えちえち体験談

昭和の「ダフニスとクロエ」

2018/03/31 21:48カテゴリ : オリジナルフィクション

 昭和の「ダフニスとクロエ」 春編  

 「ダフニスとクロエ」は、2世紀末から3世紀初めにかけて古代ギリシャ語で書かれた美少年と美少女の純真な恋物語。作者はロンゴスと言われているが、生年や没年は分かっていない。
  物語の内容は、森の中で山羊に育てられていた少年ダフニス、ニンフの洞窟で羊に育てられていた少女クロエ。二人とも捨て子だった。二人ともそれぞれ山羊飼いと羊飼いの夫婦に拾われ育てられた。やがて二人は知り合い、幼い純真な愛を育んでいった。   
 この物語を世界的に有名にしたのがフランスの作曲家、モーリス・ラヴェル(一八七五〜一九三七)であった。バレエ団を率いるディアギレフの委嘱でバレエ曲「ダフニスとクロエ」を作曲し、一九一二年にパリで初演され、大成功をおさめた。のちにラヴェルはこのバレエ曲の一部を抜粋して管弦楽組曲「ダフニスとクロエ」第一組曲、第二組曲を作曲した。  この組曲は「ボレロ」「亡き王女のためのパバーヌ」「スペイン狂詩曲」と並んでラヴェルの管弦楽曲の主要なレパートリーになっている。   
「ダフニスとクロエ」にヒントを得て、昭和29(1954)年、日本に舞台を移し、伊勢湾にある神島に住む貧乏漁師の青年と網元の娘との恋物語を書いたのが、三島由紀夫の小説「潮騒」である。   
「小説 昭和の『ダフニスとクロエ』」は、昭和32(1957)年、中学3年の一年間の伊吹聡と橘かおりの、幼く不器用な青春恋愛物語である。   

[中学3年始業式]   

「さーて、行くとするか」   
 昭和32年(1957年)4月、今日は中学3年生の始業式の日である。  
 伊吹聡(いぶきさとし)は、近所の散り遅れ桜の花びらに見送られながら、家から徒歩5分くらいのA市立S中学校に向かって歩き始めた。  
 聡の家はT市の中心から南西に少し外れた住宅地で、八百屋と米屋、酒屋を営んでいる。  
 家の辺りは小さな商店街になっていて、国道沿いに西隣は自転車修理店、雑貨屋、少し飛んで貸本屋。東隣は少し飛んで散髪屋、文具屋、お好み焼き屋、風呂屋が集まっている。   
 家を出てすぐに貸本屋の息子多田真(ただまこと)と出くわした。多田は聡の一つ下で、聡の遊びグループの常連であった。さっそく6月に実のなる「しゃしゃぶ(なわしろぐみ)」のことを色々話しながら学校に向かった。  多田の親父は面白い親父で、土地や株のブローカーをしていて、いつもぼろぼろの格好で街を徘徊していたが、K銀行A支店に勤める聡の姉によ・驍ニ、親父はK銀行の上得意で、あのぼろぼろの格好で銀行に来ても、対応は常に支店長があたるそうである。貸本屋は多田の母親がやっていて、ほんの小遣い稼ぎだったのである。   
 多田の親父は聡が小学校3年生(昭和26年)の頃、仲間2〜3人と「世界宇宙経」なる新興宗教を立ち上げた。近所の子供たちをお菓子で集めて布教していた。 聡もお菓子につられて参加したが、布教の内容は覚えてなく、ただ、胸の前で手を合掌して「良いことをしましょう」と挨拶することと、教団の歌を覚えている。その歌詞は、  

 目覚めよや 目覚めよや 全人類よ万物よ 神の御心 とうへいの(?)  
 光り輝く楽土郷(らくどきょう) 平和の真理に 目覚めよや   

であった。   
 多田の親父は戦争中、過激な皇国親父だったそうで、戦後の変わり様に、近所の大人たちは親父を全然信用していなかった。 「世界宇宙経」はその後、1年持たずに解散した。   家の前は国道XX号線が走っていたが、まだ未完成の砂利道で、中学校へ向かう西

 200mのK大学に面する道路から、片側3車線の広大な未舗装の国道は途切れ、それから先は幅6mの片側に排水溝のある道に連なっていた。   
 なぜこうなったかと言うと、昭和20年7月4日、T市は米軍のB29爆撃機によって大空襲を受け、T市の80%が焦土と化した。戦後、T市は戦災復興土地区画整理事業を行なったが、西200m以後の西地域は爆撃を免れていたため、土地区画整理事業の区域から除外されたのである。そのため聡の家の前までの国道XX号線は土地区画整理事業で確保できたが、西200m以後は用地買収をしなければならず、予算難と住民の買収反対で計画はストップしてしまったのである。そのため聡の家の前の未舗装の国道XX号線は行き止まり同然で、ほとんど自動車交通はなく、聡たちの絶好の遊び場になっていたのである。  
 また、爆撃を免れた、K大学の南端から南500mのI山麓のI八幡宮までの地域は戦前の町並みが残り、幅員3〜4mぐらいの狭い道がくねくね入り組んで家がびっしり建て込んだミステリーゾーンで、聡は一度何気なく入り込んだが、すぐに道に迷い、その地域から脱出するのにえらく苦労した経験がある。それ以来聡は、その地区に入り込んだことはない。   
 K大学に沿って細い道を300mぐらい西へ行くとS中学があった。この中学校は、昭和37年(1962年)に史上最多の3553人の生徒が通ったが、聡の時代は3200人ぐらいであり日本で2番目に生徒数の多い中学校であった。日本一はどこかというと、名古屋の中学校で、生徒数は5000人だと先生が言っていた。聡の3年生の生徒数は、60人学級の20クラスで1学年1200人であった。聡が1年生の時は学校校舎の建設が間に合わず、隣接のK大学学芸学部の1階建て木造校舎を借り、他の1クラスの半分と合同で、1クラス90人で授業を受けた。   
 K大学の敷地西南端を右に曲がると左手に生徒通用入り口があり、まっすぐ行くと生徒用入り口がある。そこで上履き靴に履き替え、2年生時の教室に行った。  
 S中学校は1年ごとにクラス替えをやるので、2年生時の担任から3年生のクラス名を聞き、運動場に新しいクラスの列に集まって整列し、3年生の20人のクラス担任を紹介されるのである。   
 聡は3年7組のクラスに入ることになり、担任の先生は山村という英語の先生であった。聡は身長が167あり、列は身長順に並ぶので、7組の列の後方に並んだ。  
 誰か知っている奴はいないかなあと探すと、1年生の時に同級生で仲の良かった吉井がいた。「やあやあ」とお互い肩をたたき合い、再会を喜び合った。他に3人知っている奴がいたが、あまり付き合っていなかった連中であった。  
 吉井を含んで4〜5人で名前を名乗ったりふざけあったりしていると、聡は何か後から押される感じがした。変だなー、後には誰もいないはずだのにと振り返ると、隣の列の、これから同級生になる女生徒が5、6人、きゃあきゃあ騒いでいた。   

