職場の女性の先輩でたぶん20代後半くらいですごく美人な人がいます。
仕事もすごくできて完璧主義者みたいな感じの人です。性格はちょっときつめで僕のように仕事があまりできない後輩は時々怒られます。

その先輩と僕と二人だけが残業で、フロア内に他の人は誰もいなかった時のことです。
自席でダラダラしてると先輩に怒られると思って、トイレでスマホを見たりしてちょっと休憩していたら、足音がして来てすぐ近くでドアがバタンと閉まる音がしました。
続けてもう一度ドアが閉まる音がしてカチッと鍵をかけるような音。
日中は外の執務室の電話音や話し声などが騒々しいので聞こえないけど、夜のシーンとした状況だと、男子トイレから隣の女子トイレの音が丸聞こえでした。

あんなに綺麗で完璧な先輩でも生理現象には勝てず、放尿しに来るんだなあと思っていたら、鍵が閉まる音の直後にドジャーッと水を流す音。
女の人はトイレの音を誤魔化すために水を流しながら使用する「二度流し」っていうのをやると聞いていたけど、これがまさにそうかと体感。
会社には節電とか節水の決まりがあって、使い終わった場所の消灯のことで僕は先輩に注意されたこともあったんですけど、確か決まりの中に「トイレの二度流しはしない」っていうのがあったはず。先輩も決まり破ってるじゃん、とちょっと納得できない気分。

でも、僕と先輩以外に誰も残業してないことを先輩もわかってるはずで、他の女子社員が入って来るはずがないのに二度流しをしていることを不思議に思いました。
完璧主義の先輩だから、他に誰も聞いていないとしても、おしっこの音を鳴り響かせるような下品なことはできず、人の有無に関わらず常に二度流ししてるのかな、とも思いましたが、
いや待てよ、僕が残っていることは先輩も知っているはず。僕の姿が見えないから、男子トイレにいると推測し、音が響くこの静かな状況も予見して、男子トイレにいる僕におしっこの音を聞かれないように二度流しをしてるのかも？

そう考えると、僕が女子トイレの音を聞くような変質行為をする人間だと疑われているような気がして、なんだかむかついてきました。
いずれにしても、誰も女子トイレにいない状況でも警戒して二度流しをするなんて、先輩はやっぱり完璧主義者だよなあと考えていた矢先、
大きな音を立てていた水を流す音が終息。すると、シュッ、ショボボ。シュッ、ジョババー。という感じで、流す音とは明らかに異なる水の音。
「ぷっ(笑)、流れる音が先に終わっちゃって、結局おしっこの音が丸聞こえじゃん。全然完璧じゃね〜。」と思い、思わずハハッと少し笑い声が出てしまいました。
すると、すぐにまた水を流す音。そして、その音が終わってからトイレットペーパーをとるようなカラカラという音がして、最後にまた水を流すような音。

しまった！と思いましたが手遅れ。あのタイミングでまた水を流したということは、僕が思わず声を出して少し笑ってしまったのが先輩にも聞こえてしまったのだと思います。
先輩がトイレから出る音がしてしばらくして、僕もトイレから出て自席に戻りましたが、戻った時、先輩は何も言いませんでしたが、こちらを睨み付けるような厳しい視線。僕は下を向いて、知らないふりをして仕事を続けました。
先輩が先に帰る時「お先に」とひと言冷たく言われたのが印象的です。いつもは「ごめん、先に上がるね」とか、もう少しは優しい言葉なのに、明らかに怒ってる感じでした。

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