えちえち体験談
むかしのはなし。
日時: 2007/06/09 18:18 名前: E_jan
E_janです。
「キャバ嬢を愛して」と、多少クロスオーバーする部分はありますがサイドストーリーというより、昔話です。
まったく別の話ですが、書いてみました。
時代背景はバブル崩壊直後、平成初頭あたりをご想像下さい。
その1
渋谷のはずれ、入り組んだ路地の脇に、ひっそりとたたずむその店には「隠れ家」という趣があった。
蔦の絡まる白壁と、重そうな木製の大きな扉。なんとも言えない雰囲気には年輪を感じさせるものがあり、まだ23歳だった俺がそのドアを押すのには、多少ならぬ勇気が必要だった。
それでも、敢えてその店を選んだのは、『14』という店名に惹かれたからだ。
自分の誕生日が14日だという事以外に、野球少年だった頃憧れた、伝説の投手・沢村栄治の背番号であったり、中学の時とき、好きだった娘の出席番号であったり、好きな曲であるベートヴェンの『月光』がピアノソナタ第14番であったり、とにかく俺にとって特別お気に入りの数字だったのだ。
『Ber 14』という小さな四角いプレートの付いた重い扉を開けると、ちりん、と小さなベルが鳴る。
最初に眼に飛び込んできたのは、圧倒的な品揃えのバック・バーだった。
長いカウンターの向こうに、壁全面を覆うようにしつらえられた5段の棚には、何百本というボトルが並んでいる。
広い店ではない。席はカウンターだけの細長い造りだ。
これは……上級者向け、かな?
安酒しか呑んだことのない俺は、それだけで圧倒されてしまう。
「いらっしゃいませ」
入り口で躊躇している俺にそう声を掛けてきたのは、アルバイトだろうか。
たぶんまだ30歳前後。茶髪をオールバックにした若いバーテンダーだった。
客も含め、ほかには誰もいない。
壁、棚、カウンター、それに椅子。すべてが黒で統一された落ち着いた内装のなか、そのバーテンダーだけが浮いていた。
しかし、それが俺の気分を楽にしてくれたのも事実だ。
思い切って、10席あるカウンターの、ど真ん中あたりに座る。
「いかがいたしますか?」
バーテンダーはおしぼりを差し出しながら聞いた。
正直なところ、俺は酒に詳しくない。
「……すごい数の酒ですね」
「ええ、趣味が高じて店を始めたもので……いろいろ珍しいバーボンが揃っていますよ」
「俺は酒、よくわかならいんで、オススメをください」
「そうですね。手頃なお値段で……これなんかいいですよ」
『Very Old Barton』
聞いたこともない酒だった。
「マイナーなバーボンですが、すごくいい酒です。香りが高く、口当たりがいいから飲みやすい。それでいてしっかりした喉ごしがあります」
そういって、ショットグラスに注ぐ。
「普段は水割りかロックで呑まれてると思いますが、ストレートでやってみてください。その方が美味しいですし、実は悪酔いしないんですよ」
「そんなもんですか?」
「ええ。自分がどれぐらい呑んでいるか、もう一杯行けるのかどうか、よくわかりますからね」
そういって、ショットグラスとチェイサーを置いた。
ふわっと甘い香りが広がるのがわかる。
バーボンの香りを楽しむ、なんて考えたこともなかった。
バーテンダーは荒木と名乗った。
聞けば、ここは彼がオーナーの店だという。
「脱サラして、2年他の店で修行して、半年前にやっとオープンすることが出来ました」
「なんかもっと歴史のある名店かと思いましたよ、風格あるじゃないですか」
「ああ、ここは前もバーで、その店は20年やっていたそうですよ。店構えが気に入っていたので、外装はちょっと手を加えただけで、ほとんどそのままなんですよ」
「それで、か」
「まあ品揃えは外面に負けていないと自負していますけどね」
ちりん、とベルが鳴り、ドアが開いた。
「こんばんわ、マスター」
元気な挨拶とともに二人連れの女性が入ってきた。
ひとりは紺地に細いストライプの入ったスーツを着た40歳ぐらいのちょっと太めの女性、もうひとりはいかにも、というリクルートスーツを着た、眼鏡を掛けた女性だった。
「いらっしゃいませ、結城さん。ひさしぶりですね」
「仕事、忙しくてね」
年上の女性……結城さんは肩が凝りました、という風にとんとん、と自分の肩を叩く。
太めではあるが、それが愛嬌を生みだしており、元来の美しさに不思議な色香を加えている。俺の好みではないが、間違いなくモテるタイプだろう。
「あ、この娘、私の姪なのよ。芙美代ちゃん。今ね、就職活動中でさ、こっちに出てきてるんだ」
「よろしくお願いします、芙美代さん」
そういって、荒木はおしぼりを差し出す。
就職活動中か。俺も去年のこの時期、なかなか就職先が決まらずに焦っていたな、と懐かしく思い、改めて芙美代と呼ばれた女性を見た。
先ほどは照明の暗さもあってわからなかったが、彼女は相当な美人だった。
「私はターキー。ふみは……カクテルがいいかな?」
「あ、私、あんまりお酒呑んだことないので」
彼女はおどおどした口調で言う。
大きな瞳、すっと通った鼻、愛嬌のあるアヒル口。
すべて俺の好みのど真ん中であった。
ただし、それだけの素材でありながら、彼女はまったくといっていいほど洗練されていなかった。無造作に肩の辺りで切りそろえた黒髪といい、あか抜けない化粧といい、純朴さとダサさの瀬戸際を彷徨っている風だ。
「そんなにジロジロ他のお客様を見るのはマナー違反ですよ」
いつの間にそばに来ていたのか、芙美代に見とれている俺に、マスターが小声で言った。
「あ……」
ふふっと結城さんが笑う声が聞こえた。
「ふみちゃん、美人でしょ?」
あまりの恥ずかしさに、急激に血が頭にのぼる。
