通っている廊下。
 一ヶ月後には引継ぎがある。それが終わればわざわざ通ることもなくなるのだろうか、
と都は少し複雑な思いに捕らわれていた。
 弟たちの会話がとても楽しそうだったからだ。
 それにしても、と都はいつも思う。
 他の大きいコたちに囲まれていると巧は女の子のようだ。
 身長こそ伸びたが、線の細さは一部の女子に羨まれているし、髪も女の子以上になめ
らかだったりする。

(いっそ本当に女の子だったらよかったのに……)
 ちゃんとかわいがってあげられたのに、と子供の頃を思い出す。
 いつも通りすぎるだけだから、巧たちの会話は断片的にしかわからない。その会話の
顛末を想像してみるのは都にとって楽しいことだった。
 基本的には下世話な男子の会話に過ぎない。
 楽しいのは、家では知ることの出来ない、巧の別の顔を見ることが出来るからだ。
 細い身体に母親似の綺麗な顔のせいで、小さい頃から当然のように女男とからかわれ
続け、当然のようにそれに反発して、口が悪くて手の早いひねくれ者に育ってしまった。
 そう思っていたのだ。
 それが、知らないところで普通に楽しくやっているのを見て、腹が立って殴ったりも
したが、基本的に弟を見ているのは好きだった。

 
 巧はいつもぎりぎりまでサッカー部の練習をさぼっていた。
 監督が顔を出す時間はみんな知っているから、それまでは適当にやるのが部の伝統に
なっている。今日も部長自ら率先してグラウンドを使って遊んでいることだろう。
 入ったばかりの一年の癖にサイドハーフのポジションを取りそうだというので、一部
の先輩たちにはやっかまれている。
 だから巧は、それよりはクラスの気のあった帰宅部連中と話をするのが好きだった。
 彼らに言わせれば巧の中性的な面構えは使えるので、週末は彼らに誘われてよく街へ
出る。早い話が、ナンパ者の類だ。
 次の日曜に遊びに行く場所を決めていると、ふと視界を姉の細い横顔が横切っていっ
た。そろそろ時間か、と時計を見る。
 都の長い髪は午後の陽射しによく映えた。それに知性的な眼差しとほっそりした体つ
きが、ここの制服に本当によく合っている、と巧は思う。
 都が通りすぎるのを待って、仲間の一人が小突いてくる。彼女を気に入って、紹介さ
せられたこともある奴だ。こういう時には、後で姉の話になる。
 
(ああ言ってしまいたい)
 入学直後から巧は「あの」待鳥都の弟ということで、何かと周りに振り回されていた。
 手のつけられない乱暴者の姉が、聡明でおしとやかな女性の鑑みたいに思われている
のを知って驚いたものだ。
 誰も彼もが「すごく女らしい」とか「綺麗で上品」とか、おかしくてしかたがない。
(綺麗は綺麗だけど、ありゃ刃物だからなあ)
 巧の身体には、目立たないけれどあちこち跡の残った傷がある。
 全部都がつけたものだ。 
 次の日は、都は日直にあたっていた。
 今日はもう練習に出てしまっただろうかと巧のことを考えながら、足早に教室を出る。
 
 少し遅くなったけれど、弟たちの笑い声は教室から響いていた。
 普段あまり見せない微笑が浮かんでしまう。
 そのとき教室が大きな盛り上がりを見せ、いつもより明らかに大勢のはやしたてる声
が響いた。都はとっさに歩みを止めて耳をそばだてる。
「じゃあおまえ、あのまま最後まで行っちまったのかよ!」
 よく聞く巧の友達の声だ。
「まじで? 金持ってなかったんじゃねえの?」
「ちくしょう、こいつ連れて歩くのもうやめるか」
「あんなかわいいコをヤリ逃げかよ! 信じらんねえこいつ」
 それはいわゆる男子のくだらない体験談のようだった。
(今日はハズレ)
 そのまま通りすぎることにして、再び都が歩き出そうとしたとき、巧の声が聞こえた。
「しょうがねーじゃん、連絡先も何も教えてくれねーんだもん」

 足が止まる。
 心臓も止まったような気がした。
「何にしても」また違う男子の声が続いて、「これで巧も我らオトナの仲間入り! ビ
バ桐高ナンパ倶楽部!!」
「んな部活ねえっつの」
「とりあえず詳しく話してもらわんとなぁ!」
 
 そんなものを聞くわけにはいかない。
 都は来た道を走って戻り、教室の自分の席にたどり着くと、力なく座りこんだ。
(? ……あれって、そういう話? それに私、なんでこんなに慌ててるの……)
 一瞬止まったような気がした心臓が、今は激しく打ちつづけている。
(そんなに鳴らないで、痛いから……)
 落ち着くのに、かなりの時間が必要になった。
 再び生徒会室に向かう気にはなれた。
 グラウンドの運動部の声がかすかに風に乗って聞こえてくる。
 本当は自分も知りたい事、いつかはしたい事。
 小さい頃からよく知っている巧が、自分の知らないどこかの女の子と関係を持った。
それを聞いて興奮しているだけなのだ。
 刺激の強いゴシップも、そのうち慣れて平気になる。それまで我慢すればいい。でも
何を我慢すればいいんだろうか?
 
