えちえち体験談
堕とされた母 ?
−11−
ホックを外され、肩紐は二の腕にズリ落ちている。
窮屈な戒めから解放された豊かな双乳は、ともに達也の手に掴みしめられて、粘っこい愛撫を施されていた。
「気持ちいい? 佐知子さん」 執拗な口吸いを中断して、達也が問いかける。
「……あぁ……達也く…ん……」
解放された口から、掣肘の言葉を吐くことも、佐知子は、もう出来なくなっている。
薄く開けた双眸に涙を光らせて、か弱く達也の名を呼ぶだけ。
揉みしだかれる乳房から伝わる感覚は、快美すぎた。
(……熱い……) 直接、達也の手を感じる部分が、火のような熱を孕んで。
その熱に、肉が溶かされていく。ドロドロに。
「ほら、見て、佐知子さん」 達也が重たげな肉房を下から持ち上げるようにして、促した。
「佐知子さんの、ここ。こんなになってる」
ノロノロと視線を動かして、佐知子は達也の示唆した部分を見た。
たわわな肉丘の頂上、硬く尖り立ったセピア色の乳頭。
色を濃くして、ぷっくりと盛り上がった乳輪の中心に、見たこともないほど充血しきった姿を晒している。
「……ああ……こんな……恥かしい……」
愕然と見たあとに、居たたまれないような羞恥を感じて佐知子は泣くような声を洩らした。
「どうしてさ? 可愛いじゃないか」 達也の言葉が、いっそう佐知子の恥辱を刺激する。
はるか年下の若者に、いいように身体を玩弄されて。その結果、引き出された肉体の反応を、“可愛い”などと評されて。
情けなくて、悲しくて……しかし、蕩けさせられた胸には、そんな思いすら、奇妙に甘く迫ってきて。
「……もう…ゆるして……達也くん…」
結局、佐知子に出来るのは、頼りない声で、達也のゆるしを乞うことだけだった。
「ゆるして、なんて。佐知子さんをイジめてるつもりはないんだけど」
微笑をはりつけたまま、達也がうそぶく。
「ただ、気持ちよくなってほしいだけだよ。僕の手で、気持ちよくしてあげたいだけ」
そう言って、また、指を微妙に蠢かせた。
トロトロに蕩けた豊乳を、ジンワリと揉みこんでいく。
「アッ、だ、ダメッ」 たちまち、佐知子の声が鼻からぬける。
火をつけられた乳房に、じれったいほどの、ゆるやかな愛撫。
思わず、“もっと強く”と求めたくなってしまって。
しかし、これ以上の耽溺の行きつく先への恐れだけは、佐知子の意識を離れない。
佐知子はせくり上がる感覚を振り払うように頭をふって、精一杯に強い声で断じた。
「ダメ、駄目よッ、いけない」 すると、達也は、佐知子の耳元に口を寄せて、
「大丈夫。これ以上のことはしない。誓うよ」
佐知子の心を読んだような言葉を、真剣な声音で囁いた。
「もう、バスト以外の場所には触らないから」
「………………」
「だから、もう少しだけ。僕の手を感じていてよ」
「…………本当に…?」
「嘘はつかないよ。佐知子さんのいやがることは、したくないから」
「………………」
「だから、ね? もっと気持ちよくなってよ」
「……や、約束よ?」 ついに、佐知子は許諾を与えてしまう。
「ほ、本当に、胸だけよ? それ以上は…」
せいぜい、達也の強引さに押し切られたようなかたちを繕って。
佐知子自身も、そう思いこもうとしていたが。
心の底での計算と妥協は、見え透いてしまっていた。すなわち、
“これ以上、危うい域に踏みこまないのならば…もう少しこの愉悦を味わっていたい”と。
「わかってる。約束は守るから」
内心の嘲笑は、無論おくびにも出さず、達也はもう一度請け負った。
「………………」
達也の手をつかんで、かたちばかりの抵抗を示していた佐知子の手が下ろされる。まだ迷いの気配を見せながらも。
達也の手が、佐知子の白衣を、さらに大きくはだけさせた。
双乳の裾野に絡んだブラを、鳩尾へと引き下ろした。
「……恥ずかしい……」 改めて、裸の胸を達也の前に開陳することに、強い羞恥を感じて。
佐知子は、か細い声で呟いて、眼を伏せた。
「……あまり、見ないで……達也くん……」
「どうして? こんなに綺麗なのに」
「……もう、若くないから……」 火照った頬に、寂しげな翳りを刷いて、佐知子は言った。
子を産み育てた中年の母親の乳房が、若い達也の眼にどのように映るかと思うと……。
「そんなことないよ。本当に綺麗だよ、佐知子さんの胸」
「………………」
達也が力をこめて告げた言葉も、そのままに受け取ることは出来なかったが。
それでも、ひとまずの安堵と、くすぐったいような喜びを、佐知子は胸にわかせる。
達也にしても、それは本音からの評価だった。
いい乳だ、と本心から思った。
たわわな量感と、艶美な曲線。あくまで白く滑らかな肌もいい。
確かに、若い娘のような張りはなく、仰向けのこの姿勢では、自重に負けて、わずかに潰れるようになっている。
また、地肌の白さのせいで強調される乳輪や乳頭の色の濃さや、肥大ぶりも佐知子の気にするように年齢のあらわれであり、子持ちの熟女らしさといえるだろうが。
そんな特徴のすべてが、年増趣味の達也の好みに合っている。
あえて文句をつけるとすれば、むしろ、年のわりには淫色が薄いことだと思った。
(……まあ、それは、これからってことだな)
内心に呟きながら、達也は、こんもりと隆起した肉丘に手を這わせた。
「こんなに大きくて、柔らかいし」
賞賛の言葉を佐知子に聞かせながら、それを確かめるように、指に力をこめる。
ズブズブと指が埋まりこんでいくような柔らかさ。しかし、その奥に、
まだしっかりとした弾力を残していて。
(いいねえ) やはり、形もボリュームも肉質も、極上の熟れ乳だと喜ぶ。