「お、お会計お願いしますっ」
いたたまれなくなり、席を立つ。
「あら、ゆっくりしていけばいいのに」
結城さんの声を無視して、俺はさっさと金を払い、逃げるように店を出る。
「また、お待ちしております」
その背に、マスターが優しいトーンでの声を掛けてくれた。
2ヵ月が過ぎ、あの店に行きたくなった。
恥ずかしい思いをして店を飛び出したときは、二度と行くものかと思ったが、不思議とあの店が忘れられない。そんな雰囲気のある店だった。
同僚の高山恵利瀬を誘ったのに、深い理由はなかった。
ただ単に、ひとりで顔を出すのに抵抗があったからにすぎず、暇なやつなら誰でもよかったし、女性ならばなお都合がよかった。それだけのことだったのだ。
『14』のマスターは、にこやかに俺たちを迎えてくれた。
まあ、当たり前だろう。俺が自意識過剰なだけだってことぐらいは理解している。
それでも当時の俺にとって、『女に見とれている』ところを指摘され、注意されるというのは耐え難い屈辱のように思えたのだ。
「すごい……。江口って、いつもこんなところで飲んでるの?」
俺も圧倒されたバック・バーを見て、恵利瀬は驚きを隠さない。
「まあ、たまにね」
恵利瀬をエスコートして、カウンターの一番奥に座った。
「いらっしゃいませ。ご無沙汰ですね」
そういって、マスターがおしぼりを差し出した。
「わ。なんか、かっこいいじゃんマスター。ちょっと吉田栄作っぽい?」
恵利瀬は当時、ブレイク中だった俳優の名を口に出し、はしゃぐ。
確かに細く優しげな眼や雰囲気は、その俳優に似ていなくもない。年齢は30歳ぐらいだというのに、それなりの風格を漂わせてもいる。
多分、『14』という店そのものが持つ、オーセンティックな雰囲気も一役買っているのだろう。
「バートンを。あと、彼女になにかカクテルを」
前回奨めてもらったバーボンを頼む。
マスターは鮮やかな手つきでシェイカーを振り、瞬く間に薄紫色のカクテルを作り上げた。
「ブルームーンです」
「綺麗ね……」
恵利瀬は、その魅惑的な色合いのカクテルに見とれていた。
続いて、ヴェリーオールドバートンをショットグラスに注いで、俺の前に置く。
「気に入ってもらえましたか?」
それはバートンのことなのか、この店のことなのか。
どちらでも同じことだ。
俺は無言で頷くと、芳醇な香りを放つ茶色い液体を喉へと流し込む。
かっと喉が焼けた。
「なんか、かっこいいね。今日の江口」
「そうか?」
「うん。バーボン似合ってるじゃん」
そういいながら、煙草を銜え、火を付ける恵利瀬。
「んで、今日はどうしたの。珍しいじゃない江口から誘うなんて」
「んー。なんとなく恵利瀬と飲みたいな、と思ってさ」
恵利瀬は一般的に見ていい女といえるだろう。飛び抜けて美人というわけではないが、細く切れ長の眼が印象的な整った顔立ちをしている。身長も高く、大きな胸に細い腰と、メリハリの効いた抜群のスタイルを誇っている。連れて歩くのにはもってこいの女といえるが、俺の好みではなかった。
この春、同期として同じ会社に入り、同じ部署に配属された。妙に話の合うところがあり、たまに一緒に飲みに行くこともあるが、ふたりっきりというのは、これがはじめて。その程度の関係だった。
「ふうん。……江口、彼女とかいないの?」
「しばらくいないなあ。恵利瀬は?」
「私は……いるよ。っても、もう半年も会ってないけど。就職でこっちに出てきたからさ」
確か恵利瀬は岐阜の出身だ。
「そんなに遠くないんだし、会いにいけばいいのに」
「うん、そうなんだけどね。なーんか面倒くさくなっちゃってさ」
「へぇ。じゃあ今日の酒の肴はその話だな」
「……けっこう意地悪いね、江口って」
3杯目のカクテルに入ったころから、恵利瀬は饒舌になっていた。
「そんなわけで、馬鹿みたいに束縛が厳しいわけよ。就職、東京でしようと思った理由のひとつがそれ。ちょっと逃げ出したかったんだ」
「へえ。それっきり?」
「ゴールデンウィークに会ったけどね。やっぱりこっちにいると雰囲気ちょっと変わるじゃない?」
確かに、出会った頃の恵利瀬は長い黒髪に地味なスーツの、どこか素朴な感じの女性だったはずだ。今では艶っぽい化粧も覚え、髪もショートに整えている。
「それが気に入らなかったみたいでさ。新しい男が出来たんじゃないかとか疑りまくりで。毎日必ず電話が掛かってくるのよね。今日も帰ったら留守電の嵐よ、きっと」
当時はまだ携帯はほとんど普及していなかった。もし携帯があったなら、すぐにでも鳴り出していたシチュエーションだろう。
「そんな男、やめちゃえばいいのに」
下心があるわけではなかった。
ただ、俺が女連れでいるところをマスターに見せたかっただけなのだ。
だが、寂しそうに笑う恵利瀬を見ているうちに、思わぬ劣情をかき立てられているのも、隠せぬ事実だった。
「別れたら、江口、付き合ってくれる?」
そういって、寄り添う恵利瀬。悪い気はしなかった。
Page: [1]
Re: むかしのはなし。 ( No.1 )
日時: 2007/06/09 18:36名前: 琵琶丸
新ストーリーですね。
期待しています。
好みのタイプの女性はマナー違反なのは
わかっていても見てしまいますよね。
Re: むかしのはなし。 ( No.2 )
日時: 2007/06/09 19:33名前: 名無しのゴンベエ
バーボンハウスへようこそ。
Re: むかしのはなし。 ( No.3 )
日時: 2007/06/09 19:34名前: 名無しのゴンベエ
待ってました!
Re: むかしのはなし。 ( No.4 )
日時: 2007/06/09 19:38名前: バラバラ
おっ新作ですか?