 聡が3年生になって激変したものがある。それは聡専用の部屋と勉強机があてがわれたことである。聡の5つ上の次兄がK商船大学に進学し、その部屋が空いたからである。それまで聡には部屋も勉強机もないので、予習、復習、試験勉強などはしたことがなく、1200人中700〜900番をうろうろする成績であった。簡単に言えば、聡は「落ちこぼれ」であった。  
 この頃、T市の高校進学率は50%ぐらいで、受験競争が激しくなり、聡の成績では公立高校進学は無理で、強いて進学しようとしたら、私立高校しかなかった。しかし、聡は無理に進学しなくてもよいと考えていた。いざとなれば親の店を継げばよいのだ。幸いなことに二人の兄は大学に進学し、店を継ぐ意志は全然なかったからである。    

 勉強部屋と机を与えられた聡は、今まで一切勉強したことがなかったのだが、せっかく部屋と机が与えられたのだから、勉強とやらをおっぱじめるかと考えた。しかし、今まで1分も勉強をしたことがなかったので、悲しいかな勉強のやり方が全く分からなかった。そこで本屋に行き、旺文社の「中学三年生」という雑誌を立ち読みすると、読者の投稿欄の「こうして成績を上げた」という経験記事があった。 それを読むと、「予習と復習をしっかりやり、必ず予習・復習ノートを用意し、そのノートに要点を書いて覚えること。そうすれば予習・先生の講義・復習と、同じ所を3回も勉強するので、たいがいのアホでも覚えられる」と書いていた。聡は「なるほど、こうやれば俺のようなアホでも覚えられるな」と心から納得した。  

[聡の家族]   

 聡の家族は12人の大家族であった。子供6人に父母、祖母とその妹、大阪の親戚のばあさんとその妹という、ばあさんが4人もいるという豪華絢爛(?)な家族であった。       
 祖母は芸者上がりで三味線が上手であった。杵屋なんとかを名乗って三味線の師匠をしていた。弟子は金持ちの上流夫人と芸者、芸者見習いであった。T市は昔から花柳界が繁盛していて、T市近郊の農家の娘で、顔が少し綺麗であれば芸者の道に進む娘が多かった。T市には日本で唯一「芸者大学」がある。  
 父は、旧制A中学を卒業し、本人は大学の電気工学に進学したかったのだが家が貧乏で進学できず、大地主で米屋を営んでいた、子供がいない叔父の養子になり、跡取り息子になった。養母が三味線の師匠である。   

 戦後、農地改革により伊吹家の全ての小作地は没収され、残された屋敷跡は戦災復興土地区画整理事業によって半分以上道路用地に消え、換地された現在地に八百屋と米屋、酒屋を営んでいる。  
 母は、土建業を営んでいる家の次女として生まれ、父と平凡な見合い結婚で現在に至っている。商売が性根に合っているらしく、まさに八百屋の女将さんにぴったりである。   長兄の一(はじめ)は聡より12才上で、K大学土木工学科大学院博士課程卒で、東京の赤羽にある建設省土木研究所に勤めている。  
 姉の比佐子はT高校を卒業し、K銀行A支店に勤め、美人だったので支店長秘書をやっている。  
 次兄の次雄(つぐお)は前に述べたようにK商船大学に進学。  
 年子の妹と4つ下の小学生の弟がいる。   

 聡は八百屋の手伝いを積極的にやっていた。両親から強制されたわけでもなかったが、春、夏、冬休みには午前中自転車で得意先に注文聞きをし、午後から注文された品物を配達した。  
 得意先で面白かったのは、N銀行A支店の社宅で、50軒あるうちの10軒が得意先であった。50軒のうち10軒がキャリア組で、2倍の広さの社宅であった。  
 聡が行く得意先は高卒か地方大学出身のノンキャリア組であった。注文聞きや配達に行くといつも奥さん方が集まって井戸端会議をやっていた。井戸端会議の最中に聡が行っても、中学生の聡には警戒せず、あけすけな話をしていた。その話を聞くのが聡の楽しみであった。話の中心は、出世できない亭主とキャリア組の悪口、子供の教育であった。ノンキャリアの亭主とキャリア組の出世の差をまざまざと見せつけられ、亭主の出世はほとんど諦めていたが、その分、子供の教育には異常に熱心であった。ある奥さんなんか  「お父さんのようになったら絶対駄目よ。良い学校に行けるよう必死に勉強しなさい!」 
と日頃から口を酸っぱくして子供に言っている、と自慢していた。  
 井戸端会議の議題がちょいちょい聡に向かってきた。  
「ところで坊や(聡のこと)あんた勉強してるの?」  
 勉強なんて1分もしたことがない聡は口ごもりながら  
 「えーと、あのー、適当にやっています」 
と答えると、  
「悪いことは言わない。しっかり勉強しなさいよ!」 
と親から1回も言われたことがない言葉を浴びせられることがちょいちょいあった。そんなときは早々に退散することにしていた。   
 八百屋の手伝いをしていて、聡は色々な実社会の勉強ができた。得意先の社宅で奥さん方の井戸端会議からは、会社では旧帝大や一橋大学、早稲田大学、慶応大学を出てなくては出世できないこと、娘や息子の縁談では必ず相手を興信所を使って調べ上げること、興信所の調査員が近所の娘や息子の調査に来たときは、日頃仲の良い人には誉めあげて、仲の悪い人についてはぼろくそに言うことが分かった。  
 また、店で売っている野菜や果物、お総菜などの全てを憶え、特に旬の野菜、例えば新ゴボウや新ショウガ、新キャベツ、新ジャガイモなどの新物が出るころには、注文聞きに出る前に母親から、  
「今日は何々の新物が入荷するからそのことをちゃんと得意先に言うこと」 
と念を押された。店を手伝う前にはそんな野菜があるのは全く知らなかった。  