 一年の教室はもぬけの殻になっていた。
 扉が開きっぱなしになっているのを、律儀に閉めておく。
 勢いに任せてどこかに流れていったのだろう、都は少し拍子抜けしながらも、ほっと
して廊下を歩きはじめる。 

 2
 
「姉ちゃん、醤油」
「醤油がどうしたの?」
「……あのな」
「はい、お兄ちゃん」
 姉ではなく、妹のはるかから醤油入れを受け取りながら、巧は頬をふくらませた。
「ちぇ、機嫌悪いでやんの。今月二回目の生理か?」
 ガツン、と硬いものが巧の頭を襲った。
「ぐあ、痛ってえ! 皿投げるか普通。割ったらどうすんの」
「あんたが片付けるのよ」
「もー。やめようよ、お姉ちゃん」
 はるかが心配そうに巧の頭を撫でながら都のほうを伺う。父は知らん顔をしてテレビ
を見ている。巧ははるかの手を振り払いながら、
「そうだそうだ。……だいたい裏表ありすぎだっつうの」
 ガツン、とまた投げられる。
「……信じられん」
 異常に機嫌の悪い姉に、巧は顔をしかめるしかなかった。
 はるかが顔を向けてきて、
「お姉ちゃんってもともと乱暴者だけど、本来は直接殴る蹴るが持ち味よね。今朝はど
うしちゃったんだろ?」

 目の前にあるはるかの顔は、ショートボブのせいもあって心持ち都より柔らかい感じ
がする。巧はなんとなくその頬を指で突つきながら、
「まったく、おとなしくしてりゃいい女なんだけどな……」
 それに応戦して、はるかも巧の耳たぶをくにゃくにゃと揉みながら、
「一見平静なんだけど、すごい殺気感じることあるよ」
 それを払いながら巧はトーストをかじり、
「学校で顔合わす度にさ、……」
(いい女……)
 巧とはるかの感じの悪い会話を聞き流しながら、都はその言葉に捕らわれた。
 その都に巧は時々視線を向ける。
 
 無意識のうちに、巧の視線は都の姿をトレースする。極々客観的に見ても、かなり美
人の部類に入ると思う。
(細い割に柔らかそうなんだよなあ……)
 つい先日初めて女の身体というものを知って、巧の頭の中はそういうことでいっぱい
だった。
(つまんねえの)
 せっかく美人なのにそれが身内なのがもったいないのだ。
(姉妹なんてブスでいいから、その分他の女の子に回してもらいたい)

 意味のないことに文句をつけながら、トーストの残りを折りたたみ、紅茶で押し込む
と、
「あい、お先〜」
 巧は一番に家を出る。
「お兄ちゃん、お弁当持ってない〜!」
 はるかが慌てて出てくる。かばんにその弁当を押し込んでいるうちに都も出てくる。
しばらく三人で歩く。中学は方向が違うのではるかが途中で名残惜しそうに手を振って走
り去る。毎朝のことなのに何が残念なのだろうと、都と巧は同じことを考える。そうして
後は、二人で同じ校門へ向かってひたすら歩いていく。
 都の機嫌が悪いときも、特に変わりはないのだった。
 無理に話をするでもなく、気まずいこともない。話したいことがあればするだけだ。
 都も巧も、その時間が結構好きだった。
 お互いにそのことは知らない。
 3
 
 放課後のチャイムが鳴ったとき、巧は最初に今朝の都の事を思い出した。
(あれって、なんかあった……かな?)
 特に思い当たることもなく、仲間に声をかけられて、次の瞬間には初体験の時の、相
手の少女の姿を思い出す。
「また思い出してるだろ?」
「ば、馬鹿言え」
「ちょっとだけ心配してたんだよ」
「何をよ」
「おまえの初体験の相手は男になるんじゃないかってな」
「この野郎……」
 他の仲間たちも寄ってくる。
 
「そろそろ俺らも行くか」
 ひたすらしゃべっていると、仲間のひとりがそう言って立ちあがる。その時に初めて
巧は、都がまだ通っていないのに気付いた。
 仲間たちに声をかけて離れる。
 少し気になって、三年の教室の方に足を運ぶ。どの教室にも姉の姿はない。
(? 帰った?)
 何がというわけでもなく、巧は奇妙な感じを持った。

(練習かったるいし、たまには気にしてみてもいいって感じ)
 誰かに言い訳するわけでもないのに、頭の中でつぶやく。
 まだ何ヶ月も通っていない、なじみの薄い校内のあちこちを散策するように歩く。
 しばらく鞄をしょったままうろうろしているうちに、運動部棟の裏手の方にかすかに
話し声を聞き取った。
 姉じゃなければ、何か話のネタの予感。
 建物に駆け寄る。
 そして隠密行動のつもりが、何も聞かないうちに巧は立てかけてあったボードに蹴り
を入れる。
 大きな音を立てて板は次々と倒れ始めた。
「ぎょええっ! ……ああ、もったいないことを」
 なんとか食い止めようと身体を入れてがんばっていると、
「巧!?」
(やっぱ姉ちゃんじゃん)
 姉の都がこっちに歩いてくる。隣りに三年らしき長身の男が張り付いている。

 声を聞いた瞬間、はっとなった。
(今、声震えてたな……危ないとこを未然に防いだのか、俺。それとも……)
 名前は死ぬほど呼ばれたけど、震える声で呼ばれたことはない。
 隣りの男の素性も目を見ただけでわかる。タラシだ。こういうときは、変に絡まずに
連れ出さないといけない。
「会長サンがお呼びですが?」
「……あ。ありがと、行くわ」
 誘導するように校舎の方へ、都の前を歩いてやる。
 それを制止するように男が口を挟んだ。
「待てよ。その学年章、一年だな。一年がなんで呼びに来るんだ?」
 巧は思わず心の中で舌打ちしていた。頭のいい奴はタチが悪い。ストレートにいく。
「俺、この人の個人的な関係者だからね。この人の嫌がることはしたらだめですよ、先
輩」
「名前を言えよ」
「俺は、『待鳥』巧です」
 巧がちょっと挑戦的だったかと思っていると、男はなんだ、と軽く笑って、
「覚えとくよ」
 そんなふうに去っていくのが巧には鼻についた。
(あれじゃ、姉ちゃんは普通にいやがるだろ)