またも大人の恋愛話ですね。
所謂バーって行ったことはないんですが(酒飲むときはもっぱら安い居酒屋です。(笑))こういう独特の雰囲気で味わうのもいいですよね。
複数の女性が絡んできそうでこれからが楽しみです♪
Re: むかしのはなし。 ( No.5 )
日時: 2007/06/09 19:41名前: のり
前のが終わってしまい、ちょっとがっかりしていましたが、新しいストーリーにも期待しています。
E_janさんの話は、とても読みやすく、どのように展開していくのか、とても期待しています。
Re: むかしのはなし。 ( No.6 )
日時: 2007/06/11 07:43名前: E_jan
コメントありがとうございます。
> 琵琶丸さん
前の話とはかなり趣が違うと思いますが、お楽しみいただければ幸いです。
>No2さん
このテキーラはサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい。
>No3さん
よろしくお願い致します。
>バラバラさん
大人の恋愛というか、大人になりきれなかった頃の話ですね。バーはいいですよ。
>のりさん
ご期待に添えるよう、頑張ろうと思います。
その2
同僚を抱く。
それがどれほど厄介なことかなど、当時の俺にはまったくわかっていなかった。
そこに大きな愛情があれば、それは大した問題ではなかったのかもしれない。
しかし、恵利瀬に対して俺が抱いていたのは劣情でしかなかった。
ただ肉欲だけが俺の背中を押していたのだ。
そんな行動に疑問を挟む余地がないぐらい、恵利瀬の肉体は素晴らしいものだった。
その豊満な胸を揉みしだけば、恵利瀬は歓喜の声を上げ、それを受け入れる。
たるみ無く前方へと張り出した胸の頂上に指を這わせ、首筋にキスをする。
いきり立つ乳首を指先で転がし、弄ぶ。
そんな一挙手一投足に、恵利瀬の肉体は敏感に反応する。
声が、汗が、そして細かく痙攣する筋肉が、大袈裟なほどに俺の愛撫を受け入れていく。
白い肌を赤く染めるキスに喘ぎ、濡れそぼった秘部を蹂躙する指に哭く。
はじめて見る同僚の嬌態に、軽い違和感を覚えたが、それが行動のブレーキになるわけではなかった。
妙に冷めた部分を奥底に秘めながらも、俺は恵利瀬を攻め続けた。
やがて、彼女は俺にまたがると、細く長い指先で、硬くなったモノをそこへと導いた。
そして、ゆっくりと腰を下ろし、熱い襞で怒張を包み込んでいく。
「っはあ……」
一番奥へと到達すると、恵利瀬は動きを止めた。
瞳を潤ませ、俺を見下ろす恵利瀬。
「江口と……つながっちゃったね」
その顔を見上げ、感じるなんとも言えない違和感。
俺は無言のまま、緩やかに腰を突き上げる。
深い快感が生まれ、それが違和感を消し去っていく。
「あっ、いい、きもちいい……、江口のが、きもちいいっ……江口っ」
今、誰と繋がっているのか、誰に膣奥を許しているのか。
それを確認するかのように、俺の名を繰り返す恵利瀬。
きつく目を閉じ、眉をひそめ、ひたすら快感に身をゆだねている。
きっと彼女も同じなのだろう。
心の底で冷える理性を、どこかへと放り出そうとするかのように、快楽を貪っているのだ。
俺は、そんな彼女のことが少しも、愛おしくなかった。
シャワーを浴び終わった恵利瀬は、全裸のまま、ベッドの上で膝を抱え、テレビを眺めていた。
ラブホテルらしく、AVが放映されており、ケバい女が後ろから犯され、悶えている。
俺は情事のあとの気怠さに身をゆだねながら、そのケバ女のわざとらしい喘ぎ声を聞いていた。
「嘘くさいね」
恵利瀬はぽつりといった。
AVのことだろうか、それともこうして裸で同じベッドの上にいる俺たちのことだろうか。
「たまには悪くないね。愛のないセックスってのもさ」
努めて明るい声で恵利瀬が言った。
「そうね……」
俺は覇気のない声で答える。
不思議なくらい、恵利瀬を抱いたことに後悔はなかった。
そして、同じくらい、愛情やこだわりもない。
そんな、最初から分かり切っていたことを、彼女が求め、俺が応えた。
それだけのことだと思っていた。
後悔はないが、「それだけのこと」で身体を重ねられてしまう俺と恵利瀬が、少しだけ悲しかった。
「また、気が向いたら抱いてね」
恵利瀬は、そういって寂しそうに笑った。
Re: むかしのはなし。 ( No.7 )
日時: 2007/06/10 23:25名前: バラバラ
返レスありがとうございます。
いきなり女性とのベッドを共にした話ですか?
こういっては失礼かもしれませんが、若気の至りで女性と寝ることってありますよね。(笑)
エッチの描写も変にドぎつくなく抑えた感じがいいですね。
私はE_janさんより2,3歳位下になりますがあの時代の雰囲気を思い出してしまいそうです。
Re: むかしのはなし。 ( No.8 )
日時: 2007/06/10 23:26名前: 名無しのゴンベエ
うわー、HB(ハードボイルド)っぽくていいねぇ。コレはコレで面白い!