[聡のクラス]   

 聡は学校に行くのが楽しみになっていた。クラスの席順は身長順に低い者から高い者へ前列から後列に順に座るので、毎週月曜日の朝礼で後に並ぶ連中と机を並べていた。   聡の仲間は、朝礼でも席順でも後に並ぶ連中7人であった。内訳は勉強ができる奴4人、できない奴3人であ・チた。聡自身は、なんせ成績が700〜900番であったため、できない奴3人に含まれると思っていたが、皆はそう思っていないことに気が付いた。  
 2年生までは予習などやっていなかったので、授業中英語や国語の朗読を当てられたとき、英語のスペルや国語の漢字が読めず、数学では問題が解けず、「読めません、解けません」が聡の口癖であった。  
 それが、部屋と机をあてがわれて予習をやり始めると、授業中当てられても、すらすら答えたり朗読ができだしたのである。聡自身びっくりしたのだが、仲間は、聡の成績が700〜900番だったとは知らなかったので、こいつは頭がよいと判定したのだろう。   
 もう一つの楽しみは、聡のクラスに橘かおりというとんでもない美少女がいたことである。背も高く、聡と同じ最後尾の列に席があった。いつも友達ときゃあきゃあ騒ぎ、男生徒はおろか女生徒の人気の的であった。そして聡が一番気に入ったのは、自分の美貌をまったく鼻にかけないことであった。1年生や2年生の時も同級に美少女がいたが、どれもつんとすまし、お高くとまっていた。  
 ただ、聡はラブレターを彼女の靴箱に入れるとか交際を申し込む気は全然なかった。何故なら聡は今まで女生徒からラブレターをもらうとか交際を求められるどころか、話しかけられたことは一度もなく、自分は女生徒には全くもてないという固い信念があり、たとえ間違って交際しても女生徒と何を話せばよいのか全然分からなかったからである。   そんなことより、男友達とわあわあ遊ぶ方がずっと楽しいと思っていた。そしてこの頃の若者の風潮として、女とちゃらちゃら話したり、ガールハントに精を出す男などは軟弱で男の風上にもおけない輩と、内心ではうらやましさもあるのだが軽蔑していた。   
 しかし、聡は彼女に対して一つだけ気にかかることがあった。それは、聡が友達と廊下で立ち話をしているとき、何か後から押される感じがして振り返ると、彼女が近づいているのである。そして彼女は聡をちらっと見てすれ違うのである。また逆に、廊下で前を歩いている彼女を追い越すとき、彼女もひょいと振り返り、「やっぱり」というような顔をするのである。今から思うと、始業式を兼ねた朝礼で、後から押される感じがしたのも多分彼女からだと思われた。   
 こんなこともあった。聡は小学5年生のころからラジオづくりに夢中になり、アマチュア無線に興味を抱いていた。  
 始業式の2、3日後、学校が終わってすぐ、聡は日本アマチュア無線連盟発行の「CQ」誌の付録、「全国アマチュア無線家住所録」を持って家から徒歩15分の所のJA×FNの家を探しに行った。あとで受信機や送信機を見学させてもらおうと思ったからである。  
 目印のアンテナが見え、角にあるその家に表札を確かめに行こうとして四つ角を出た瞬間、そのアマチュア無線家の隣のアパート玄関前でカバンを持った女子生徒二人が話し合っているのが見えた。その女生徒の一人が彼女だったのである。やばいと思ってすぐ引き返したのだが、よく考えると何もやばくないと思い直し、四つ角に出ると、彼女たちはいなかった。しかし、聡はそのころド近眼で、10mも離れれば人の顔の判別などできなかったのである。それが30m以上も離れているのになぜ彼女と判別できたのか不思議でしようがなかった。のちに彼女にこのことを話すと、彼女も憶えていて、最初は彼女をつけてきたのかと思ったそうだが、帰宅する道と反対の道から聡が来たこと、自分の部屋の窓から見ていると、聡が隣の家の表札を確かめたり、隣の家の庭に立っている二本の竹竿(アンテナのこと)をじって見ているので、変な人だなと思ったそうである。   
 当時は、こんな非科学的な話を解明するために彼女に話しても、「変な話を持ち出して私にアタックする口実にするのでしょう」と彼女に思われるのが関の山だろうから、このことは胸の奥深くにしまっておこうと、聡は決心した。  

[当時の遊び]   