 二人で校舎に入っていって、しばらくして都は思いきり巧の制服の背中をつかんでい
た。
「とっ、どうしたの、姉ちゃん」
「う……」
 巧が振り向くのに合わせて手を離してみたものの、都は、またすぐに巧の胸元を力い
っぱいつかんでしまっていた。
 何か言おうとするのだが、言葉が出ない。態度に示すことも出来ない。
 顔を伏せたまま、
(感謝してるって……巧に言うのはどう言えばいいの?)
 そういうとき、都はいつもこう言うのだ。
「よけいな事しないで」
 それは胸元をつかみ上げるいつもの自分につながる。
「姉ちゃん」
「何よ」
「……なんで無理矢理いつも通りにしようとしてんの? とか言っちゃだめ?」
「……っ」
 巧の目を見ることができないのはなぜだろう。手を離す。
 それを追うように巧の手が伸ばされる。
 都が身体を引くのを抱きとめて、巧はそのまま、姉の身体を腕の中に包み込もうと両
手を閉じる。

 巧が? と驚く間もなく、都は弟に抱きしめられていた。
 暴れて逃れようとしてもいつものようにいかない。
 どうしても力が入らなかったのだ。
 思いつく理由はどれも正しいような気がする。
 
「あいつ、クラスの奴?」
 巧の問いかけに、抵抗をやめて言葉を探す。
「去年、同じクラスだった」
「そ。今は何組?」
「三組って、言ってたわ」
「三組か……そっか。ウン」
「?」
「いや、気にしないで」
 いつになく丁寧なしゃべり方をする巧の声を聞いていると、気持ちが落ち着いていく
気がする。
(巧の心臓の音を聞いているからだ)
 弟に抱きしめられていることに抵抗は感じない。今しがた悪質の塊から守ってくれて、
落ち着かせてくれている、血を分けた者への素直な愛情。それを実感する。
「できることなら、さ。全部ぶっちゃけて欲しいな。協力は出来ると思うし」
「もう半年くらい、しつこかったわ」

 話しておいたほうがよい、というよりは話したくて都は口を開く。巧にだけ
は何の誤解もされたくないからだ。
「もう、放してくれていいわ」
 背中にある巧の腕から力が抜けて、ゆっくり放される。
 身体を離しながら呼吸を整える。
 促しておきながら、弟の感触が消えていくのを強く意識してしまう。
 都の脳裏には、先日の巧の初体験話が急に浮かび上がってくる。だがそれも、巧の最
後の言葉にかき乱されていった。
「これから卒業するまで俺が、姉ちゃんを大事に守ってやるから」
 そう言って、子供みたいな顔をして笑ったからだ。 

 4
 
(何様のつもりよ、巧の癖に)
 朝目を覚ますなり昨日のことを思い出し、都は怒り狂っていた。
 すっかり立ち直ってしまって、元通りの都だ。
 あんな男に何もされてなんていないし、いざとなったら自分のほうが強いんじゃないか。
(私もまた、なんでおとなしく抱きしめられてるの……)
 教科書を鞄に叩きつけるように放り込み、乱暴にパジャマを脱ぎ捨てる。
(だいたい、毎日のように部活か夜遊びで、そんな暇あるの?)
 
 その疑問の一部はその日の授業が始まる前に明らかになった。
「や。元気? 待鳥さん」
 今年はクラスの違う、サッカー部の主将をしている男が都の所に訪ねてきた。巧が言う
には大馬鹿者だということだが、三年の間では人格者で通っている。その二要素が両立す
ることもあるのかもしれない。
「遠山君……ウチのクラスに用?」
「その冷たい目がいいなあ、相変わらず。君の弟に頼まれたんだけど? 喉元過ぎれば、
で注意を怠らないように、ね」
「……それ、巧が言ったの?」

 反射的に都が眉をつりあげるのを見て、遠山は一瞬たじろぐものの、
「へえ、そんな表情もできるんだな」
 感心するように都の顔を覗きこむ。あわてて都は席から立ちあがって距離を取る。昨日
からずっとなにかにつけ男性というものを意識させられているような気がする。
「今後運動部連中の目の届く範囲で危ない目にあうことはないと思うから。まあ、最悪俺
がナイトになってやってもいいぞ?」
 人懐っこい笑顔が再び近づけられる。
 背もそれほど高くなく、威圧感もないが落ち着きがあった。都はそういう男は嫌いでは
ない。ただ、心が動くことがない。
「ごめんなさい。せっかくだけど」
 改めて席に座りなおしてバリアを張る。そのまま都がノートを開いて鉛筆を取り出すの
を見て、遠山は軽く肩をすくめ、
「いや、悪かった。でも安心してくれていいよ」
 そのまま遠山は自分の教室に戻っていく。
「……」
(何が、俺が守ってやる、よ。他人任せじゃない)
 帰ったら巧に抗議しようとじりじりしているうちに、授業が終了する。
 多くの者がまっすぐ帰っていく。
 都も鞄を取り、帰り支度をしていると廊下に巧がいるのが目に入った。二人の女生徒に
挟まれて楽しそうに話をしている。

 学年が変わって都の仲のよい友人は皆隣りの二組に入ってしまった。そのうち二人が巧
を気に入って、こうやってよく絡んでいるのだ。
 
「やだぁ、じゃあレギュラー当確なの? やっるー」
「なんかヨソのごつい選手にいじめられそう。困ったことがあったらいつでもお姉さんた
ちに言ってきてね?」
「ちょっと由美さんたちじゃ力不足だなあ。もっとこう、俺の魂を揺さぶるいい女でない
と」
 終業直後の喧騒の中、聞き慣れた巧と友人たちの声が聞こえてくる。
「言うわね……最近生意気よ巧クン」
「じゃあさ、じゃあさ、やっぱりあの人みたいなのがいいんでしょ?」
 二人同時にあの人、と言って近づいてきた都を指差して悪戯っぽく笑った。
 巧も都をまっすぐ見て、微笑みかける。
 距離が詰まるまでしばらく見詰め合ってしまう。
 
 三人の目の前に来て、都は順番ににらみつけながら、
「指なんて差さないでよ」
「まーた、都、機嫌悪いー」
 両横に髪を縛った由美が巧の右腕を抱えこみながら言うと、
「いや、この際都にも確かめておこう」
 と反対側、巧の首に腕を巻きつけたまま、長身の環が邪悪な笑みを浮かべる。