Re: むかしのはなし。 ( No.9 )
日時: 2007/06/11 15:36名前: E_jan
コメントありがとうございます。
昔すぎて細部忘れてますが、いろいろ思い出して書いていこうと思います。
その3
「ちょっと、江口くん」
社内会議から部署に戻ると、すぐ、先輩の宮内瞳に声を掛けられた。
「あれっ瞳ちゃん、どうしたの?」
瞳ちゃんは4歳年上の先輩で、俺たち企画部1課の新人教育係を務めている。
背が低く、美人、というより美少女といった面持ちで、後輩からも「瞳ちゃん」と呼ばれているが、決して舐められているわけではない。慕われているのだ。
もう27歳だというのに、セーラー服でも着せれば今でも現役女子高生で通りそうな外見ながら、抜群に仕事が出来る。俺たちに対する指導も的確で厳しい。
中身はバリバリのキャリアウーマンだった。
「喫煙室行かない?」
彼女にしては険の強い表情でそう言った。
「俺、またなんかやっちゃいました?」
その誘いが甘ったるい展開に繋がるものでないことは、彼女の雰囲気から十分に伝わってくる。
「いいから、来て」
瞳ちゃんは、いつもの柔らかな笑顔を完全に封印し、上司の顔になっていた。
これは、かなりヤバい気がする。
「……はい」
そう答える俺を無視して、瞳ちゃんはさっさと部屋を出て行ってしまった。
俺は抱えていた書類を机の上に投げ出すと、引き出しから煙草を取り出す。
「どうしたの?」
斜め後ろのデスクにいた恵利瀬が心配そうな顔をしている。
「わからん……」
そう答え、俺は足早に瞳ちゃんの後を追った。
いつも思うことだが、瞳ちゃんに煙草は似合わない。
アイドル顔した女子高生が無理して煙草を銜えているような、そんなそこはかとない滑稽さがあるのだ。
とはいえ、瞳ちゃんの煙草さばきは堂に入っている。
「江口くんさ、最近評判悪いよ」
ふうっと煙を吐き出し、とんとん、と軽く灰を落としながら言った。
「……そうですか」
「この前の企画書。あれ、手抜きにもほどがあるでしょ。出来の善し悪しを言う以前に、企画書の体裁を成していないじゃない」
「はあ、すみません」
めったに吸わない煙草を銜えながら、とりあえず形だけ頭を下げる。
「仕事やる気あんの?」
「……あるつもりです、一応」
そうは答えたものの、実際のところほとんどやる気はなかった。
そもそも、入りたくて入った会社ではなかった。バブルに浮かれる大学の先輩たちを見て、俺もああなるんだろうと思っていた矢先にバブルが崩壊。
一気に就職活動は冷え込み、内定をもらったこの会社にすがるような思いで入社したのだ。
それだけに、目的意識もなく、ただ与えられた仕事を場当たり的にこなし続けてきた。やがて、それなりに仕事のコツを覚え、手抜きの仕方もマスターすると、あとは坂道を転げ落ちるようにグダグダな毎日になっていった。
「江口くん、仕事つまんない?」
「まあ、あまり面白くはありません」
正直に言った。瞳ちゃんはしばらく黙って煙草をふかしたあと、顔を上げた。
「じゃあ、私が面白くしてあげる」
そういうと、勢いよく煙草をもみ消した。
「来月のコンペ、知ってるわよね?」
「ええ。来年度後半の出版物のラインナップ決める奴ですよね」
「それに企画出して。シリーズもので、10冊ぐらい積めるやつ」
「はあ……」
チャンスを与えてくれようとしているのだろうか。
たしかに新人が参加できるコンペではない。先輩たちが練る企画に必要なリサーチやデータ作りをするというのが俺たちレベルでの役割である。
そこに加えてもらい企画を競うというのは、やりがいのある仕事かもしれない。ただし、やる気のある奴にとっては、だ。
「そのコンペで、企画通しなさい。もし出来たら……抱かれてあげる」
そういって2本目の煙草に火を灯した。
「……マジ……すか?」
あまりにも瞳ちゃんのイメージとはかけ離れた提案に、俺はド肝を抜かれてしまった。
「賞品、あったほうが張り合いあるでしょ?」
「いや、それはそうなんですが……」
「あら、高山さんの方がいい?」
そういって微笑む瞳ちゃんに、その本性を見たような気がした。
こいつ、とんでもねえ女だ。
「わかりました。コンペ、頑張ります。もし、俺の企画が通ったら、瞳ちゃん、俺の好きにさせてもらっちゃいますよ?」
「ええ」
ふうっと吐き出した煙の向こうで、瞳ちゃんが妖しく笑っている。
できるもんですか。その目がそういっているように思えた。
「言っておくけど、コンペ私も参加するから。もちろん手加減なしよ。あと……もし企画通せなかったら」
「俺が抱かれてあげましょうか?」
余裕たっぷりの瞳ちゃんに精一杯の皮肉をぶつける。
「あは。いいわね、それ。でも、それじゃ罰ゲームにならないから。企画通らなかったら、会社、辞めてね」
さらっと受け流し、俺の想定どおりの提案をする。
「……いいですよ。それじゃその条件でいきましょう」
ぼそっ音を立て、手に持ったままだった煙草の灰が落ちた。
半分以上がそのままの形で灰になってしまった煙草を灰皿に投げ捨てる。
手のひらに汗がにじんでいるのがわかった。
この会社に未練はない。無職になるのはやっかいだが、それはそれだ。
だが、負けるわけにはいかないと思った。
こいつ、絶対に犯ってやる。
実力と美貌を兼ね備えた「社内のアイドル」を、俺の肉欲で汚しまくってやる。
蒼ざめた興奮のまっただなかに俺はいた。
Re: むかしのはなし。 ( No.10 )
日時: 2007/06/11 16:23名前: 名無しのゴンベエ
本に出来るね
Re: むかしのはなし。 ( No.11 )
日時: 2007/06/11 18:57名前: バラバラ
前回とは打って変わってキツイ感じになってきましたね。
はてさてどうなりますやら…。
逆襲をかけることができますか?
期待大です!