(……それに。感度もバッチリだしな)
軽い接触にも、佐知子は切なげに眉をたわめて、鼻から荒い息を洩らす。
乳房には、熱く体温がのぼっていて。
消えない快楽のおき火に、炙られ続けていることは明らかだった。
(さて。またひとつ、教えてやるか。ウブな佐知子ちゃんに)
この二日間で、キスの快楽をたっぷり仕込んでやったように。
また、新たな快楽を植えつけてやろう、と。
達也は、大きく両手の指を広げて、巨大な双つの肉を掴みなおした。
「……ホントに、大きいなあ。僕の手じゃ、掴みきれないや」
「いやぁ……」 つくづくと感嘆して、佐知子を恥じ入らせておいて。
手にあまる巨大な肉房を、やわやわと揉みたてていく。
「……アッ……ア……」
「フフ、それにとっても感じやすいんだよね」
「…やぁ……あ、あっ…」
“胸だけ”という制限で、達也の行為を受け入れたことで、佐知子は、与えられる刺激を、より明確に感じ取る状態になっているようだった。
思惑通りのそんな様を、達也は冷笑して眺めて。
無防備に捧げられた双乳を、嵩にかかって攻め立てていく。
ギュッと鷲掴みに力をこめれば、柔らかな脂肉はムニムニと形を歪めて指の間から飛び出してくる。
十本の指に小刻みなバイブレーションを与えてやれば、プルプルとたぷたぷと面白いほどに震え波打った。
そして、それらの攻めのひとつひとつに、佐知子は、身をよじり、くねらせ、のたうった。
「ヒッ、ア、いやっ、ア、アア……ああぁっ」
引っ切り無しの嬌声を洩らしながら、乱れた髪を左右に打ち振る。
はしたない声を封じようとするのか、快楽に溺れる表情を隠そうとしてか、片手の甲を口元にあてて、もう一方の手は、ギュッとシーツを掴みしめていた。
「佐知子さん、気持ちいい?」
「……あぁ……達也…く…ぅん……」 訊くまでもないようなことをことさらに尋ねる達也。
佐知子は、けぶる眼を薄く開いて、舌足らずな声で、甘く恨むように達也を呼ぶだけ。
少なくとも、愉悦を否定しているのでないことは明白だったが。
「気持ちよくないの? こんなんじゃ、足りない?」
「や、ちが……アアアッ!」
意地の悪い解釈に、慌てて左右にふりかけた頭は、叫びとともに
後ろに反りかえって、ベッドに擦りつけられた。
「フフ、やっぱり、ここは感じる?」
「ア、アッ、ダメ、達也くん、そこは、そこ、は」
達也は、両手の親指を、これまで捨て置かれていた佐知子の乳首にあてて、クリクリとこねまわしたのだった。
「ヒ、アッアッ、ダメ、そ、そこは」
ただでさえ痛いほどに勃起しきった肉豆をくじられて、衝撃といっていいほどの強い感覚が突きぬける。
「やめっ、やめてっ」
佐知子は達也の両の手首を掴んで、必死に身をよじって、強すぎる刺激から胸を逃がそうとした。
達也は、それを許さず、さらに指に力をこめて。
濃茶色の肉突起を、爪弾くように弄い、グリグリとこねくりまわし、
柔らかな肉房へ埋めこもうとするかのように、押し揉んだ。
「ヒイイッ!」
「どうなの? 佐知子さん。感じてるの?」
歯をくいしばり顎をそらして、いきんだ声を上げる佐知子の顔を覗きこんで。
しつこく問い質す達也の眼は、嗜虐の愉悦に鈍く輝いている。
仮面がズレて、一瞬垣間見せた本性……しかし、暴虐を受ける佐知子には、それに気づく余裕など、あるはずもなかった。
「ヒ…イッ、た、達也くん、やめて、そこは、もう、やめ」
「どうして? 感じないの? ここ」
「ち、ちがうっ、感じ、感じすぎるから、だから、やめてぇっ」
「やっぱり、そうなんだ」
無理やり佐知子に快感を白状させて、達也はようやく荒っぽいいたぶりを止めた。
しかし、それで佐知子の双つの肉葡萄を解放したわけではなくて、
「じゃあ、ここは優しく触らないとね」
指先を、隆起した大きめの乳暈にそっとあてて、軽く圧迫しながら、なぞっていく。
ゆっくりと数回、屹立した乳首の周りに円を描いてから。
親指の腹で、セピア色のしこりを根から先端へと擦り上げた。
「……フ…ハァ…ア……」 佐知子が感じ入った吐息をもらして、喉を震わせた。
硬くしこった乳首の独特の肉感が、達也の指を楽しませたが。
無論、佐知子の感じる感覚のほうがはるかに強い。
「……ア……あぁ、達也…く…ん……」
ヌルヌルとした汗をまぶした柔らかな指の腹で乳首を擦られるのはたまらない感覚だった。
手荒い玩弄の後の優しい愛撫が、ことさらに効く。ジンジンと響いてくる。
「すごいな。こんなにビンビンになって」
「……いやぁ……」 感嘆する達也に、羞恥の声をかえしながらも。
佐知子は、刺激に眩む眼を薄く開いて、嬲られる己が乳房を盗み見た。
(……あぁ……こんな……) 達也の言葉通り、“ビンビンに”勃起した乳首。
いまは二本の指に摘まれて、ユルユルと扱かれて、切ない快感を乳肉全体へと波のように走らせている。
「敏感なんだね。佐知子さんの乳首」
「あぁ、いやっ、ちがうの」
確かに、そこが感じやすい場所だという認識は、以前からあった。
母子の秘密の閨で、裕樹が特に執着を示すこともあって
(…というよりも。乳房を吸われること以外では、肉的な快感を得ることがなかったので)佐知子にとっては、唯一の快感のポイントとして意識するのが、その個所だった。
しかし。
「……ちがう、の…こんな、こんなに……」
「こんなに? 感じたことはないって?」 達也の問いかけに佐知子はコクリとうなずいた。
その通りだ。こんなに感じたことはない。こんな感覚は知らない。
「……達也くん、だから……こんなに…」
秘密を明かすように、ひっそりと呟いた。