 聡は小学生から中学2年生までよく遊んだ。学校から帰って夕食まで、雨が降らない限り近所の遊び仲間と遊びまくった。雨が降ると多田の貸本屋で少年画報や冒険王などの月刊漫画雑誌や山手樹一郎のチャンバラ小説や江戸川乱歩の探偵小説などを読んでいた。  遊びの中心はパッチン(メンコ)とキンキン(ビー玉)であったが、そのほか五寸釘の平たい部分を親指と人差し指で挟み、地面めがけて釘を打ち込んでゲームをする「釘刺し」や缶詰を浅く切って左手に持ち、そこにコマを回して鬼ごっこする「コマ鬼ごっこ」等もよくやった。  
 そのほか冬によくやったのが「街戦(がいせん)」、「8の字街戦」、「馬跳び」であった。  
 「街戦」と「8の字街戦」は似ているが、「街戦」は地面に雲状に二本の線を引き、内側の線に一箇所入り口を書き、二本線の間にいる奴が内側線の中に攻め入るゲームで、「8の字街戦」は地面に大きく8の字を書き、8の○の中は両足を下ろせるが、○の外ではケンケンしなければならない。二手に分かれて争い、○の中では外に押し出されれば戦力外になり、○の外ではケンケン(片足跳び)しながら倒し合い、倒された者は戦力外になる。最終的に全員戦力外になった方の負けというゲームである。  
「馬跳び」は、2人ずつじゃんけんして負けた奴と勝った奴の二手に分かれ、負けた奴がもう一度じゃんけんして順番を決め、一番勝った奴が塀や壁にもたれる。二番目の奴はその股ぐらに首を突っ込んで両手を太股にしっかり抱き込み馬になる。以下次々とその馬のケツから首を突っ込み、同じく両手を太股に抱き込み、長い馬になる。最初のじゃんけんで勝った奴もまたじゃんけんし、その馬に飛び乗る順番を決めるのである。そして順番に馬に飛び乗り、全員が馬に飛び乗っても馬が崩れなかった場合は最後に飛び乗った奴が馬になり、塀にもたれている奴が飛び乗る側になるのである。  
 これだけでは何も面白くないが、「馬跳び」の面白いところは、馬は身体を揺すって飛び乗った奴を振り落とすことができ、振り落とされた奴は即、馬になることと、飛び乗る方は一番弱そうな馬めがけて複数人が一人の馬に重なって乗り、合計の体重で馬を潰すのである。馬が潰されたらもう一回やり直しになる。ただ、重なって乗ることにはデメリットがあり、馬に揺すられると落ちやすいのである。そこの駆け引きが面白いのである。  そのほかの遊びでは、全国共通の草野球があった。ただ、聡たちがやった野球は軟式テニスのゴムボールでやっていた。なぜなら、皆貧乏でグローブが買えなかったからである。  
 そのほか山にもよく遊びに行った。山では主として木の実採りであったが、チャンバラやターザンごっこもよくやっていた。こうやって見てくると、勉強する暇など全然無かったことがよく分かる。   
 中学3年生になると、さすがに毎日遊び狂う訳にもいかなかった。近所の遊び友達と遊ぶのは土日祝日になってしまった。しかし、学校では昼休みの時間には例の7人と毎日遊んでいた。学校から道具を借りてキャッチボールやソフトボール、サッカーなどをやったが、道具を借りるのが面倒になり、もっぱら軟式テニスボールを身体にぶつけるゲームで遊んでいた。ゲームは簡単で、一つのボールを誰かに投げつけ、それを拾った奴がまた誰かに投げつけるというもので、ボールが当たってもたいして痛くなく、何時までも続けられるのである。  

 ある昼休み、例によって7人でそのゲームをやっていた。場所は校舎から便所と、反対側に職員室がでっぱっている3面囲まれた小広場であった。  
 ボールを持ったのは古川という男で、こいつは猛烈に優秀で、噂では学年一番でないかと言われている。 医者の息子で、本人も医者志望だそうだ。後に東大医学部に現役で進学した。しかし古川の風貌は秀才の風貌とはほど遠く、背が高くやせぎすで眼鏡をかけ、何かおどおどした感じの男であった。古川を一見して誰もが分かるのが、彼の手足が異常に長いことであった。  
 その長い左手にゴムボールを握って聡めがけて投げつけた。聡はあわててうずくまった。ところがボールは扁平になって浮き上がり、職員室の窓ガラスに当たり、ぱりんという小さな音で窓ガラスを突き破った。  
「しまった」と言いながら古川は職員室に向かおうとしたので、全員一緒に行こうとすると、  
「俺が投げたので俺一人で行く」 
と言って一人で職員室に行った。  
 皆心配しながら古川の帰りを待ったがなかなか帰ってこない。10分過ぎて「俺たちも行くか」と言い始めたとき古川がボールを持ってにこにこしながら帰ってきた。  
「どうだった?」  
「うん、なんともなかった。逆に誉められた」  
「えっ、どういうことだ?」   
 古川が愉快そうに言うには、 「職員室に行って壊れた窓ガラス付近に座っている先生に謝ったところ、先生は『えっ?』と言って不思議そうにした。僕が壊れた窓ガラスを指さすと、『あれっ本当だ。全然分からなかった。なにで壊したの?』と聞くので、先生の足下に転がっていたボールを拾い、『これです』と答えたところ、『なに〜、軟式テニスのふにゃふにゃボールでガラスを壊したなど聞いたことがない。本当か?』と言うので、『本当です。あそこに集まっている仲間とボール当て遊びをやっていました』『ふーん、本当のようだな。ところで君は何年生?』『3年生です』『進学するの?』『ええ』『わあー残念、僕は野球部の顧問をやっているので、君をピッチャーにスカウトしようと思ったが、3年生の進学組はクラブ活動禁止だもんな』『そうですか』『進学したら野球部に入ったらいいよ。君だったらすぐエースになれるから。さあ。もう帰っていいよ』『弁償しなくていいんですか?』『珍しい体験をさせてもらったからいいよ』。と言うわけで無罪放免になった」 
と言うのである。  
 野球部員であった仲間の一人が、
「俺、この間、古川とキャッチボールをしたことがあるが、古川の球、むちゃくちゃに早かった。野球部のエースより早かった。キャッチボールであんな早い伸びるボールは珍しい。古川、高校に入ったら野球部に入れ」
と言うと古川は
「考えとく」
と答えた。入る気は全くないようだった。  

[美少女かおりに告白される]   