 巧にぶらさがっている由美はともかく、巧とほぼ肩を並べた環は女子バスケの部長をし
ている。もう知っているのだろうと都はため息をつきながら、
「何もしてくれなくていいのに」
 そのまま通過しようと試みる。
 当然のように親友二人が両手を引っ張って阻止した。
「まあまあまあ……」
 解放された巧が伸びをしている横で、
「んで、そこらじゅうで噂になってるわけよ、都ちゃん」
「わけよ、都ちゃん」
「由美はいいから」
 環が慣れた感じで由美を押しのける。
「ちぇっ」
 茶々を入れていた由美はあっさり引き下がると、巧の背中にぶら下がり、都の方を好奇
心たっぷりに振りかえった。環が話を続ける。
「待鳥都、名前負けしないみんなのアイドル、至高のクールビューティ! その危機に運
動部は立ちあがったのです!」
 環はポーズを取って右人差し指を高く差し上げた。
「だからね……」
 一転して都の肩に優しく手をかけて、
「安心して。敵ももうあきらめてると思うわ」

 手をそのまま都のあごに沿わせ、顔を近づける。
 都はもう飽きたという表情で、
「……私に告白なんてしないでね」
「都……あんたそんな目で私を……」
 つれない都の言葉に芝居がかったリアクションを返しながらも、環は下がっていって、
由美をぶらさげたままの巧に抱きついた。
「私は巧クン一択なのよ」
 言うが早いか巧の顔に両手を添え、唇に唇を押し付けていた。
「ちょっ……環っっ!?」
 そう叫んだその時の都の顔を、巧は見損ねたのだった。目の前には目を閉じた環の悩ま
しい表情があったのだから。
 
「ずっるーい!」
 由美の声が廊下に響き渡り、
「私にも貸してよう」
 と背中で暴れるのを振り落とし、巧はなんとか環のくちづけも退けることに成功する。
「んが、俺で遊ばないでっていつも言って……」
 都の拳がそのゆるんだ顔面に飛んできた。

 5
 
 巧と都は、下校途上にある。
「一応しばらくついてるけど、大丈夫だと思う」
「何も聞かないのね、巧」
「姉ちゃんは思い出したいの?」
「お断りよ」
「だろ?」
 しばらく考えていた巧が言葉を繋ぎ、
「ここんとこ機嫌悪かったから。はるかじゃないけど俺だって心配してたのよ、これでも」
 にっこりと笑う巧の横顔をまともに見てしまって、都は赤くなる。
 巧に見られないように顔をそらしながら。
 どうしても、一言でも言っておかなければと思って、都は言った。
「……ありがと」
「あ、ああ……」
 巧の声が戸惑っているのがわかる。
 中学に上がって以来。死んだ母の代わりに弟たちをしっかり育てようと空回りしていたことがあって、それから少し都はかたくなになった。
 
「姉ちゃんがお礼言った……、こら、け、蹴るな!」
「なによ」

 巧が避けたのが都は気に入らない。ぶんぶんと鞄を振り回し、
「だいたい、人の手を借りておいて何が守る、よ」
「おわ! それだって俺の人徳じゃん? それに」
 巧の身長が都を追い抜いたのは二年前。今は十センチ以上の差がある。
 暴れる都の腕をやっとのことで捕まえて、巧はそのまま引き寄せる。都は自然巧を見上
げてにらんでいる。
「それに、俺ほんとに守るよ?」
 そんなことを弟に言われた時に、目を見ていてはいけない。その目を信じたら捕らわれ
てしまうから。
 都は目を伏せて逃れると、巧から離れて歩き始めた。
 巧がそれに気付いてわざわざぴったりくっつく。むきになって都が足を速めると、巧は
ますます楽しそうについて行く。
 
「何をやってるんだか」
 こっそり後をつけていた由美が環と顔を見合わせる。
「前から思ってたけど。都ちゃんかなりブラコンだったりしない?」
「だよな。おもちゃの巧クンに遊ばれてるし」
「あ、巧君が手振ってるよ。都ちゃんたら気付いてない」
 手を振り返す由美の後からふと見ると、巧と目が合う。
(あっ……)

 もう、巧は都の相手に戻っていた。
 とっさに反応できなくて、環はちょっとがっかりする。
 その様子を見ていた由美が、
「私は楽しんでるだけだけど、環ちゃ〜ん?」
「な、なんだよ」
「そっちも前から思ってたんだよね。あんたホントは本気でしょ〜」
「……」
「ありゃ。やっぱり」
「都に言うなよ。……帰る」
「ちょっと、待ってよう」
 踵を返した環を小柄な由美はあわてて追いかけていく。
 
 巧は都の心境を、実は結構わかっていた。
 環たちが窓になっていつでも覗くことが出来る。それは後ろめたくはないけれど、少し
気恥ずかしかった。
 母親を失った時、都は七歳、巧が五歳。そしてはるかが三歳だった。はるかはよくわか
っていなかっただろう。
 それから自分たちの小さな世界で暮らしていた。
「姉ちゃん昔、はるかにやきもちやいてただろ?」
「な、何の話?」

「小さい頃さあ。俺が姉ちゃんにべったりで、姉ちゃんは俺とはるかをまとめて面倒見て
て」
「……」
「そんではるかが俺に張りつくようになってから、俺はずっとはるかと遊んでたけど」
 車が通りすぎていく。
 風に髪をなびかせる姉の歩く姿を眺めて歩く。
「姉ちゃんが甘えて欲しそうにしてたの、知ってたぜ」
 姉の顔が少し赤くなるのを見た。
「俺は弟やるより兄貴やるほうがなんか面白かったんだよな。でももっと弟もやっときゃ
よかったかな、と……」
 都の反応がないので、続ける。
「姉ちゃんが俺に暴力振るうのって、それで怒ってたんだろ」
「もう、忘れてたわ」
 都は一言だけ、そう返した。いつもの落ち着いた表情に戻っている。
「うん、昔の話。だから、こっから今の話」
「え?」
「ほんとに、意地張らないで俺にまかしてね」
 逆光の夕日の中でそう言って笑った巧が、都には弟に見えなかった。
「おかえりー。ああっ、お兄ちゃんまたお姉ちゃんに殴られたの?」
「なんですぐ私だと思うの?」