Re: むかしのはなし。 ( No.12 )
日時: 2007/06/12 00:19名前: E_jan
>バラバラさん
今回もキツイ感じかも。
その4
「へえ……すげえな、ここ」
佐山は『Ber 14』のバック・バーを見て、心底楽しそうな顔をした。
「オレさ、バーボン大好きでさ」
そういって、立ちつくすように並んでいるボトルを眺め続けていた。
俺は恵利瀬と日高を先にカウンターに着かせ、佐山を呼んだ。
佐山慎吾、日高恵美、高山恵利瀬。それに俺を加えた4人は、去年4月に入社し、企画部に配属された同期だ。
俺と恵利瀬が1課、佐山と日高は2課と、課は違うが、仕事の内容は似たようなもの。常に情報交換をし続ける戦友たちだ。
「マスター、ベリー・ベリー・オールド・フィッツジェラルドください」
佐山はボトル群のなかから、意中のバーボンを発見したらしく、嬉しそうな声でさっそく注文している。とても23歳には見えない老け顔の持ち主で、渾名は『おっちゃん』。
性格もクールで、不思議な年輪を感じさせる、若者らしくない若者だ。
「あたしはラムね。なんかテキトーなのちょうだい」
明るい元気者の日高は、酒そのものに詳しくはないが、とにかく半端ない量を呑んでケロっとしている。かなりの酒豪だ。目の細いキツネ顔で、トレードマークの八重歯がかわいらしい。一部の先輩に絶大な人気を誇っているという噂も聞く。
恵利瀬はブルームーンを、俺はいつものようにバートンをオーダーした。
「んで、どったのよ、えぐっちゃん」
日高が細い目をさらに細めて聞く。
「急に『同期会』集合掛けるなんて、なんかあったのか?」
佐山も身を乗り出して聞く。
「もしかして……昨日、瞳ちゃんに呼び出されてたのと関係ある?」
恵利瀬は鋭い。女のカンってやつだろうか。
「そう。昨日、瞳ちゃんに呼び出されてさ」
「えええ、なによそれ。瞳ちゃんから呼び出し? いいなあ」
瞳ちゃん大好きを公言する日高が大袈裟に驚く。
「ちっともよくねえよ……。俺さ、なんか次の『年次コンペ』に参加させられることになってさ」
「へえ、1年目からかよ。大抜擢だな、江口」
クールな親父顔のままではあるが、そう言った佐山の声には感嘆の色が含まれていた。
「だから、そんないいもんじゃないんだよ」
俺は瞳ちゃんとの会話を、かいつまんで説明した。……もちろん「賞品」のことは伏せて。
「まあ、つまりそのコンペでしくじると俺はクビってわけだ」
「あはは。ある意味自業自得だね。えぐっちゃん、ホント2課でも評判悪いもん」
「そうね、江口の仕事荒すぎるわよね」
「短い付き合いになりそうだな、江口」
3人は口々に勝手なことを言う。冷たい同期だ。
「まあ、そういわずにさ、ちょっと脳みそ貸してくれよ。さすがに俺ひとりだと分が悪いけど、4人集まれば、なんか大きな事できそうだろ?」
俺はなりふり構ってはいなかった。どんな手段を使ってでも、瞳ちゃんに勝つつもりだ。
「ふうん、でも面白そうじゃん。あたしら新人の合同チームで先輩たちに挑戦するっての」
腕組みをしながら日高が言う。
「そうだな、江口が代表で、っていうのは納得いかないが、オレたちの力を試すにはいい機会かもしれない」
佐山も乗ってくる。
「……そうね」
恵利瀬も頷いた。
「悪いな。すまんが力を貸してくれ」
そういって、ショットグラスを掲げる。
佐山も日高も、そして恵利瀬も同じようにグラスを挙げた。
「先輩たち、一泡吹かせてやろうぜ?」
方向が別の佐山、日高と別れたあと、俺は恵利瀬をラブホテルに誘った。
無性に女が抱きたかったのだ。
恵利瀬は黙ってホテルまでついてきた。
恵利瀬を抱くのはこれで3度目だった。
張りのある大きな胸、くびれた腰、そして締まりのいい膣。
ほとんど完璧といっていい肉体を勿体ぶることなくフル活用し、貪欲に快感を求める恵利瀬。その赤裸々なセックスに俺はハマりかけていた。
今日の恵利瀬は寡黙だったが、それでもフェラはねちっこく、いつもよりも情熱的だった。
ベッドに腰掛けた俺の股の間にうずくまり、深く、浅く俺を銜え、見事なまでに舌を踊らせる。
その間、片手は俺の袋を弄び、もう片方の手で自らを刺激し続けている。
エロすぎるだろ、恵利瀬。
冷めた自分がその姿を見下ろしていた。
「ねえ、江口……」
ふと、動きを止めた恵利瀬が俺のモノから口を離し、切なそうで見上げる。
「瞳ちゃんのこと、好き?」
馬鹿げた質問だと思った。
「大嫌いだよ」
そうだ、大嫌いだ。犯したいほどに。
「そう。じゃあさ……私は?」
「……わかんない」
俺の答えに、潤んだ瞳を閉じた。
そして、再び目を開いたとき、その顔には、微笑みを湛えていた。
「正直だね、江口は」
そういったあと、恵利瀬は挿入をせがんだ。
俺は無言で恵利瀬を4つんばいにさせると、後ろからねじ込んだ。
だって、仕方ないだろ、本当にわからないんだから。
俺が恵利瀬を抱きたいのは、恵利瀬を好きだからじゃない。恵利瀬とのセックスが好きだからだ。でも、本当に身体だけが目当てなのか?
わからない。そうかもしれないし、そうではないのかもしれない。
冷めた心と完全に乖離した熱い性欲。こんなものをわかった上で受け入れてくれるのは恵利瀬しかいないだろう。
今の俺には恵利瀬が必要だ。こんな無茶苦茶な俺を受け止めてくれる恵利瀬が。
強く、深く恵利瀬に突き込みながら、やっぱり頭の奥は冷静だった。
俺は、恵利瀬を必要としている。それが歪んだ形であっても。
それは、愛なのか? そんなわけはない。
じゃあ、この気持ちはなんなんだ?