恥ずかしげに、しかし、甘い媚びを含んだ眼で見つめながら。
「うれしいよ」 達也は笑って。佐知子の頬に、軽く口づけて。
「もっともっと、気持ちよくしてあげる」
「……あぁ……」 伏し目になった佐知子の、長い睫毛が震える。
怯えと期待の半ばした慄きにとらわれながら、達也が掬い上げた肉丘の頂へと口を寄せていくのを、佐知子は眺めて。
「……ア…ア……アァッ!」
唇が触れるのと、佐知子が昂ぶった叫びを張り上げて背を反らせるのと、どちらが先だったか、微妙なところ。
硬く尖った乳頭を唇で挟みこんで、チロリと舌を這わせた達也。
それだけでも、甲高い悲鳴を上げて身悶える佐知子の逆上せぶりを見て取ると、一気に烈しい攻勢に出た。
大きく開いた口にデカ乳を咥えこんで、音たてて吸い上げ、こそげるように舐めずり、歯で柔らかく噛んで扱きたて、しこった乳首を舌で転がした。
「ヒイイィッ、アヒ、ん…あああっ、ヒアアァッ」
暴虐的なほどに苛烈な刺激に双乳を攻め立てられて、佐知子はただ甲走った叫びを引っ切り無しに洩らして、身悶え、のたうった。
「ア、アァッ、いや、こんな、ダメェッ」
味わったことのない感覚、鋭すぎる快感は、いくら叫んでも身もがいても身体から出ていかずに。肉体の奥深くで凝り固まり、膨れ上がっていく。
「た、達也くん…達也、くん…」
経験したことのない肉の異変に怯えて、佐知子はすがるように達也の名を呼んだ肩を掴んでいた両手は、いつしか達也の頸にまわされて、抱きつくかたちになっている。
「……いいんだよ」 くらいついていた乳房から口をズラして、達也が囁く。
「このまま、もっと気持ちよくなって」
「…アァ……でも、こんな……ヒイイィッ」
達也は再びかぶりつく。すでに、より感度がいいと見破った佐知子の左胸へと。
「ア、ああぁッ、アッアッ…」 ひときわ苛烈な口舌の攻撃を受けて。
燃え盛る乳肉の快楽が急速に高まり、一点へと収束していって……
「……ア……ヒイイィィッ!」 爆ぜた。
ギリリッと達也の歯が、乳首の根を強く噛みしめた瞬間に。
圧し掛かる達也の体を跳ね上げるようにエビ反った佐知子の肢体が、数秒硬直する。
“イッ”と歯を食いしばって、苦しげな皺を眉間に刻んだ顔を、頸が折れそうなほど、うしろへとふりかぶって。
ギューッと、達也の首を抱いた腕に力がこもって。
乱れた髪の先から反り返った足の指まで。数瞬の間、ピーンと硬直させて。
それから、ドサリと重たい音をたてて、崩れ落ちたのだった。
……激発は唐突であり、さほど深く大きなものではなかった。
だから、佐知子の意識の空白も、短い時間だったのだが。
「……ハ……ア……あぁ…」
自失から戻っても、佐知子には、なにが起こったのか解らなかった。
胸先から強烈な刺激が貫いた刹那、意識が白光に包まれた。
覚えているのは、それだけだった。
「……あ……わ、たし……」 呆然と呟いて。頼りなく揺れる眼が、達也をとらえる。
達也は、佐知子の汗を含んで乱れた髪を、優しく手で梳いて、
「……佐知子さん、軽くイッちゃったんだね」 労わるように、そう言った。
「……イッちゃ…た……?」 達也の言葉を鸚鵡がえしにして。
数拍おいて、ようやく佐知子の胸に理解がわいた。
(……あれ…が……?)
“イく”という現象、性的絶頂に達したということなのか、と。
初めて垣間見た忘我の境地を、呆然と思い出す。
「うれしいよ。僕の手で気持ちよくなってくれて」
微笑をたたえて、そんなことを囁きかけながら。
(……ま、刺激が強すぎてショートしちまったってとこだな)
その裏の冷静な観察で、そう断じる達也だった。
佐知子自身よりも、はるかに正確に、彼女の肉体に起こったことを把握している。
つまりは、佐知子の感度の良さと、そのくせ快感への耐性がないことからの暴発であったのだと見抜いている。
まだ呆然としている佐知子を見れば、あの程度のアクメさえ、これまで知らずにいたことは明白で。
記念すべき最初の絶頂としては、あまりに呆気なかったと思うが。
(まあ、この先、イヤってほど味あわせてやるわけだからな)
それも、こんな浅く弱いものとは比べものにならないキツいヤツを。
とにかく、これでまたひとつ、達也のゲームは終わりに近づいたわけであり。
それには、チョット惜しいような気持ちもあるが。
佐知子の見せる肉の感受性の強さ、乳責めだけでイッてしまうほどの官能の脆さは、ゲームが終了したあとへの期待を、いやがおうにも高めてくれる。
この熟れきった感度のいい肉体が、本格的な攻めを受けて、どこまでトチ狂うのやら…と、淫猥な期待に胸を疼かせながら。
しかし、達也は、今日はここまで、と自制を働かせる。すぐそこまで迫ったゲームの結末を、思い描いた通りの完全勝利で飾るために。
……達也の手が触れて、いまだ虚脱して横たわっていた佐知子は我にかえった。
これ以上…?と一瞬怯えたが。
達也が、佐知子の鳩尾付近にわだかまったブラを引き上げようとしているのに気づいた。
どうやら、約束通りにこれで終わりにするつもりらしいと理解して。
「…い、いいのよ……自分で…」
慌てて達也を止めて、力の入らない腕をついて、重たい体を起こした。
ズリ落ちたブラともろ肌脱ぎになっている白衣にあらためてそんな放埓な姿を晒していた自分に気づいて恥じ入りながら、達也に背を向けるようにして、手早く着衣を直していく。
さんざん苛まれた巨大な乳房を掬い上げて、ブラのカップに収める……
そんな所作に、いかにも情事のあとといった生々しさが滲むようで達也はひそかに笑った。笑いながら、佐知子の背姿に漂う新鮮な色香を楽しむ。