「違うの?」
 玄関に迎えに出るはるかとの会話は、だいたいいつもこういうものだ。
 
 
「ほらん、言った通りでしょ?」
 由美が廊下で待ち構えていて都の肩にぶら下がった。
 巧はもう教室までは来ない。あれから一週間何もない。
「環はどうしたの?」
「えー、なんか球技大会の集まりとか言って、すぐ行っちゃったよ?」
「そうだった。私も行くから、じゃあ」
「あん、また明日〜。巧君によろしくねぇ」
 由美の声を背中に受けて歩く。
 元通りの毎日に戻っていく。巧がたとえ何もしていなくとも、言葉通りそうなったのな
らそれは巧のおかげだと都には思えていた。
 ただそれ以上のことは意識しないようにしていた。
 何事もなく卒業して、一人暮しをして大学に通えればいいと思う。そうすれば何も心配
はいらないだろう。とりあえずあとしばらくのささやかなイベントを楽しみに廊下を歩く。
 いつものように巧たちの笑い声が響いている。
 だんだんと話の中身が聞こえてくると、少しでも長く、と都の足は鈍くなっていく。
 だが、その日の話は少し勝手が違っていた。

 6
 
 巧は最近よく眠れなくて、その理由について考えることが多かった。
 もう一度あの少女に会いたい。でもそれは建前で、要するにセックスをしたいだけだと
いうことを自分ではわかっている。
 好きになったわけではない。知りたい盛りにめくるめく体験をしてしまって、それっき
り放り出されたままなのだった。欲求不満だ。
 ボールを蹴っている時だけは無心になれる。だが一度グラウンドを離れるとすぐに皮膚
に柔らかい感触が蘇ってくる。なりふりかまわなければ相手がいないではないが、ケダモ
ノのように暴走することを許さない何かが頭の中にある。
 姉の友人たちにじゃれつかれるのも少し苦痛になっていた。いつもみるみるうちに制服
の前を勃起させてしまって隠蔽工作に難儀する。
(由美さんも環さんも、ついでにはるかも……姉ちゃんも。手出せないのに限ってかわい
いのはなんでだ……)
 そんなこともあって、巧たちの下世話な会話には熱が入る。それがすこしエスカレート
しただけだった。少なくとも巧はそう思っていた。
 
「同じだろ、そんなの」
「ていうかさ、やっちゃいけないことってやりたくなるじゃん?」
「いや、それとは話が全然違う」

「そうだよな、それだとやっていいことなら気持ちよくないのかってことだもんな」
「おまえら理屈はいいんだ。要は『きょうだいでやると普通より気持ちいい』っていう説
が本当かどうか。科学的に検証するのだ!」
「俺はそんなの聞いたことねえんだけどな」
「科学ってなんだよ!」
 ひとりが笑い転げる。話が幾つかに分かれ始め、
「ほら、マンネリになったカップルが刺激を求めてSMに走ったりするじゃん。そういう
意味できょうだいでするっていう背徳感。最高の刺激じゃないか」

「見てきたようなことを」
「遺伝子だよ、やっぱ。遺伝子が似てると身体の作りが近いから、アソコの相性もばっち
りで気持ちいいんだよ、多分」
「ソレだ!」
「言い訳なんじゃねえの?」
 
 その巧の口から出た一言に、一同が注目した。
「な、なんだよおまえら」
 なぜ自分のときだけ、と抗議する巧に何人かが詰め寄る。
「詳しく言ってみな、ん?」

「何言ってんのよ。悪い事したと思ってるから快感のせいにしてるだけじゃん? なんか
気持ちよかったつもりになってるだけだろ」
 離れたい話題なので、巧は冷たい。
「おまえの嘘臭い意見はいい。問題はだ」
 ひとりが話を引っ張りにかかる。
「おまえがあの麗しのお姉さんに何も感じないのかってことだ」
「そんな話だったか?」
「この際そっちを追求するか」
「おまえらな……」
 巧は本当に、そのことに触れたくない。姉や妹じゃなければ声をかけたくなるに決まっ
ている。それも単純に欲望の対象としてだ。そこに大きな壁がある。
(恋愛感情があるっていうなら、ちょっとは考えないでもないけどな)
 現実にはそれもどうだろうか。
「エロ漫画の読み過ぎなんだよ、おまえら」
「なあ巧。こう考えるとどうだ? もしかしたら本当にきょうだいでする方が気持ちいい
んじゃないだろうか、だとしたら、弟とか妹とか、そういうのがいる奴だけが至福の快楽
を得られるんだ。これは特権だぜ」
「おまえ、頭おかしいんじゃねえか?」
「いいから黙って言わせれぇ!」
 他の一人が興奮して巧を黙らせている。

「どうだ。あの姉さんだけじゃない。おまえには妹もいただろう。巧、おまえはせっかく
の環境を宝の持ち腐れにしているんじゃないのか?」
「お……」
「何、妹もいたの? どんなのよ、写真!」
「俺知ってる。姉ちゃんはちょっと近寄りがたいけど、あの子はすげえいいよ! かわい
いし普通に口きいてくれるし」
「名前は?」
「うるせえ! 名前はキム子で身長2メートル。林檎を握りつぶす逸材だ」
「おおっ、必死に隠してやがる! ひょっとしたら巧、その妹が好きなのか!」
「そういうことなら話は早い。押し倒して事の真相を報告するのだ!」
「わかった、もういい……」
 巧は根負けして机にへなへなとうつ伏せた。
「おまえらの言う通り姉ちゃんも妹も押し倒してアソコの具合とか反応とか相性をつぶさ
に報告するからもういいだろ?」
 場が巧のまさかの発言に固まり、間があって色めきたとうとした瞬間、巧が、
「なんて言うと思うか、この駄目人間ども!」
 と立ちあがって、こきおろした。
 一気に全員からブーイングが起こった。