 始業式の3週間くらい後、聡は椅子を教室のうしろに向け、桜庭(さくらば)と向かい合って昼休みに何をやって遊ぶかの話をしながら昼メシのラスクを食べていた。ラスクは堅い食パンにシナモンと砂糖を塗った食べ物で、聡の大好物であった。学校の売店で売っており、ラスクとコーヒー牛乳が聡の定番であった。なぜコーヒー牛乳かというと、聡は牛乳を飲むと必ず下痢をするが、コーヒー牛乳は飲んでも下痢をしないからであった。  桜庭はいつも面白い話をして人を笑わせる愉快な、勉強のよくできる奴であった。その彼が急に黙り込んで顔を赤くした。  
「どうしたんだ?」 
と聞くと、  
「あっちあっち」 
とアゴを右の方にしゃくった。  
 右を見ると川内(かわうち)がなにかわめいていた。 川内はものすごい美男子で勉強もよくでき、女生徒の憧れの的であった。しかし、聡は川内の美男子ぶるのと、何かねっとりした爬虫類的感じがあまり好きではなかった。 桜庭との話に夢中だったため、川内が何をわめいていたのか分からなかったが、よく聞くと橘かおりの悪口をわめいていた。  
「あいつの目をよく見てみろ、どろーんとしてまるでサバの目だ。そうだサバの目だ!」 
と皆に聞こえるようにわめいていた。遊び仲間連中は皆だまって下を向いて顔を赤らめていた。  
 聡は瞬間的に怒りが込み上げてきた。「これは弱いものいじめ、女いじめでないか」と思った。  
 聡は小学校6年生のとき、クラスの男生徒が女生徒をいじめ、女生徒を床に倒し、馬乗りになってびんたを喰らわせているのを、「バカヤロー、女いじめするな!」と男生徒を突き倒したことがある。それ以来、クラスの女生徒の聡を見る目が変わったのであるが、聡は何もそれに対して偉ぶるようなことはなかった。なぜなら、女いじめをやめさせるのは当たり前だと思っていたからである。  
 聡は小学生の頃から近所の遊び友達のボスであった。八百屋の家でキャラメルやあめ玉を売っていたので、それをちょいちょいかっぱらって友達に配っていた。言ってみれば「買収ボス」であった。しかし、ボスはボスなのである。ボスの重要な役目は、けんかを見守ることであった。けんかのルール(武器禁止、泣いたらやめ、鼻血を出したらやめ等)を貫徹させることと、弱いものいじめをやめさせることであった。特に女いじめは厳禁であった。  
 だから聡は、川内の女いじめをすぐやめさせようと本能的に立ち上がった。  
「川内、身体の欠陥について悪口言うのはよくない。お前はめくら、つんぼ、おし、びっこの奴に悪口をいうつもりか。それに、彼女の目はキラキラ輝いていて綺麗な目なのに、それをサバの目というのは、お前の目の方がおかしい」 
と言った。川内は一瞬顔を赤くして黙り込んだ。  
 聡は急に尿意をもよおし、教室の出入り口に向かった。
 出入り口のすぐそばにかおりの席があった。彼女は聡が近づくとぴょこんと立って深々と頭を下げ、  
「ありがとうございました」
 と言った。聡は  
「川内が言うようなことは誰も思ってないよ、気にしない気にしない」 
と言って教室の向かいにある便所に行った。 
 かおりは席に着き、親友である隣の席の渡辺美香子(わたなべみかこ)に小さい声で 「うれしい」 
と言った。美香子も小さい声で  
「かおり!チャンスチャンス。あんた、前から伊吹さんのこと気になると言っていたでしょう?これからすぐ便所の前で待って、伊吹さんが出てきたら交際を申し込みな!恩に着るなと伊吹さんが言っても、前から気になってたと正直にいいな、分かった?ほら、行った行った!」 
とかおりの背を押した。かおりはもじもじしながら便所の入り口に行った。  
 聡は、「川内に少しきつく言い過ぎたかな。あいつ執念深いから、ボール当てゲームで俺ばかりねらってくるかも知れないな」と考えながら便所を出た。すると橘かおりが聡の前にすっと現れた。  
 かおりは交際を申し込まれたのは数限りなくあったが、自分から申し込むのは始めてであったので、胸をどきどきさせながら  
「あのー、私と交際してほしいのですがー」 
と度胸を決めて言った。  
 美香子の予想通り聡は、  
「あまり恩に着るな。何回も言うが、川内の言うようなことは誰も思ってないよ」  
 かおりは美香子に教わったとおり、  
「今回のことに恩に着たのでなく、私、前から伊吹さんが気になっていたんです」 
と言った。  
 聡は「えー!」と言ってうろたえた。生まれて初めて女の子から交際を求められたのである。しかもとんでもない美少女の橘かおりから。  
 女の子には絶対もてないという確固たる自信が揺らいできた聡は、「こんな筈はない。これは絶対夢だ。夢に決まっている」と、右手で右モモをつねってみた。痛くないのである。「あーあ、やっぱり夢か」。  
 返事がないし、聡が口の中で何かぶつぶつ言いながら右手をごそごそ動かしているので、かおりは聡の右手をひょいと見た。聡は一所懸命ズボンをつねっているのである。 「伊吹さん、ズボンをつねって何をしているのですか?」  
「えっ!あ、本当だ。モモをつねってみよう。イターイ。うわー夢でないんだ!」  「うれしい!OKなのね?」  
「OKもくそもないよ。夢みたいだ。だけど、交際の申し込みは男の役目なのに、橘さんに言わせてしまってごめんなさい。なんせ僕、女の子に絶対もてないと思っていたもので」  
「何言ってるのよ。さっき川内さんから悪口言われたとき、私をかばってくれたのは伊吹さんだけだったし、それが真心のこもった交際申し込みだと私は思いました」  
「ところでさっきの川内の悪口だけど、何で急に言い出したのだろう?。橘さん、ひょっとして川内を振ったんでないの?」  
「きんこんかーん!当たりー。あの人、私の下駄箱に2回ラブレターを入れていたの。あの人、トカゲみたいな目で私をねめ回して気持ちが悪いし、ねっとりした感じが嫌いで、ラブレター読まずに学校の焼却炉に放り込んでたの」  
「やっぱりそうだったのか。だけど僕と橘さんの交際のきっかけを作ってくれたのは彼だから、感謝しなくちゃ」  
「それもそうね」  
「ところで具体的にどうやって交際する?橘さんだったら多分、交際の経験があるんだろう?」  
「残念ながら私、交際の経験は1回も無いの。申し込まれたのはいっぱいあるけど、好きでない人か全く知らない人だったので、全部断っていたの」  
「へー、そうだったの。それじゃこうしよう。僕は陰に隠れてこそこそやるのは嫌いだから、今日のきっかけを忘れないように昼食後、この便所入り口隣の廊下の窓にもたれて話をすることにしよう」  
「みんなに見えてちょっと恥ずかしいけれど、そうしましょう」 
ということになった。  

[廊下窓際デート]   