ホックを留めるために両腕を背後にまわした時に浮き上がった肩甲骨の表情も、奇妙に艶かしかった。
気が急くのか、手元がおぼつかないのか、なかなかホックを留められずにいる佐知子に手を貸してやる。
「……ありがとう……」
「どういたしまして。僕が外したんだしね」
「………………」
小さな呟きに冗談っぽく返しても、佐知子はあちらを向いたままで、俯く角度を深くする。
いつ外されたのかも覚えていない自分を恥じていたのかもしれない。
白衣に両肩を入れて。胸のボタンを留めながら、
「……恥ずかしい…」 ポツリと、佐知子は洩らした。声には涙が滲んでいた。
「どうして? 恥ずかしがるようなことなんか、なにもないじゃない」
心得ていた達也は、佐知子を背後から抱きすくめながら訊いた。
佐知子は抵抗しなかったが、肩越しに覗きこむようにする達也からは顔を背けて、
「……だって……あんな…」
「感じてる佐知子さん、とっても可愛かったよ」
「いやっ…」
「それに。僕だから、あんなに感じてくれたんでしょ?そう言ったよね。うれしいよ」
「………………」 達也の手が佐知子の顎にかかって、そっと向き直らせた。
佐知子は眼を閉じて、達也の唇を受けいれた。
軽めのキスをかわしながら、達也は、佐知子の状態をうかがう。
腕の中、抱きしめた身体は、まだ高い熱を孕んで。
女の臭いが強く鼻をつく。汗と女蜜が混ざりあった、サカリ雌の臭いが。
(こりゃ、パンツはグッショリだな)
この後の、佐知子の行動が、ハッキリと予測できる。
もう少し気持ちが落ち着いたところで。股座の濡れに気づいて。
気づかれまいと必死に取り繕いながら、なにか口実を作って部屋を出ていくまでが。
(…で、トイレなり更衣室なりに駆けこんで。クッサいマン汁に汚れたパンツを見て愕然ってか)
まったく、眼に浮かぶようだと思った。
(……替えのパンツ、持ってんのかね?)
……いま、自分がいる状況が、危うすぎるものであるということを。
佐知子は自覚してはいた。
意識のすみで危険を叫ぶ声を確かに聞いていて。
だが、それに従うことが出来ない。ズルズルと流されてしまっている。
今日もまた、ふたりきりの病室で。
達也の腕に抱かれて、甘美なキスに心身を蕩けさせられて。
しかし、それだけで終わる密事ではなくなっている。佐知子が剥き身の胸を玩弄されて、生まれてはじめてのアクメを味わった三日前から。
いまも、あの時と同様に白衣の前ははだけられ、ブラジャーはズラされて、豊かな胸乳は露になっている。張りつめ、熱く体温をのぼらせて、横抱きの姿勢で脇の下から片乳を掴んだ達也の指の間に、乳首を勃起させている。
だが、それすらも、もうたいした問題ではないのだ。
ふたりの行為が、加速度的に危険な領域に踏みこんでいることを示すのは、達也のもう一方の手の行き先だった。
達也の片手は、佐知子の股間に伸びて、たくし上がった白衣のスカート部分に潜りこんでいるのだ。
佐知子のストッキングは膝まで捲くり下ろされて、両の太腿が白い素肌を晒している。
そして、逞しいほどに張りつめた太腿は、白衣の下で達也の手が微妙な蠢きを見せるたびに、ビクビクとわななき、キュッと内腿の筋肉を浮き立たせ、ブルルと柔らかそうな肉づきを震わすのだった。
「……フフ。すごく熱くなってるよ。佐知子さんのここ」
口を離した達也が悪戯っぽく笑って。“ここ”と言いながら、潜った手にどんな動きをさせたのか、佐知子が高い嬌声を上げて、喉を反らした。
達也は、仰け反った白い喉に唇を這わせながら、お決まりの問いかけを。
「気持ちいい? 佐知子さん」
「……あぁ……達也くん…」 わかりきったことを聞く達也を、恨めしげに見やりながらも。
コクリ、と。小さく佐知子はうなずいた。
素直になれば……もっと、気持ちよくしてもらえる。
それが、この数日間の“レッスン”で、佐知子が学んだことだった。
レッスン−そう、それは肉体の快楽についての授業だった。
無論、達也が教師で、佐知子が生徒だ。
ふたりきりの病室が教室で、教材は佐知子の熟れた肉体。
日に何度となく繰り返される、秘密の授業。
達也は、教師として、この上なく優秀であった。その熱心な指導のもとに、佐知子は急速に快楽への理解を深めている。
本当に……自分はなにも知らなかった、と佐知子は思うのだ。
結婚生活を経験し、子供を生んで。それで、人並みには性についても知った気になっていたけれども。
それが全くの誤りであったことを、思い知らされている。この年になって。
親子ほど年の離れた若い男によって。
巧緻を極める達也の手管は佐知子自身が知らなかった肉体の秘密を次々と暴き立てていく。
性的には鈍であると思いこんでいた自分の肉体が、達也の手にかかれば、たやすく燃え上がり、過敏なほどに感覚が研ぎすまされる。
こんなにも豊かな官能が自分の身体に潜んでいた……という発見は、震えるような喜びへとつながった。より強く鮮明に、達也の手を、唇や舌を感じられることが嬉しいのだ。
だから、佐知子は、ここが病室であることも勤務中であることも意識の外に追いやって従順に達也の行為に身を委ねる。
愛しい若者の手から快楽を授かることに、至極の歓悦と誇らしさを感じて、少しづつエスカレートする達也の行為をゆるしてしまう。
いまも、スカートの中に潜りこんだ達也の手指に、下着越しに秘所を愛撫されて。
まさに、紙一重というべき危うい状況だと自覚しながら、そこから逃れようともせず、緩めた両脚に恭順の意を示して、達也の問いかけにも素直にうなずいて。