細い腰を抱き、熱くうねる膣内を犯す。
「ああっ、江口……いいっ、きもちいいの……」
喘ぐ恵利瀬。
「すご……いい……えぐちっ……」
「ああ。俺もだ。気持ちいいよ、恵利瀬」
いつしか、それに応えている俺。高まる射精感。
「いくっ、えぐち、いっちゃうっ、ああっ……」
絶頂の瞬間が訪れる。
俺は恵利瀬の背中に欲望を吐き出していた。
Re: むかしのはなし。 ( No.13 )
日時: 2007/06/12 00:39名前: 名無しのゴンベエ
ウヒョー
Re: むかしのはなし。 ( No.14 )
日時: 2007/06/12 00:48名前: バラバラ
今回は作戦会議といったところでしょうか?
しかも大嫌いな女を犯そうとする相談を。(笑)
確かに今回のエロ描写は前々回よりもキツイかも。
かなり大胆になっていますね。(笑)
そういうセフレのような関係を見せるところもそうですがバーの描写も細かいですよね。
酒のことはよくわからないので(居酒屋で呑むと書きましたが実際はあまり酒は強くないんです。(笑))こういうのって面白いです。
Re: むかしのはなし。 ( No.15 )
日時: 2007/06/13 16:13名前: E_jan
その5
「へえ、マスターって結婚されてるんですか!」
「ええ、これでも既婚者ですよ」
「奥さんって、どんな人なんですか?」
「そうですね……穏やかな人、ですね」
お好み焼き屋での『同期会』企画ミーティングのあと、佐川たちと別れ、俺と高山恵利瀬は『Ber 14』へと流れていた。
慣れないビールを飲んだ恵利瀬はホロ酔い気味で、いつになくマスターに絡んでいる。
「いいなぁ、結婚かあ」
寂しそうな横顔の恵利瀬を見ながら、俺は面倒くさそうな話になった、と、こっそり肩をすくめていた。
ちらっと、マスターがこちらを見た気がしたが、当然のように無視し、残り少なくなっていたバーボンを飲み干した。
恵利瀬との関係は、たぶんマスターにはバレている。
最初に恵利瀬を抱いたのは、この店での会話がきっかけだったし、その後、何度となくふたりで訪れている際、ときどき交わされるきわどい会話は耳に届いているだろう。
もちろんマスターは知らぬ顔で「仲のいい同期」として俺たちを扱ってくれている。
ありがたくはあるだが、その白々しい態度が鼻につかないわけでもない。
もし、企画が通ったら、抱く前に瞳ちゃんをここに連れてこよう。
そして、マスターの前で露骨なネタばらしをしてやろう。
そのときマスターはどんな顔をするのだろう?
低く流れるBGMのジャズに身をゆだねながら、そんな馬鹿馬鹿しいことを考えていた。
「ねえ、田上さん対策は大丈夫なの?」
ぼーっとしていた俺に恵利瀬が心配そうな顔で話しかけてきた。
田上隆俊は、瞳ちゃんの同期で、企画部きってのやり手と言われている男だ。
配属の歓迎会の時に一緒に呑んだ感じだと、実に多弁でお調子者、という印象しかないのだが、それはそのまま、彼の魅力であり、交渉力にも直結しているようだ。
コンペに参加する先輩たちは、多かれ少なかれ、データの作成やアンケート等のリサーチを下っ端たちにやらせている。つまり、今回自分の企画で手一杯の俺を除く3人は、なんらかの形で先輩たちの企画に関わっている。
それだけに、「敵」の情報を入手し、自分たちの企画のブラッシュアップに役立てることができる。俺が『同期会』に求めていた機能のひとつがそれだった。
しかし、田上さんは常に大きなプロジェクトを廻しているため、あまりオフィスにいることがなく、俺たち新人との接点は少ない。今回のコンペでも、ほとんど部下を頼らず、自分自身のネットワークを使って企画を練り上げている。
「田上さんはブラックボックス状態。ときどき落ちてくるデータ収集の依頼からじゃ、企画内容は想定できないのよね」
恵利瀬はため息をつく。
「まあ、あんまし相手に振り回されるより、自分たちの企画を完璧にしてけばいいさ」
すでに田上さん以外のコンペ参加者の企画に関しては詳細な内容を把握できているし、これらを打ち倒せるだけのポテンシャルを持った企画は手の内にある。あとは未熟な俺たちで、どこまでプレゼンのクォリティを上げられるか、だろう。
「そうね……あと半月、頑張るしかないわね」
恵利瀬は真剣な眼差しで言った。
仕事モードの顔だった。
「ね、今日これからウチ来ない?」
仕事モードのままの口調だ。
意外そうな顔をしている俺に、勘違いしないで、と小声で言う。
「データ作るのにアドバイスが欲しいの。江口の論理展開に沿ったまとめ方にしとかないとマズイでしょ?」
そういって、書類で膨らんだ鞄をぽんぽんと叩いた。
「……そうだな。おじゃまさせて頂くよ」
店を出ようとドアを開けると、目の前に見覚えのある女性が立っていた。
たしか、結城さん。
初めてこの店に来たときに、恥ずかしいところを見られた人だ。
「あら、ご無沙汰。もうお帰り?」
彼女も俺を覚えていたらしく、向こうから声を掛けてきた。
俺は軽く会釈をすると、恵利瀬の手を引いて外に出る。
「残念ね、これから『ふみ』もくるわよ?」
すれ違いざまに、くすっと笑いながら結城さんがいう。
その声を無視し、無言のまま、恵利瀬の手を引いて通りまで早足で歩いた。
「ねえ、今の人は?」
「あの店の常連さん。前に会ったことがある」
そう言った声がいかにも不機嫌だったのには自分でも驚いた。
恵利瀬はなにか言いたげだったが、結局黙ったまま、早足で駅へと向かう俺の後に付いてきた。
Re: むかしのはなし。 ( No.16 )
日時: 2007/06/13 16:39名前: バラバラ
おっ知っている名前が出てきましたね。(笑)
徐々にそれぞれのキャラが見えてくるのでしょうか?