「まあな、正直うちの姉ちゃんは申し分ないいい女だしな、考えなくもなかった。ちょっ
とやる気出てきたぞ。だが、おまえらはほんのチョッピリも楽しませてやらん! こっそ
り一人で楽しませてもらう!」
 ついには靴のまま机に上って踊りながら巧は煽りまくっていた。
 てめー、この野郎、と怒号がうずまいて、誰もがいつにない元気さだった。
(うーん、ちょっとやりすぎか)
 そう思いつつもやめられない馬鹿騒ぎに巧は時間を忘れる。
 
 都は柱の陰から一歩も動けずに固まっていた。
 目を見開いて、今までで一番酷い動悸に胸を締め付けられている。
 下品な会話とインモラルな題目、理解の外側にある無秩序。
 巧がその場のノリを最大限に利用して遊んでいたことを、都はどれほども理解していな
かった。そして自分が何に衝撃を受けているのかもよくわかっていなかった。
(あのときみたいに……)
 邪な者から守ってくれた時みたいに。
(もし巧が目の前にいたら、私はたぶん何かを言ってしまう)
 自分でも気付いていない何かが口をついて出てきたらどうするのだろう。
(行かなきゃ)
 階段を降り、迂回路を通って生徒会室を目指す。
 頭の中で、全ての人間関係の再定義を始めてしまいそうだった。
 父の屈託ない笑顔が浮かぶ。
 はるかの笑顔。そして、巧。
 いつも必要以上に巧にまとわりつくはるかの、イメージに語り掛ける。
(はるか……はるかは巧のことが好き?)
 答えが返ってくるはずはない。つぶやきながら歩く。
「私は、嫌いよ……」 

 予選大会のレギュラーが確定し、巧は練習に余念がない。
 生徒会の引継ぎを無事終えた都は、それからの放課後をグラウンドで過ごすようになっ
た。
 一度だけ、あの男が通りすぎるのを見たことがある。
 緊張した。そして目ざとく巧と、練習パートナーをやっていた部員がいっしょに話し
掛けて来て、その緊張から解放される。
 それはたった一度のことだったが、そしてあの男はたまたまそこを通っただけだった
のだが、都は軋轢そのものからも解放されていたのだ。
 そのことを思う。
 都の目の前で巧は、ミスを繰り返しながらも、ひとつずつテーマをクリアしていく。
 複雑な連携になるともう都にはその意味がわからなくなったが、巧の身体の動き自体
はサッカーの動きであり、「上手い」とわかる。
 その動きをずっと目で追い続ける。
 
「いやー、こりゃまた大胆なことだねえ」
「環……」
 フェンス越しに鞄を持った環を認め、
「終わったの」

「こっちは室内だからそう長時間続けらんないのよ。もう暑くて」
 がちゃがちゃとフェンスをいじりながら、
「都は巧クンにべったりだし」
「約束を果たしてもらってるだけよ」
「いーなー都。私も巧クンにつきっきりで守ってほしい……」
「後ろで後輩たちが見てるわよ。大人気じゃない、環」
「女はどうでもいいの。ああ、緒戦敗退してサッカー部の応援に専念しようかな」
「先輩、ヒドイ! がんばって優勝しようって……」
 環のフォロアーとおぼしき女子バスケ部員の一部から悲鳴が上がる。
「ほんと、酷い先輩……そういうことをするなら応援も行ってあげないし、友達もやめ
る」
「まあ、マジになんなって。それとも巧クンを独占していたいからとか?」
 外野を片手間であしらいながら、環は笑っている。
「この大会で引退だしさ、その後の時間の使い方を巧クンに相談しないとね」
「受験勉強すればいいじゃない」
「するわよ? 巧クンと。っていうかそっち入れてくんない? あ、私だけ」
 後輩たちの悲鳴がまったく聞こえないふうに、環は移動してきて都の隣りに座った。
「大会終わったら、由美の奴とも遊んでやんないとなー」
「私は勉強するから、誘わないでね」

「誘いませんとも、もう他に誘う相手は見つけております、お姉様」
 環があくまで挑発する。
 挑発だとわかっていて都はこれまで普通に受け流してきたのだが、今の都に流す余裕
はない。顔には出さない代わりに、心の中は酷い状況だった。
「勝手にすれば」
「……」
 環は背伸びをして、グラウンドに目を移した。
「おー、やってるやってる」
 ベンチにだらしなく腰掛け、短い髪を触りながら、
「あ、ボレーシュートだあ。やるう……」
 グラウンドの反対側の土手の上、サッカー部のファンらしき女子の一団が騒いでいる
のが目に入った。半分は三年のレギュラークラスの選手たちに声援を送っているが、残
りは全て巧の名を呼んでいる。一挙手一投足に反応されて、それでも当の巧がそれを意
識している感じはない。
 環はぼんやりとそれを眺め、飽きると、
「待鳥くーん、だってさ」
 都は応えず、目の前の世界に見入っている。
 環は肩をすくめ、
「あのうちの何人かはそのうち巧クンに告白するね、間違いなく。がんばらないと横か
らさらわれちゃうよー」

「それ、私に言ってるの?」
 その都の声の低さに環は思わず引いてしまって、なんとか気を取りなおすと、
「ちょっと心配でさー。都、オトコとつきあったことないじゃない」
「要らないもの」
「そこなのよ。巧クンがいるから、でしょ? もう18なんだからさー、ブラコンは卒
業しないと」
「……ブラコン?」
「だからそうやって顔逸らしたまま凄まない」
「……」
「あ、ほら。練習終わったみたいよ? お疲れー」
 環が立ち上がって、タオルを振り回しながらサッカー部員たちの方に駆け出すのを都
は切なく見送る。
 確かに恋と呼ばれるものをよく知らない。
 恋愛映画を見たり友人たちの話を聞いたりしてそうかと思うものの、どこか他人事だ。
 手紙で、口頭で、一方的に想いを打ち明けられて戸惑う。
 でももしそれが既に知っている感情のどれかだとしたら?
 