あけすけに、この瞬間の愉悦を明かして、さらなる快感を求めてみせるのだった。
「すごく濡れてるよ。また、下着を取り替えなくちゃならないね」
「……いやっ…」
達也の言葉に、佐知子は頬に新たな血をのぼらせて、かぶりをふった。
悦楽の時間のあとに、トイレで、汚れたショーツを穿き替える時の情けなさ。
だが、それほどに身体を濡らすことも、達也によって教えこまれたのだと思えば、この瞬間には、もっと濡らしてほしい、もっと溢れ出させてほしい、という倒錯した衝動がわきあがってくる。
「アアアァッ」
グリリッと、達也の指が、布地の上から強く女芯を押し揉んで佐知子の願望は叶えられた。
新たな蜜を吹きこぼしながら、淫猥に腰がくねる。
「アッ、イ、アッアッア…」
さらに連続するクリ責めに、佐知子の嬌声が高く小刻みになっていく。
そこを攻めたてられて絶頂を極めることも、すでに何度も経験させられていた。
呑みこみの良い佐知子の肉体は、すでにその感覚を覚えていて、忘我の瞬間へと気を集中させていく。
「アッアッ……あ…?」
だが。急激に高まった快感は、不意に中断した攻めに、はぐらかされてしまった。
ボンヤリと開いた眼に怪訝な色を浮かべる佐知子をよそに、達也は、肉芽から離した指を引っ掛けて、ショーツの股布をズラした。
「あ、いやっ…」
ベッタリと貼りついていた布地を剥がされ、熱く濡れそぼった秘肉を晒されたことを感得して、佐知子が心細げな声を洩らしたが。
それが拒絶の意味でないことは、すでに了解済み。
女の部分を直接触れられることさえ、これがはじめてではないのだから。
充血した肉厚の花弁を擽るように弄ったあとに、達也の指は、ゆっくりと進入する。
「……あぁ…」
佐知子が熱く重たい息をついた。女の中心を穿った達也の二本の指をハッキリと感じとる。
それへと、自分の蕩けた肉が絡みついていくのも。
達也の長い指が根元まで埋まりこんで。ゆったりとしたテンポで挿送を開始する。
「ふあっ、あ、いっ、アアッ」
たちまち佐知子は、はばかりのないヨガリ声を上げて、ギュッと達也のパジャマを握りしめて、崩れそうになる体を支えた。
「すごく熱いよ、佐知子さんの中。こんなに僕の指を締めつけて」
囁きで、佐知子の悩乱を煽りながら。達也は抜き差しする二本の指に玄妙な蠢きを与える。
「アヒッ、ア、んあ、ああぁッ」
熱く滾った肉壷を攪拌され、肉襞を擦りたてられて佐知子の閉じた瞼の裏に火花が散った。
たやすく自分の肉体を狂わせていく、達也の魔力じみた手管に畏怖と甘い屈従の心をわかせながら。さらなる狂熱と快楽の中に沈みこもうと、腰が前へと突き出される。裸の腿がブルブルと震えながら横へ広がって、膝の位置で白いストッキングがピーンと張りつめる。
「気持ちいい?」
また、達也に訊かれると、一瞬の躊躇もなくガクガクとうなずいて、薄く開いた眼で、うっとりと達也を見やった。
達也が唇を寄せると、待ちかねたようにそれを迎える。
濃密に舌を絡め、唾を交換しながら、達也の手は休むことなく動き続ける。
女肉への指の挿送を強く激しくしながら、豊満な乳房をキツく揉みしごいて、佐知子の官能を追いこんでいく。
知りそめたばかりの快感に対して、熟れた女の肉体は、あまりにも脆く。
くぐもった叫びを塞がれた口の中で上げた佐知子は、必死にキスをふり解いて、
「アアッ、た、達也くん、私、もうっ…」
切羽つまった声で、いまわの際まで追いつめられた性感を告げた。
また、あの魂消るような悦楽の瞬間を味わうことが出来るのだ、という喜びに潤んだ眼を輝かせて。
−だが。
「ああっ!?」
直後、佐知子の口から洩れたのは、感極まった法悦の叫びではなく、意外さと不満の混じった声だった。
突然達也が、女肉への攻撃を止めてしまったのだ。
「あぁ、いやぁ、達也くん」
絶頂寸前で中絶された快感に、ムズがるように鼻を鳴らして、腰をくねらせる佐知子にはお構いなしに、達也は白衣の下から手を引き抜いてしまった。
「……あぁ…」
泣きたいような焦燥と喪失感が佐知子を襲って。恨むように達也を見たが。
ほら、と、目の前にかざされた達也の手に、
「い、いやっ」
火の出るような羞恥を感じて、慌てて眼を逸らした。
達也の指は、佐知子の吐きかけた淫らな汁にまみれて、ベッタリと濡れ光っていた。
「スゴイね。佐知子さんて、ホントに感じやすいんだね」
「ああ、いやいやっ」
感嘆する達也の言葉が恥辱をあおって、佐知子は小さく頭をふった。
「……た、達也くんだからよ。達也くんだから、私、こんなに」
涙を浮かべた眼で、縋るように達也を見つめて、そう呟く。
実際、亡夫との営みでは(裕樹との情事でも、勿論)これほど濡らしたことなど一度たりともなかったから。佐知子にとっては、それは真実だった。
「うれしいよ」 お定まりの弁明に、これまた、お決まりの言葉と笑みを返して。
その後に。達也は、指にからんだ佐知子の蜜を、ペロッと舐めとって、佐知子に悲鳴のような声を上げさせた。
「や、やめて、達也くん!?」
「フフ、佐知子さんの味」
「い、いやあっ、汚いわ」 咄嗟に達也の手を掴んで止めさせようとする佐知子に、
「そんなこと、あるもんか。佐知子さんの身体から出たものが汚いわけないよ」
ふざけるでもない調子で、そう言い放って。
さらに達也は、チュッと音立てて、指先を吸って見せた。
「……あぁ、もう……」
あまりな達也の行動に言葉を失って、呆然と見やる佐知子。
佐知子の偏狭な常識をはるかに逸脱した行為。変質的ともいえる行為のはずなのに。
しかし、それが嫌悪の感情へ結びつかずに。
(……そんなにも……私のことを……?)