次が楽しみです。
早く〜っ!(笑)
Re: むかしのはなし。 ( No.17 )
日時: 2007/06/13 17:04名前: 琵琶丸
返レスありがとうございます。
「キャバ嬢を・・・」と違い、
少しダークなお話になってきましたね、楽しみです。
常連さん2人もどう絡んでくるかワクワクしてます。
Re: むかしのはなし。 ( No.18 )
日時: 2007/06/13 21:06名前: 名無しのゴンベエ
最高です!!!!!!!!!!!
Re: むかしのはなし。 ( No.19 )
日時: 2007/06/13 21:57名前: E_jan
コメント、ありがとうございます。
>バラバラさん
大昔のことなんで、向こうのキャラはあんまり出てきません。
田上さんぐらいかなぁ。
>琵琶丸さん
ひねくれてた頃のお話ですんで、どうしても……。
>No18名無しさん
励みになります、頑張ります!
その6
恵利瀬の部屋に入ったのは初めてだった。
綺麗に整頓されている、というより極端に物が少ないワンルーム。
そんなシンプルな部屋で、女性の部屋という感じではなかったが、カーテンやベッドなど、モスグリーン基調で統一されているところは、恵利瀬っぽいと思った。
「元彼ので悪いけどさ」
そういって、濃紺のスウェット上下を投げてよこす。
「元? ……例の岐阜の独占王?」
「うん。1ヵ月ぐらい前にこっち来てね。喧嘩して、別れた」
「……聞いてないなあ」
ネクタイをほどきながら、恵利瀬の表情を伺う。
「言ってないもん」
ハンガーを手渡しながら、ちょっと拗ねたような口調だ。
俺は返す言葉を探したが、上手いのが見つからなかった。
「さ、着替えたらデータまとめちゃお!」
気まずい沈黙が訪れるのを拒むかのように、そう言うと、鞄から書類の束を取り出した。
まだ寒い時期だった。
俺たちはコタツにあたりながら、あーでもないこーでもないと論議しながら膨大なデータをまとめていった。
俺が項目や数値を読み上げ、恵利瀬が当時まだあまり普及していなかったラップトップPCにそれを入力していく。
あらたかの体裁が整ったのは午前4時前のことだった。
「ふぅ。これでひと安心ね」
そういって仰向けに倒れる恵利瀬。
「助かったよ、ホント」
俺もごろりと転がる。
「ねえ、江口」
「ん?」
「キス、してよ……」
「……やだ」
一瞬のうちに、さまざまな考えが脳裏を駆け抜けたが、俺の出した結論はそれだった。
「やだ、かぁ。そうだよね」
冷めた声だった。
「ごめん」
「謝らないでよ、馬鹿」
沈黙が怖い。
この静かな1秒1秒がすぎるごとに、俺と恵利瀬の距離が少しずつ離れていくような感じがした。
俺は今、恵利瀬を失おうとしているのかもしれない。
そう思って、どきりとした。
失う? 恵利瀬を?
違う。もともと恵利瀬は俺のものじゃない。
失うも何も、最初から手に入れる気もなかったくせに。
でも……。
「ねえ、江口。最近、好きな人できた?」
感情のない、フラットな声だ。
「……そうだな。好きな人いるかもな」
そうだ。好きなんだ。
「……瞳ちゃん?」
「それはない」
「へえ、違うんだ」
「女のカンも当てにならないな」
俺が好きになった人。絶対に教えてやらない。
「コンペに対する執着、すごいからさ。瞳ちゃんにいいところ見せたいのかと思ってた」
ある意味、正しい。でも、それは好きだからじゃない。
「そっかあ。江口が惚れるのってどんな人なんだろ?」
絶対に教えてやんない。いまさら、言えるか。
「いいなあ……。その人」
そういって、もそもそと起きあがる恵利瀬。
切れ長の目に、これ以上ないほどの涙を溜めていた。
ぼろっ、という感じでそれがこぼれ落ち、頬に筋を引くと、そのあとは止めどがなかった。
声を出さず、嗚咽を漏らすこともなく。
ただ涙を流して、恵利瀬は泣いた。
「もう、江口とは終わりにするよ」
さすがに声は震えていた。
「恵利瀬……」
お前が好きなんだよ。
喉元まで出かかっている台詞が、どうしても言えない。
恵利瀬は立ち上がると、自ら服を脱ぎ始めた。
白い肌が、形のいい胸が、濃い茂みが、すべてが露わになる。
俺は黙ってそれを見つめていた。
「いい同僚に戻る。だからさ、……今日だけ抱いて」
俺は恵利瀬を抱きしめた。
何故、言えない?
そして、優しくキスをした。
伝われ。この想い。
伝えられない、この想い。何故だ?