(……なんか、うーん)
 巧は環から投げられたタオルを使いながら都のほうを見て、少し注意を引かれていた。
 顔馴染の三年生たちと話しながら、時々環が笑い声を上げている。

「遠山、あんたはエライ!」
 それに引き戻されて、巧は環の横顔を見やる。
 目元の締まった綺麗な顔だ。
 姉の親友でなければアプローチしていたかもしれないと、出会った頃のことを思い出
した。そういえばなぜ姉に気兼ねしたのだったか。
(環さんって……年下好きそうだし)
「なあに? 私に見とれてたか」
 そんなふうに目ざとい環の相手をしながら、巧は都の様子に絶えず気を配っていた。
微妙な違和感が消えなくて胸のあたりがざわついている。
「いたっ!」
 目の前がおろそかになってしまって、フェンスに体当たりした巧を見て環が大笑いし
た。そこで見られていたことに気付いたらしい都が立ち上がって、グラウンドに背中を
向けた。
「いけね。急ぎます、先輩お先」
 後片付けと着替えを手早く済ませて巧が出てきたとき、都はいなくなっていた。
 探してみると、環もいない。
 と思ったら思いきり後ろから抱きつかれていた。
「やっ。お疲れ」

 明らかに女、背中に押し付けられる胸のふくらみと体格ですぐに環とわかる。ついそ
の感触に浸ってしまい、あわてて、
「あのね。いいけど」
「あら、うれしい」
「姉ちゃんは?」
「帰っちゃったかも」
「ええー? なんだよそれ」
 環を引きずって、巧は都を追いかけようとするが、背の高い環につかまえられている
ので苦労する。
「……なんで邪魔すんの」
「んふふー。都に取られたくないから」
「はあ? 姉ちゃんもなんか変だし、環さん、俺の姉ちゃんじゃないし……え?」
「私も帰るわ」
 環がさっさと身を翻し、手を振る。
 応えておいて、巧は疑問符を回転させながらも、都を追いかける。
「あんまり都を困らせんなよー」
 少し投げやりな調子の環の声が背中に届く。
「ありゃあ欲求不満だからなー」
(なんのこっちゃ。欲求不満はこっちだっての) 

 追いかけはじめて、すぐに歩いていく背中を見つける。
(まだなんかあるんじゃないか)
 姉に感じる違和感から、巧の頭にはそれがある。
 姉を悩ませているものに興味があった。
 しばらくその後ろ姿を眺めて歩いた。
(ああいう制服のスカートってのは、お尻の形がいまいちわからなくてダメだよ。で
も、……ほんっと、手足は細いなあ)
 姉の身体について、巧が思うのはまずそのことだった。
 昔は巧も姉以上に線の細い子供だった。
 
 髪をわずかになびかせながら、都は巧の前を行く。
 巧は、今の不安定な姉に引き付けられたままの自分に、少しいらだっていた。
 姉が何を考えていても、今までは大した問題ではなかったのだ。
 今は無性に気になって、そしてそれに簡単に左右されそうになっている。
「またなんかあったろ」
 追いついて並びながら、巧は意識して軽い調子で聞く。
「別に」
 そっけなく、都は巧に顔も向けずに返して歩いている。

「そっかな、ここんとこ変だぞ。脳波乱れっぱなしって感じ?」
「変なこと言わないで」
 そのまま都は黙り込んでしまう。そして、しばらく考えながら歩いていた巧の、突然
の一言に乱される。
「姉ちゃん、恋人つくれ」
 
 都はそのまま歩いて、苦労して、やっとのことで言い返した。
「……何言ってるの?」
「環さんが言うにはさ」
「やっぱり環なのね……」
「なんだ、言われてんだ? あの人、言いにくいこと平気で言っちゃうからいいよなあ。
姉ちゃんの友達ってみんなああだよね。その割にっていうか、そのせい? 姉ちゃんく
らいになったら選び放題なんだし、馬鹿だけどいい奴いっぱいいるぜ?」
 そのあとの言葉に、都は捕まってしまった。
「姉ちゃん欲求不満なの?」
「環に何を言われたのか知らないけど」
 知っておきたいことがある。
 まさかブラコンなんて言葉を聞かされていないか。
「放っておいて」

 聞けないから結局そう言う。
 
 連れだって門をくぐり、玄関を入って靴を脱いで、階段を上って、そこではじめて都
は巧を咎めた。
「どこまでいっしょに来るのよ」
「姉ちゃんの部屋まで」
「来ないで」
「あれ、冷たい」
 その一言で巧があきらめて引いたものと都は思った。
 扉がちゃんと閉まるのを確認しなかった。
 明かりをつけずに、鞄を椅子に置いて制服の胸のリボンを解く。
 スカートのホックに手をかけて、部屋の反対側にくるりと身体を反転させた時、自分
のベッドに腰掛けて楽しそうに見ている巧が目に入った。
 そのまま身体が固まる。
「あ、もう振り向いちゃった」
「……何してるの?」
「姉ちゃん、その声怖すぎ」
 巧に指摘されるまでもなかった。
 思い出せる限りの記憶の断片が、矢継ぎ早に都の心を灼いていた。
 巧の声と言葉、日常的に目にする手や足の動き。
 ボールを追いかける機能的な動き。

 昔から変わらず薄い体と綺麗な顔、髪。
 それを見てきた都の中で、確実に何かを形作っている。その声は、それを身体の外へ
弾き出そうとする刃だ。
 抱きしめられた感触は何度でも蘇ってきた。
 それをどこにも逃がすことが出来ないのでつらかったのだ。
 都にも自分が出した声に聞こえなかった。
 
 巧はその都の目を見て、得体の知れない違和感を感じた。
(なんなんだこれは)
 眉をひそめてしまってから、あわててにっこり笑ってみる。
 いつものように叩き出されるべきだろうと思って、巧は姉の肩に手をかけようとした。
 ふと「違和感」の正体を思いついて、恐れつつも言ってしまった。
「ひょっとして姉ちゃん、今、欲情してる?」
「……ぃ…………」
 