キワどい戯れも、自分に向ける想いの強さのゆえかと。恋と快楽に酔わされた心に納得してしまって、痺れるような歓喜を感じてしまう。
「ねえ、佐知子さん」 達也は、佐知子の手を握って、下へと移動させた。
導かれるまま、佐知子の手は、達也の股間に触れる。
指先に感じた熱と硬度に、ハッと佐知子は息をのんで、反射的に手を引こうとしたが。
無論、達也はガッチリと押さえこんで、それを許さない。
「佐知子さんの感じてる顔が、あんまり色っぽいから。僕のも、こんなになっちゃった」
「……………」
甘えるように囁かれると、佐知子から抵抗の気ぶりが消えた。
ね? と達也に促されて、おすおすと巨大な膨らみに指を這わせる。
「……あぁ…」
相変わらずの、度外れた量感と鉄のような硬さを感じとって、熱い息が洩れた。
佐知子の指に力がこもるのを感得すると、達也は押さえていた手を外して、再び白衣の裾から潜りこませた。
「アッ、い、あぁっ」
秘裂への刺激が再開されると、佐知子は待ちわびたといったふうに、たちまち反応した。
腰をうねらせ、舌足らずな嬌声を断続させながら、達也のこわばりを掴んだ手を動かしはじめる。半ば反射的な行動だったが、さすられた達也の剛直が、ググッと力感を増すのを感じると、もう手を止めることが出来なくなった。
……白昼の病室での秘密の痴戯は、相互愛撫のかたちとなって、いっそう熱を高めていく。
もはや、“達也の強引さを受け入れるだけ”などという、おためごかしの言いわけもきかない痴態を演じながら。
佐知子は夢中で嵌まりこんでいった。
逞しい牡の象徴に触れていると、いっそう血が熱くなって、肉体の感覚が鋭くなって。
達也の手から与えられる快感が、何倍にも増幅されるように感じられた。
だから佐知子は、やがて達也がパジャマと下着をズリ下ろして、猛り狂う怒張を露にした時にも、それを当然のことのように受け容れて、一瞬の躊躇もなく巨大な屹立へと指を巻きつけていった。
−12−
「……あぁ…」
熱く、生臭い息が洩れる。佐知子は快楽に霞んだ眼を細めて、握りしめた牡肉を見つめた。
“生”は効いた。類稀なる逸物の凄まじい特徴のすべてが手肌からダイレクトに伝わってきて脳髄を灼く。総身の血肉を沸騰させる。
狂乱を強める佐知子の肉体を、達也は嵩にかかって攻め立てた。
荒々しく、しかし、悪辣なまでの巧妙さで、パンパンに張りつめたデカ乳を揉みたくり、とめどなくヨガリ汁を溢れ出す肉孔を抉りたてて、母親ほども年上の熟女ナースを
身悶えさせ、引っ切り無しの嬌声を上げさせる。
「アッ、いぃっ、たつや、くん、ああっ」
剥き出しの胸や腿を粘っこい汗にテカらせ、半脱ぎの白衣もベッタリと肌に貼りつかせて、たまらない快美にのたうちながら、佐知子は対抗するように達也の剛直を烈しく扱いた。
達也が顔を寄せると、鼻を鳴らして、自分からも吸いついていく。
舌をからめ、達也の唾を飲みこむうちにも、体の奥で、巨大な感覚の波がせくり上がってくるのを感じた。
(……く…来る…?)