 一週間、短時間(10〜15分)の便所隣廊下窓際デートで聡は橘かおりのことがすこし分かってきた。彼女の父はN証券T支店に勤める株屋さんで、彼女は一人娘であった。彼女の趣味は、予想したとおり声楽であった。彼女は小学生の頃からNHKT放送局の少年少女合唱団に参加しているという噂があったが、本当であった。将来、オペラ歌手になるのが夢だそうだ。聡が小さい頃からピアノを習っていることを知ると、彼女は非常に喜んだ。  
「伊吹さんのピアノ伴奏で声楽を歌ってみたい」 
と目を輝かせて言った。聡はさっそく声楽のピアノ符を買おうと思った。   
 窓際デートは最初の頃、皆にじろじろ見られ、少しぎこちなかったが、日が経つにつれ皆無関心になり、スムーズに話ができるようになった。  
 川内も最初の頃はものすごい目をして2人をにらんでいたが、そのうち、にらまなくなった。しかし、昼休みのボール当てゲームは、執拗に聡ばかりめがけてボールを投げていた。まだ聡を恨み、かおりに未練があるようだった。  

 聡はかおりに  
「僕が気になっていたというのは、どういうことなの」 
と聞くと、かおりは  
「あまりに非科学的なので話すのをためらうのですが、実は伊吹さんがうしろから来るのが分かるんです。他の人にはまったく無いのですが、伊吹さんが来るときは何か押されるような感じがするんです」 
と言う。聡はびっくりした。  
「えー!実は僕も橘さんがうしろから来ると押されるような感じで橘さんが来るのが分かるんだ。不思議だなー」  
「えー!本当!なんなんでしょう。美香子なんか、『将来一緒になる、見えない赤い糸の引っ張り合いよ』なんてからかうのだけど、不思議でしょうがなかった。それが伊吹さんも同じだとはどういうことなんでしょう」 
とお互い頭をひねったが、もちろん分かる筈がなかった。   

 聡は、土日祝日以外の昼休み短時間廊下窓際デートが楽しくてしょうがなかった。最初は何を話していいのか戸惑ったが、音楽が共通の趣味だと分かると、それを突破口に色々な話ができるようになった。 かおりはざっくばらん、素直な性格で、まったく自分の美貌を誇らず、「私の顔が綺麗なのは私の努力の結果でなく、父と母のおかげ」とか 「私の顔が綺麗なことだけで交際を求めてくる男にはうんざり」と、聡もまったくそうだと思うことを言うのであった。  
 かおりはかおりで、聡の正直で優しそうな性格、「かおりを射止めたぞ、どうだすごいだろう」と言うような思い上がった気配が全然無いのが気に入った。  
 それより何より、かおりは聡の多趣味にびっくりした。音楽も西洋音楽はもとより、三味線の師匠である祖母に教わって三味線が弾けるし、箏曲や歌舞伎、民謡などの邦楽も好きだと言う。  そしてラジオ作りや天体観測、ベリカード(放送局の受信証明書)集め、スポーツは硬式野球、硬式テニスなど、かおりには始めて聞くような趣味ばかりであった。   
 やがてデートのときの話題が学校の成績の話になった。  
 口火を切ったのはかおりであった。かおりは中学1年生の頃は比較的成績が良かったのだが、2年生になってからは成績がどんどん下がり、かなり落ち込んでいた。  
「伊吹さんは学校の成績はかなり良いんでしょう?」  
「いいや、700番から900番の間をうろうろしているよ」  
「うそだー、だって授業中に先生に当てられてもすらすら答えてるじゃない」  
「ああ、それは3年生になって部屋と机があたったので予習をし始めたからだ。それまで自慢ではないが1分も勉強したことがない。橘さんは成績、良いんだろ?」  
「ううん、私は1年の最初頃は良かったんだけど、どんどん成績が下がって2年の終わりには500番から700番の間をうろうろしているの」  
「僕より成績は上だけど、それはおかしいなー。僕の第六感では橘さんは頭が良くて100番以内かなと思ってたよ。毎日勉強しているの?」  
「してることはしているんだけど・・・・」  
「多分、勉強の仕方が悪いんじゃない?」  
「どういう風に悪いの?」  
「予習や復習のときに専用のノートに要点を書きながら憶えているの?」  
「いや、教科書とノートをただ読んでいるだけよ」  
「だから頭に入らないんだ。」   
 聡は書店で読んだ「こうして成績が上がった」記事をかおりに説明した。  
「ね、こうやれば僕のような頭の悪い奴も憶えられるんだ。橘さんもこうやれば?」  「わかった。ありがとう」。
 かおりは肩の荷が下りたようにほっとし、喜んでいた。  
 翌日のデートでかおりが浮かない顔をしているので、聡は 
「どうしたの?」 
と聞くとかおりは  
「きのう学校が終わってすぐノートを買って勉強し始めたのだけど、どうやって要点を書くのかが分からないの」 
という。 
「うーん」 
と聡は答えに窮した。これは口で説明しても駄目だろう、多分かおりは女性特有のきまじめさで手抜きができないのだろうと思った。その点、聡はあまりきまじめではなく、多く憶えるのは面倒なので、どんどん余計なことは切り捨てていたからである。  
「よし分かった、要点の絞り方を僕が教えよう。しかし、どこで教えようかな。教室では先生がうるさいし。橘さんの家でどう?」  
「一寸理由があってだめなの」  
「うーん、それじゃー、僕の家でやるか」  
「伊吹さんのご両親は許可してくれるの?」  
「勉強だから大丈夫と思うけど、ただ、橘さんと2人だけだったら、桃色遊技しているのでないかと疑われるなー」  
「困ったわねー」 
「そうだ、もう一人加えれば大丈夫だ。橘さんの横に座っている渡辺さんはどうだい?」  
「うん、彼女は中学の3年間同じクラスで、大の親友なの。彼女も成績が下がって悩んでいるので誘ってみるわ」  
「彼女の成績はどれくらいなんだ?」  
「伊吹さんと同じく700番と900番の間をうろうろしているわ」  
「それはおかしいな。彼女は頭が良いはずなのに」  
「私もそう思うけど、現実は厳しいわ」  
「それじゃー、今日誘ってみてくれ」  
「分かりました」 
 授業が終わったあと、かおりは聡に 
「美香子も参加したいと言ってました」 
と報告した。  
「家に帰ったら両親の許可を得るから、許可されたら明後日から始めよう」 
と聡は言った。   