 嫌だ、という言葉が都ののどで止まった。
 本能的に蹴り出した右足が、立ち上がった巧の足の間を抜けた。あまりに直接的な問
いかけのせいで、身体がまともに動いていなかった。軸足になった左の膝が抜けて、都
の身体はフローリングの床に叩き付けられようとしている。
「あぶね! ……っ」

 巧がとっさに出した両手で都の腰を掴み、落ちていく上体を追って、そこから片手を
背中に入れ、そのまま都の身体を横に逃がしてベッドの上に放り出した。
 逃がしきれず、巧も身体を持っていかれる。
 ベッドの上で身体が上下になった。
「あ……」
 息をのんで下から見上げる都に、巧はぎりぎりまで顔を近づけ、
「あぶないって」
「ご、ごめ……」
 そのきわどい距離に都は即座に反発して上体を捻った。薄暗いままの室内でも、この
距離で今の顔を見られるのは怖い。
 その動きがよくなかった。スカートがめくれて、あわてて出した手で巧の足を払い、
巧の身体が都の上にまともに落ちた。
「や……」
 瞬間的な圧力に押され、都は胸を詰まらせた。
 頬と頬が擦れ、巧の頭が都の頭の真横に落ちる。
 都は硬直したが、巧はすっと上体を起こして、都を覗き込んだ。
「姉ちゃんって、やっぱ柔らかい」
 身体が震え始めて、都は頭の中でのたうつイメージの嵐に飲みこまれている。
 巧が目の前でにこりと微笑んだ。
「落ち着けって。なんなら、俺が一時の慰めになってあげよう」

 そんなことを言って、巧が都の細いあごに指をかけた瞬間、都は切れた。
 
「人の気も知らないで!」
 わけがわからなくなって、めちゃくちゃに巧を打った。
「じょ、冗談だって!」
 巧は、都の肘や膝を肉のないところに食らって、廊下に逃げながら、
「いたた……、冗談、ちょっと仕返ししようとしただけじゃん」
 都には聞こえていない。
 完全に目がすわっていて、手の施しようがない。
 巧は容赦ない追い討ちをもろに受け、
「つうか、姉ちゃんかわいすぎ」
 最後に余計な一言を言った。
「そういうことを……言わないで!」
 都の、体重のうまく載った偶然の一撃に、巧の身体が綺麗に飛んで、階段を落ちた。
 聞いたことがないような大きな音が響き渡り、巧は下の廊下でひっくり返ることになっ
た。
(なんでこういうときにはるかがいないんだ)
 右腕に走る激痛と、階段を蒼くなって駆け下りてくる姉の姿に、
(今自分がどうなってるのかまったくわからん。姉ちゃんがなんか言ってるなあ、玄関
の扉の音? 遅いんだよ、はるか)
 巧の意識は薄くなっていく。最後に顔に熱いものが張りつくのを感じて、不思議と痛
みが弱くなった。 

 一度気を失ったのか、ぼんやりしたままだったのかよくわからないまま巧は玄関に横
にされていた。はるかがしきりに声をかけてくれているのに気付く。
「あのな……こんなことで救急車なんか呼ぶな」
「いいから!」
 都の取り乱した声に目が点になる。
 誰のせいだと言いそうになりながら、一応担架に素直に乗せられてみる。
 送りつけられた、夕方の病院内を往復した結果、いつのまにか検査入院することになっ
ていた。
(ばか姉ちゃんめ……三日も……あんな大騒ぎしなきゃすぐ帰れたのに)
 だが、ギプスに固められた右手が、おとなしくしろと痛みを伝えてくる。
 たかが折れただけで意外に消耗するものだと、変に感心する。
 鎮痛剤かなにかの作用で頭がはっきりしてこない中、巧は一連の都の行動をぼんやり
思い返す。その裏にあるものに全く気付かないというわけには、やはりいかない。
 本気の相手に冗談で応じた罰のようなものだ。
 でも、わからない。
 なぜ、そうなのか。
 そう思いながらも、ゆるんだままの頭で考えている。
 姉に触れる方法、姉を喜ばせる方法を。

(一回姉ちゃんにじかに触ってみたいなあ……)
 そしてまだそんなことを考えていたりする。
 検査は明日からになって、とりあえず病院のベッドで退屈な時間を過ごす。
 巧は誤って階段から落ちたと主張したものの、はるかには早々に、都に突き落とされ
たことがばれてしまっていた。
「どう見たって現行犯じゃない。お兄ちゃんいったいどんな怒らせ方したのよう。お姉
ちゃんも! ここまでやるなんて、ほんと信じられない」
 ひとしきり騒いだはるかを父の透が引っ張って帰ると、都は時間ぎりぎりまで、と巧
の世話を焼きはじめた。
 そのうえ明日は休んで検査に付き合うと言い張っている。
 
 巧は気が気ではない。
 都は事の原因には一切触れずに巧の相手をしている。姉が今何を考えているのか、想
像するのも恐ろしい。
 病院の真っ白なシーツを引っ張りあげて、姉の視界から逃げる。
(なかったことにしてしまいたい、あー、このまま便所に流してしまいたい……)
 目を閉じて考えようとするとイメージにつきまとわれて悶えてしまう。
 それでも体力の消耗があったせいか、深く眠れそうな気がする。
「ねむ……」
 伝えるともなく言った後にもう、巧は眠っていた。

 
「……」
 巧が眠ったのに気付いて、都はとたんに落ち着きをなくしていた。
 張り詰める必要がなくなって、なにをしていいかわからなくなる。
 部屋を見渡す。
 四人部屋だが、部屋が余っているのか他のベッドに患者はいない。
 することがないので、無意識に巧の寝顔に見入ってしまって、気付いて目を逸らす。
顔が熱くなる。何度も見てしまう。
 都は何も怒っていなかったし、むしろ、骨折させたことも忘れて、こんな風に人目を
気にせず巧の寝顔を見ていられる状況に感謝し、浸っていた。
 巧の綺麗な顔の目元、口元
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