これまでで最大級の波濤を予感して、ブルッと身震いを刻みながら。
無論、肉の震えは、恐れよりも遥かに大きな希求のゆえであったから。
佐知子は、諸手を上げて、迫りくる巨大な波へと身を投げようと……。
……したところで。
「…いま」 口吻をほどいて。達也が囁きかけた。
「佐知子さんと、ひとつになれたら最高に気持ちいいだろうな」
「……あぁ……あ…え…?」
目の前の悦楽を掴みとることだけに意識を占められて、佐知子はうわの空に聞き返したが、
「こんなに熱くなってる佐知子さんの中に、僕のを入れたら。死んじゃうくらい気持ちいいんだろうな、って」
もう一度、より露骨に繰り返した達也の言葉の意味を理解して、ギョッと目を見開いた。
「だ、ダメよっ、達也くん」
「わかってるよ」
怯えた声で掣肘する佐知子に、達也はうなずいて見せる。
「僕も、無理やりなんてイヤだからね。佐知子さんの心の準備が出来るまでは我慢するよ」
年に似合わぬ物分りの良さを示して。それに、と笑って続けた。
「病室で、そこまでしちゃうのはマズいよね、さすがに」
「………………」 曖昧な表情になって。佐知子には、答えようもない。
まだ、達也と最終的な関係を結ぶ覚悟は決められずにいた。
これだけの痴態を演じておいて、いまさらとも言えるだろうが。
それでも、やはり、“最後の一線”を越えるかどうかは、佐知子にとって大問題だった。
それを踏み越えることで決定的に倫理や良識を犯すことになる…という恐れがある。
そんな理性の部分での恐れの感情は、当然のこととしてあって。
しかし。それとは別に、もっと強く大きな恐怖がある。
もっと、根源的な部分で感じる恐れが……。
「だから、いまは、こうして触れあうだけで満足しておくよ」
そう言って、達也は、緩めていた愛撫をまた激しくしていく。
「アッ…はぁ、ああ」
水を差された快感を掻き立てられて、佐知子はたやすく悩乱の中へと追い戻される。
だが、悦楽に浸された意識にも、最前の達也の言葉は刻みこまれてしまっていた。
“ひとつになれたら、最高に気持ちいいだろうな”
……握りしめた達也の肉根が、これまで以上の存在感で迫ってきて。
佐知子は薄く開いた眼で、それを盗み見た。
(……あぁ…) 圧倒的なまでの逞しさと、禍々しい姿形が眼を灼く。
その凄まじい迫力は、佐知子を怯えさせる。
そうなのだ。佐知子が、ここまで痴情の戯れに耽溺しながら、最後の一線を越えることを逡巡する最大の理由は、達也の逞しすぎる肉体に対する恐怖のゆえなのだった。
(……こんなの…無理よ……)
出産経験のある年増女の言いぐさとしては可愛らしすぎる気もするが。
佐知子としては、まったく正直な思いなのだった。なにしろ、佐知子が過去に迎え入れたことがある亡夫と息子の男性は、達也とは比較にならないほど卑小だったから。
(……こんな……)
こんなに太くて長くて硬いモノに貫かれたら……肉体を破壊されてしまう、と佐知子は本気で恐怖する。
だが。その一方で。
その巨大さに、ゴツゴツとした手触りに、灼鉄のような熱と硬さに、ジンと痺れるものを身体の芯に感じてしまいもするのだ。
若く逞しい牡の精気に威圧されて、甘い屈従の心を喚起されそうになる。
そんな己の心を自覚すれば。もうひとつの、本当の恐れにも気づいてしまう。
単純な苦痛への怖気の先にある、より深甚なる、暗い闇のごとき恐怖。
こんな肉体を、迎えいれてしまったら……こんな牡に犯されてしまったら。
自分は、どうなってしまうのか?
その時こそ。達也によって齎されてきた自分の変容は決定的なものとなって。
まったく別の自分に変えられてしまうのではないか、これまでの、越野佐知子という存在は消え失せてしまうのではないか。
そんな不穏な予感があって、佐知子を怯えさせるのだった。
……だが、そんな懊悩や葛藤も、佐知子の肉の昂ぶりを冷ますことはない。
むしろ、“達也によって変えられてしまう自分”への恐怖は、そのまま甘い陶酔に転じて、佐知子の血を滾らせてしまう。
「……でも」
そんな佐知子の心の揺れは、冷酷な眼で読み取っているから。達也は、このタイミングで
言葉をかける。熱っぽい声で、予定通りの科白を。
「正直いえば、早く佐知子さんと、ひとつになりたいよ。僕のを、思いきり、佐知子さんの中にブチこみたい」
「…ああぁっ」
露骨な物言いに刺激されて、佐知子は高い叫びを上げて、ブルッと胴震いした。
「こ、怖いのよっ」 けぶる瞳で達也を見つめて、釣りこまれたように本音を口走る。
「達也くんのが、あまりにも逞しいから……怖いの」
「そんな、心配してたの? 大丈夫だよ」 内心で哄笑しつつも達也の声はあくまで優しく。
「これまで、みんな、とっても気持ちいいって言ってくれたよ。僕のオチンチン」
サラリと。過去の女遍歴を仄めかして、保証した。
「……………」 カッと、喉が熱くなるのを佐知子は感じる。
勿論、達也が豊富な経験を積んできたことは聞くまでもなくわかっていた。
そうでなくて、どうしてこれほど女を狂わせる術を身につけているものか。
これほど魅力に溢れた達也だから、当然だとも思う。
しかし、実際に言葉にして聞かされれば、乱れてしまう心を抑えきれずに、
「……たくさん……女を知っているのね…」
そんな言葉が、勝手に口をついて出た。
責めるではなく、恨むような声になってしまうのは、はるか年上な女の負い目か、今この瞬間にも痺れるような快楽を与えられ続けている身の弱さか。
「気になる? 佐知子さん」
「……知らないわ…」
「遊びだよ、これまでのことは。言ったでしょ?佐知子さんは、僕がはじめて本気で好きになったひとだって」
甘ったるく囁いて。達也は、弱めていた玩弄の手にジンワリと力をこめていく。
「こうして、佐知子さんを喜ばせるために、経験を積んできたってことかな」
「……調子の…いいこと…を…」
そう言いながら。確かに、女の優越心を刺激されてしまって、佐知子の声も甘くなる。
どだい、グショ濡れのヴァギナに指を突っこまれたままの状態では、年甲斐もなく拗ねたような態度を持続できるわけもなかった。
先ほど、絶頂の間際まで追いこまれた時点から、落ちることも昇ることも出来ないままに、緩やかな攻めに官能を炙られ、焦らされてもいたから。
「……あぁ……達也くん…」
佐知子は、もっと強く、とねだるように、秘肉を貫いた達也の指の周りに腰をまわした。