 聡は家に帰ってすぐ両親に、3人で勉強する計画を話し、許可を求めた。  
 両親は2人が女生徒であることにびっくりしていた。  
 勘のいい父親はすぐ、  
「その内の一人は聡の彼女か?」 
と聞いてきた。  
「えーと、まあそんなもんです」 
と答えると父親は、  
「でかした」 
とひとこと言って聡の計画は許可された。   

 翌日、定例の窓際デートに渡辺美香子も参加した。聡は2人に  
「両親の許可を得たので明日から勉強会を始めよう」 
と言った。かおりは  
「何を準備したらいいのかしら?」 
と言うので、聡は  
「取りあえず明日は先生の講義の復習用のノートと明後日の教科の教科書と予習用ノートを持ってきてくれ。それから、肝心なことを忘れていたけど、勉強スケジュールは、学校を終わり次第、僕の家に集まり、大体4時頃から6時ないし6時半ぐらいまでやろうと思う。どうだろうか?」  
 2人は  
「取りあえずそれでやりましょう。ところで私たち、両親の許可をもらったんだけど、伊吹さんは成績優秀な女生徒ということになっていますので、よろしくお願いします」  「僕は劣等生の男生徒だから、2人は二重のウソを言っているわけだな」  
「あははは・・・」  
 3人の劣等生の勉強会がいよいよ立ち上がった。  

[シャシャブ(ナワシログミ)採り]   
 4月下旬の日曜日、久し振りに聡は近所の遊び仲間とシャシャブ(ナワシログミ)を取りに行った。遊び仲間は、裏隣の下駄屋の息子藤本孝(ふじもとたかし)、その裏に住んでる、親父がレストランのコック長をやっている安藤隆之(あんどうたかゆき)、この二人は聡より1年上、同い年の向かいの家の坂本竜三(さかもとりゅうぞう)、彼は中学の成績はいつもトップクラスの秀才であったが・A聡といつも一緒に遊ぶ聡の親友であった。1才下は西隣の洋品店の息子で、下駄屋の藤本の従弟の藤本一郎(ふじもといちろう)と前に述べた貸本屋の多田真であった。たまに聡の4才下の弟、享(きょう)とその仲間3〜4人が加わることもあった。今日は藤本孝、安藤、坂本、多田の4人であった。  
 シャシャブが生えている場所は、聡の家の南西、歩いて10分のところにあるI八幡神社の背後のI山である。I山は標高300mぐらいの山で、I神社の背後から500mぐらいは標高50mぐらいの幅広い背が続き、そこに大量のシャシャブが生えているのである。  
 シャシャブ(ナワシログミ)は名前の通り、苗代作り(4〜5月)の時期に実が熟すのである。樹高2mぐらいの叢状の常緑広葉樹で、花は前年の12月に咲くという変わった木なのだ。だから年が明けて一番早く実のなる山の木なのである。このシャシャブを皮切りに、山の木の実は夏から秋にかけて、ムクノキ、アケビ、ヤマモモ、イチョウ、クリ、ヤドリギなどの実が次々と実る。聡たちは小さい頃から、いつ頃、どこで、何が実るかを熟知していて、毎年、実がなるのをみはからって山に入っていたのである。  
 シャシャブの実は枝からぶら下がった赤い小さなナツメ状の実で、木全体にびっしりと実る。味は木によってまちまちで、渋いのもあれば甘いものもある。聡たちは甘い実を見分ける術を小さいときから身につけていた。それは、小鳥がついばんだ跡がある実は全て甘いということであった。  少々渋い実を食べていると、年長の人から  
「渋い実を食べ過ぎるとフンづまりになるから、あまり食べ過ぎないこと」 
と注意された。こういった知恵が、一緒に遊んでいた年長者から幼年者に伝わっていったのである。   
 山の木の実だけでなく、庭木の実も聡たちはよくかっぱらって食べていた。イチジクやビワ、ザクロ、ナツメ、アンズ、キイチゴ、ユスラウメ、カキ、夏ミカンなどである。どの実も木にびっしりとなり、少々子供がかっぱらっても家の人はあまり文句は言わなかった。  
 そのほか、4、5才の幼児を池に連れて行き、幼児の胴体を縄で縛り、縄の一端を力の強い奴に持たせ、木製の洗濯タライに幼児を乗せて池に浮かべてヒシの実を採りにやらせた。体重が重くなるとタライに乗れないからである。このヒシの実を煮ると、甘くておいしく、実も大きくて格好のおやつになった。  
 池でよく釣りをやったが、釣りよりも効率が良かったのがラムネ爆弾であった。祭の夜店の照明用にアセチレンランプがあったが、そのアセチレンを発生させるカーバイトが容易に手に入った。カーバイトに水を注ぐとアセチレンガスが発生するという極めて単純な、幼稚園生でも扱えるしろものであった。そのカーバイトを金槌でたたき割って細かくし、ラムネの空き瓶に入れ、池の水を瓶の半分ぐらい入れて上下に振る。アセチレンガスが充満してきたら瓶を逆さにしてビー玉を口に移し、ビー玉が口にぴったり張りついたのを確認して、池に放り込むのである。瓶は池に沈み、しばらくすると池の底で瓶が爆発する。するとその爆発の圧力で付近にいた魚が気を失い、プカーと浮かんでくるのである。浮かんできたフナやコイ、ナマズなどを網ですくい、家に持って帰った。母が喜んでくれた。  
 それよりもっと効率的だったのが、池のそばの電柱の電線から二本の電線で電気を盗み、池に突っ込む方法であった。魚が感電して大量に浮かび上がってくるのである。この方法は子供には危険だし犯罪だったのでやらなかったが、大人がこっそりやっていた。  敗戦後の食糧難の時代、おやつはおろか主食に事欠く時代に、子供たちはこうやって飢えをしのいでいたのである。  

[落ちこぼれ3人の勉強会]   

 4月下旬、劣等生3人の勉強会がいよいよ始まった。最初の日、聡が先に家に帰り、二階の聡の部屋に大きめのちゃぶ台を一階から運び上げたり、座布団を敷いたりしていると、下から母親の  
「聡、お友達が来たよ」 
との声があった。聡は下に降り、両親に橘かおりと渡辺美香子を紹介した。  
 2人はぴょこんとおじぎをし、  
「おじゃまします」 
と挨拶した。両親は信じられない顔をしていた。あとで父親が、  
「聡、まさかあのすごく綺麗な子がお前の彼女ではないだろうな?」 
と聞くので、  
「その、まさかです」 
と答えると、  
「でかした」
 と父はまた言った。   