ベッドに押し倒すと、そのまま恵利瀬を抱きしめ続けた。
俺の、恵利瀬。
Re: むかしのはなし。 ( No.20 )
日時: 2007/06/13 23:15名前: あんり
いつも読ませていただいております♪
「キャバ嬢を愛して」からの大ファンです^^
これからも楽しみにしています。
Re: むかしのはなし。 ( No.21 )
日時: 2007/06/13 23:17名前: バラバラ
まるでドラマのような展開ですね♪
でもE_janさんの心の葛藤ともいうべき心情が現れていいですね。
恵利瀬さんも一人の女性になっていますよね。
大人になりきれなかったころという意味がなんとなくわかるような気がします。
次の展開が気になります。
>大昔のことなんで、向こうのキャラはあんまり出てきません。
確かにそうですね。(笑)
Re: むかしのはなし。 ( No.22 )
日時: 2007/06/14 00:14名前: E_jan
更新できるときにまとめて。
>あんりさん
個人的な理由で、ちょっとどきどきしちゃうお名前です。
今後ともよろしくお願いいたします。
>バラバラさん
いつもコメントありがとうございます。
頑張って書き進めていきます。
その7
佐川や日高、そして恵利瀬の熱心な協力により、企画の進行は想像以上に順調だった。
毎日、会社帰りに4人で集まって企画を煮詰めていくのが面白くてたまらない。
日高の持ち出す奇抜なアイデア、冷静な佐川の分析、的確な恵利瀬の助言。
すべてが刺激的で、俺も負けずに多くの提案をする。
入社以来、はじめて仕事が面白いと感じていた。
しかし、同時に恵利瀬の存在が気になって集中しきれていないのも事実だった。
あの晩、俺は恵利瀬とセックスすることができなかった。
ただ、ひたすらに彼女を抱きしめたまま、遅い夜明けを迎えたのだ。
以降、俺に対する恵利瀬の距離の取り方が明らかに変わった。
もう、ふたりきりで呑むことは、ない。
それでも、あのときの言葉どおり「いい同僚」として、献身的にこのプロジェクトに力を貸してくれている。
それが、とにかく痛々しいし、俺もまた、痛かった。
「それにしても驚いたよ。江口、お前統括の才能あるんだな」
行きつけとなったお好み焼き屋で、仕事の話が一段落した頃、佐川が言った。
「ほーんと。びっくりするね。こないだまでえぐっちゃん、『企画部のお荷物』とかいわれてたのにね〜」
ケラケラと日高が笑う。
……そこまでいわれていたとは、さすがに初耳だった。
その表情を読んで、恵利瀬が頷く。
「一時期、本当にダメダメだったもんね、江口」
「うるせーなあ。……でも、自分でも驚いているよ。仕事がこんなに楽しいなんてさ」
それは偽らざる実感だった。
「でもさ、それが瞳ちゃんの狙いだったんじゃな〜い?」
「そうだな。上のやつら、オレたちがつるんで江口の企画手伝ってるの、絶対わかってると思うけど、なんも言わないもんな」
「それどころか、最近雑務減らしてくれてる気、しない? こっちに力入れられるようにさ」
「そうだな。たしかに」
「うーん、さすが瞳ちゃん、ってところ?」
「えぐっちゃん、完全にノセられちゃったねえ」
「本当だな。瞳ちゃん、自分が悪者になって、江口だけでなくオレたち新人のモチベーション上げようと目論んでたんだろうな」
「さすが、やるわね……」
3人は口々に『瞳ちゃんの陰謀説』を褒め称える。
なるほど、理にかなった見解だ。
実際、俺自身、コンペの結果そのものよりも、企画を練り上げることの面白さの方に意識が向いている。
それに4人とも明らかにスキルアップしている。
これが瞳ちゃんの策だというのなら、大した上司である。
しかし、俺にはどうしても納得がいかなかった。
『企画通らなかったら、会社、辞めてね』
そう言い放ったときの、瞳ちゃんの冷酷な視線と、もし俺の企画が勝利を収めた場合の『賞品』のことを思い合わせると、そんななまやさしい状況ではないように思えて仕方がない。
あの時、俺が感じた悪意は本物だったはずだ。
『同期会』を終えると、俺は『Ber 14』へと向かった。
同僚との会話で身体の中に溜まった熱と、恵利瀬への冷たい想い。
そのふたつをアルコールで消毒しておく必要があるように思えたのだ。
もちろん、恵利瀬は一緒ではない。
ひとりでこの店のドアをくぐるのは久しぶりのことだった。
低く流れるジャズが、いつもより大きな音に感じる。
カウンターの真ん中に座ると、おしぼりに続き、オーダーもしていないのに、ショットグラスが置かれた。
「いつものやつです」
マスターは静かにそういって、チェイサーを並べた。
考えてみれば、この店に来て以来、俺はこれしか頼んでいない。
いつもの、甘いバートンの香り。
50度という、それなりのアルコール度数なのに、すっと呑める。
それでいて申し分のないアタックがあり、しっかりと喉を焼く。
呑み慣れたその味は、不思議なくらい恵利瀬を連想させる。
忘れよう、と思った。
「マスター、たまには別の呑もうかな」
「それでは、趣向を変えて、カクテルなんていかがですか?」
「カクテルか……。オススメは?」
「ブラッディ・シーザーなんていかがです?」
「シーザー? メアリーなら知ってるけど」
ブラディ・メアリーはウォッカをトマトジュースで割るポピュラーなカクテルだが、シーザーは聞いたことがなかった。
「同じようなものなんですけど、クラマトっていう特別なトマトジュースを使います。ウチではペルツウォッカっていう唐辛子フレーバーのウオッカを使ってます。けっこうハマる味ですよ」
説明を聞いてもよくわからない。とにかくそれをオーダーした。
バートンとブルームーンじゃなければ、なんでもいい。そんな気分だった。
ちりん。
マスターご推薦のシーザーに口を付けようとしたとき、ドアが開いた。
「こんばんわ」
入ってきたのは、あの「ふみちゃん」だった。
Re: むかしのはなし。 ( No.23 )
日時: 2007/06/14 00:16名前: あんり
>>個人的な理由で、ちょっとどきどきしちゃうお名前です。
そ、そうなんですか?
私には嬉しい共通点?ですw 名前覚えてもらえそう・・・^^
ふみちゃんとの絡み、楽しみにしてます><
Re: むかしのはなし。 ( No.24 )
日時: 2007/06/14 01:13名前: バラバラ
結局あの後恵利瀬さんとのエッチはなかったようですが、残念のような気もします。
実際に距離を置くような関係になってしまっただけにね。
今回はまたバーの描写に拘りを感じます。
う〜ん、私にはウォッカはキツそう。(笑)
ふみちゃんに気持ちがシフトしていくのでしょうか?
次回の更新も期待して待っています☆
Re: むかしのはなし。 ( No.25 )
日時: 2007/06/14 14:55名前: E_jan
>あんりさん
基本的にここに書くときは登場人物みんな仮名ですが、「キャバ〜」の方の登場人物のうち誰かの本名or源氏名が「あんり」さんでした。
>バラバラさん
カクテルにするとウォッカは軽く感じます。
まあ、それがヤバいんですけど。
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