達也は、佐知子の快楽を引き伸ばすように、ジックリと攻め立てながら、
「だからね。その時が来たら、僕を信じて任せてくれればいいんだよ」
暗示をかけるように、佐知子の耳へと吹きこんだ。
「そうすれば、こんな指なんかより、ずっと気持ちよくしてあげるから」
「……こ…これより…も…?」 これ以上の快楽など、本当にありえるのだろうか?と。
「そうだよ。だって」
グッと、達也は二本の指を根元まで佐知子の中へ突きこんで、高い嬌声を上げさせると、
「ペニスなら、こんな指よりもずっと、佐知子さんの奥深くまで届く。これまで触れられたことのない、気持ちいいところを刺激してあげられる」
それに、と。指先を曲げて、熱くトロけた膣襞を強く擦りたてた。
「アヒィッ、あっあっ」
「ペニスなら、これよりずっと太いから、佐知子さんの中を一杯に満たして。ゴリゴリ、擦ってあげられる」
無論、達也は、自分が仕向け追いこんだ佐知子の窮状を見通していた。
この同級生の母親が理知的な美貌と豊満な肉体をもった熟女看護婦が自分の与える快楽に溺れこんで“触れなば落ちん”という状態にまで追いつめられていることを理解していた。
しかし、このゲームの終着は、あくまで佐知子の側から自発的な屈服を引き出すことだと。
自らの構想に固執する達也は、非情なまでの手管で、燃え狂う佐知子の官能を、さらに追いこんでいく。
「あっ、あああっ、もう、もうっ」
今度こそ、という切実な思いを気張った声にして、佐知子が喚く。
汗に濡れた半裸の肢体を、瘧のようにブルブルと震わして。
ドロドロの女陰が、達也の指をギュッと絞りこんで。
「あ、もう、もうっ」
極限まで膨れ上がった愉悦が弾け飛ぶまで、もう、ひと突き、ひと擦り……
「……ヤバい」
らしくもない、焦った声。だが、そう洩らした達也の顔は冷静で。
見計らった、このタイミングで、女肉を攻める手の動きをピタリと止めた。
「アアッ!?」 佐知子が悲痛な叫びを上げて、カッと眼を見開く。
達也の、わざとらしい呟きを、佐知子は聞かなかった。聞き取る余裕などなかった。
佐知子にわかったのは、今度こそ快楽のトドメを刺してくれるはずだった指が、突如動きを止めたことだけ。
「イヤッ、イヤ……あ、ダメェッ!」
悶絶せんばかりの焦燥を泣き声で訴えて、ズルリと引き抜かれていく指を追って、
あさましく腰を突き上げても無駄だった。乱れた白衣の裾から、
佐知子の淫汁にベットリと汚れた達也の手が抜き出される。
その動きで白衣のスカート部分は完全に捲くれ上がって、佐知子の白い太腿や、股布が横にズラされたまま伸びてしまったようなパール・ホワイトのショーツ、黒い濃厚な繁みまでが露になった。それらは、一面、粘っこい汗と蜜液にビッチョリと濡れそぼっている。
しかし、佐知子には、自分のそんなあられもない姿態を顧みる余裕などなかった。
「ど、どうしてっ? 達也くん」
泣きそうに顔を歪めて、達也に質した。ふいごのように腹を喘がせ、巨大な双つの乳房を大きく揺らして。片手は達也の男根をキツく掴んだまま、もう一方の手には、彼女自身の淫液にまみれた達也の手を引き戻そうという気ぶりさえ示しながら。
とにかく、一刻も早く行為を再開して、悦楽を極めさせてほしいという切実な思いが全身から滲んでいたが。
「……ごめん」
バツが悪そうに苦笑した達也は、自分の屹立を握る佐知子の手を外して、
「あんなこと、言ってたせいか……なんだか、我慢できなくなりそうで」
「……え…?」
「その、佐知子さんと本当にセックスするイメージを掻き立てちゃってさ、自分の言葉で。これ以上続けたら、我慢できずに、佐知子さんを襲ってしまいそうで」
「……襲っ、て…」
「それじゃ、約束を破ることになるもんね」
それを避けるために、行為を止めたということだった。
佐知子は呆然と、達也の説明を聞いて。
「……で、でも…」 思わずといったふうに、取りすがるような声を出した。
「うん?」
「そ、それで、いいの?達也くんは…」
「佐知子さんが、本当に僕とひとつになる決心をつけてくれるまで、待つっていうのが約束だからね」
言葉に迷うようすの佐知子と、アッサリと言い放つ達也。
「勢いに流されて、佐知子さんの意思を無視することだけはしたくないんだ」
「………………」 決然たる態度に、佐知子はなにも言えなくなってしまう。
確かに、それはあくまでも佐知子の意思を尊重しようとする達也の誠実さの表れと言えるのだろう。
(……でも……)
それにしても、あまりにも酷なタイミングではなかったかと。生殺しの悶えを抱えて、佐知子は恨めしさを感じずにはいられないのだった。
あと少し……ほんの少しだったのに……。
それほど、達也も追いつめられていたということだろうが。責めるのは、身勝手すぎるのだろうが。
でも……。
剥き出しの胸を隠そうともしないまま、ギュッと自分の腕を抱くようにして、火照りの引かぬ肉体の疼きに耐える佐知子。
その悩乱のさまを尻目に、
「……よっと」 達也は、器用に腰を浮かせると、下着とパジャマを引き上げた。
「あっ……」
佐知子は、惜しむような小さな声を洩らして、咄嗟に手を伸ばしかけてしまう。
いまだ隆々と屹立したままの達也の男性が、無理やり隠される。
パジャマの股間を突上げる大きな膨らみを見下ろして、
「…ま、そのうちおさまるでしょ」 また苦笑して、達也は言った。
「ほ、本当に、いいの? 達也くん」
念を押すというよりは、翻意をはかるように佐知子は訊いた。
達也の解消されぬ欲求を気遣うようで、実のところは途絶した淫戯に未練を残しているのだということは、見えすいてしまっていた。佐知子に自覚する余裕はなかったが。
「うん。我慢する。正直、手でしてもらってるだけでも、自分を抑えきれなくなりそうなんだよね、いまは」
「……そう、なの…」
「病室で、それはマズいもんねえ?」
「そ、そう、ね」
「僕だって、いやだからね」
つと、達也が佐知子の裸の肩に手を伸ばして。佐知子はドキリと反応したが。
「そんな、ドサクサみたいに佐知子さんと結ばれるのは」
しかし、達也の手は佐知子の肘までズリ落ちた白衣を掴んで、そっと引き上げたのだった。
「……あ…」
いまさら、自分の放恣な姿に気づいたように、佐知子は達也が肩まで戻してくれた白衣の襟を掴んで引っ張った。&
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