 二階の聡の部屋に入り、2人は珍しそうに聡の部屋を見渡した。聡の部屋は6畳の畳の間と4畳半の板の間の二間があり、板の間には勉強机と本棚が占領し、畳の間にはコンソールピアノとスピーカーボックス、アンプ、レコードプレイヤーがあった。  
 2人は  
「わあー、いいなー」 
と、うらやましがった。  
 ピアノは、聡が小学校低学年の頃、ピアノを習いたいと言ったとき、父が友人の使ってないピアノを安く譲り受けたのと、スピ−カー、アンプ、プレイヤーは上の兄貴が大学時代、友人に作っても・轤チたのが建設省の独身寮には入りきらず、処置に困り家に送ってきたものであった。  
 スピーカーはナショナルの6PW1という口径6吋半(16・)の通称ゲンコツというスピーカーをでっかいスピーカーボックスに納めたもの。アンプはプリとメインに分かれ、メインはGT管6V6プッシュプル。プレイヤーは英国製のガラードであった。   
 今日の教科の復習をやり始めると、案の定彼女たちは要点を絞ることができないことが分かった。自信がないのか、今日先生がしゃべったこと、黒板に書いていたことを復習ノートにほとんど丸移しで書こうとしていた。これでは時間がいくらあっても足りない。  
 そこで3人で何を削っていいかを相談し、削っていった。聡はばんばん削る方、かおりは未練たらしく残す方、美香子はその中間であったが、中間でも量が多いのでまた話し合い、できるだけ削った。 明日の教科の予習も話し合いながら予習ノートに書く量を削っていった。彼女たちも段々やり方が分かってきたようだった。しかし、勉強会の初日で話し合いの時間が長くかかり、予習は途中で終わりとなり、あとはそれぞれ家でやることにした。  
 勉強会を終え、家に帰る前に彼女たちから是非ピアノを弾いてほしいと頼まれたので、聡は大好きなドビッシーの「月の光」を弾いた。2人ともびっくりした顔で聞いていた。  

 そうこうする内に5月の連休になった。連休中はそれぞれ1、2年生の教科書をおさらいすることで、勉強会は休みにした。  

[潮干狩り]   

 聡は連休中、近所の仲間と潮干狩りに出かけた。これも小さい頃からの年中行事で、聡たちもなかなか忙しいのである。  
 潮干狩りができる海岸は少し遠いので、いつも自転車に乗って行っていた。5月連休付近から大潮近くになり、引き潮時には沖合遠くまで砂浜が出現し、そこでアサリやマテガイを採るのである。アサリはクマデで面白いように採れた。変わった取り方をするのがマテガイであった。マテガイは細長い扁平の貝で長さが10・ぐらい、煮付けにしたり焼いて食うとかなりおいしい貝で、聡の大好物であった。  
 取り方は、クマデや小さなスコップで広めに浅く砂を掘ると、マテガイが潜む菱形の穴がみつかる。その穴の中に少量の塩を入れると、マテガイは塩分濃度に敏感で、ひょいと飛びだしてくる。それをえいやっとつかんで慎重に引っ張り出すのである。アサリほど沢山は採れないがそれでもけっこう採れた。アサリとマテガイを持って帰ると母は非常に喜んだ。  
 引き潮は2、3時間で終わってしまい満ち潮になってくるのだが、小学生の頃は、気温が高ければ満ち潮になると聡たちはフリチンで海水浴をした。しかし、聡たちは今はもうさかりが付いてしまい、そんな恥ずかしいことはできないので、まっすぐ家に帰った。  

[土曜日デート]   

 連休が明けて勉強会が始まった。3人とも予・復習のこつが分かってきたので、時間に余裕がでてきた。復習と予習の間に休憩を入れ、お茶を飲みながらいろいろおしゃべりをするようになった。  
 かおりはオペラ歌手になるのが夢というのは前から分かっていたが、美香子は驚くなかれ、考古学者になって発掘調査をやるのが夢だという。考古学者になりたいという人間は、聡の知っている限り初めてであった。ただ、職業にするというのは別にして、聡も遺跡には興味があった。だからいつも遊びに行くS山頂上にある古墳時代の小さな石造りの墳墓やI八幡宮の土留め石壁のところに古墳時代の横穴石積み墳墓があるのを知っていて、遊びに行ったついでに何回も見に行った。  
 美香子にその墳墓や横穴石積み跡のことを聞くと、さすが考古学者志望だけあって知っていたが、まだ行ったことがないとのことであった。それでは近い内に3人で行ってみようということになった。   
 また、かおりのためにオペラのアリアや歌曲のレコードを聴いたりした。かおりは真剣に聞いていたが、聞く時間が10〜15分ぐらいなので、欲求不満のようであった。そこでかおりは、勉強会は土日は休みであったので、ちょいちょい土曜日の昼から1時間ぐらいレコードを聴かせてほしいと頼み込んできた。聡には願ったりかなったりだが、問題は両親であった。しかし、もう両親は聡とかおりは桃色遊技はしないと信用していて、かおりが1人で遊びに来ても歓待してくれた。   
 レコードを聴きながらかおりは聡に  
「伊吹さんはどんなオペラが好きなの?」 
と聞いてきたから、聡は  
「イタリアオペラはあまり好きでないけど、ドイツオペラとウィーンのオペレッタ(喜歌劇)が好きだよ」 
と答えた。  
「好きなドイツオペラとオペレッタは何なの?」  
「ドイツオペラは、ワグナーとモーツアルト。オペレッタはヨハン・シュトラウスの『こうもり』とレハールの『メリーウィドウ』だよ」  
「へー、どんな曲なの?」  
「じゃー、ワグナーは難しいからやめて、モーツアルトの歌劇『魔笛』の『復讐の炎』と、オペラではないけどモテット『踊れ、喜べ、汝幸いなる魂よ』の『アレルヤ』、レハールの喜歌劇『メリーウィドウ』の『唇は黙せど』を聞こう」&
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