えちえち体験談

妹 その2

2009/11/05 02:22カテゴリ : 妹との体験談

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カーテンの外でスズメがせわしく鳴き始め
家の前の道路を朝早く出勤するご近所の車が横切る
そんなかすかな音に促されて目を覚ます。

時間は5時半、小学校からサッカー部に所属してきた僕は
すっかり早起きのクセが染み付いてしまっていた。

2年生の終わり受験を控えた僕は成績に不安を感じた両親や担任の勧めで
塾へ通うことになり部活を辞めることになった。
僕自身このままだと学費の高い私立にしか行くところが無いとまで言われ
両親に負担をかけたくなった僕は素直にそうする事にした。

正直惜しい気持ちもあったが別に生き抜きにサッカーは何時だって出来る
真剣にプロを目指してた訳じゃないし
またやりたいなら高校でだって出来る、そう思っての決断だった。

学校が終わるとミカと一緒に家に帰り
軽食をとってカバンを置くと塾へ行く
ミカは僕より一足先に通い始めていて
クラスは違うが時間帯は同じなので一緒に通っている
因みに僕のそんな話を聞きつけたリサちゃんも
同じ塾へ通っていて彼女とはクラスが同じだ
自宅から見てリサちゃんの家の向こう側に塾があるので
帰りはリサちゃんを家の前まで確り送ることができる
若い子の一人歩きに不安なリサちゃんのご両親も喜んでくれた。
元々リサちゃんもミカも成績に不安は無いのだけど・・・

相変わらず僕とリサちゃんそして僕とミカという関係は続いている
コレを三角関係と言うべきなのか今思い返しても自信が無い
リサちゃんとは相変わらずキスだけ
反対にリサとは行く所まで行き着いてしまっていた。

一線を越えたのは2年の夏休み
両親が共働きの僕達は僕がサッカー部の練習や試合
リサちゃんとのデートの日以外夏休みの殆どを2人だけで過ごした。
ミカは僕がサッカーやデートで家を空けるときだけ友人と遊び
僕が居る日は必ず家に居る
相変わらず束縛というような束縛を一切しない女で
生活は僕中心で僕の予定を見て自分の予定を立てる
それでも友人関係を含む私生活を上手く回しているのがミカだ

夏休み中の僕の世話は殆どミカがやいたようなもので
もう殆ど夫婦と変わらない形に収まっていたと思う
早い話僕はミカに管理されてたわけだけど
それがちっとも窮屈に感じない所がミカの凄い所だと思う

僕のパンツの場所はミカの方が詳しく知っているし
僕のお気に入りの靴下の片方がないときは
ミカに聞けば直ぐに見つけてくれた。

僕が好きなことをドンドン吸収していくミカを
僕もドンドン一人の女の子として好きになっていった。
もう兄妹という感覚はこの頃殆どなくて
両親の前・・友人の前で兄妹を演じるというレベルになっていた。

リサちゃんと何とかして早い目に別れるべきだと焦っていた時期は過ぎ去り
「もしもの時は必要でしょうw」
「でもリサちゃんとしか使っちゃダメよ・・」
「減ってたらリサちゃんに教えて貰うから直ぐばれるからね」
と避妊具をミカに渡された時も
「ああわかったよ」と返す。
我ながら最低だがリサちゃんとはこのまま仲良く過ごし
そのうち彼女が勝手に心変わりすればソレも良いし
続いたら続いたらでミカとの事を隠し続けていけると
考えるまでになっていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

勉強は思ったほど苦ではなかった。
元々サッカー漬けではあったが勉強は嫌いではないし
リサちゃんやミカが教えてくれるので割と直ぐにコツを掴んで順調に進んだ特にミカはなんと1年生のクセにもう3年生の勉強をしている
正直僕は勿論、2年の成績上位のリサちゃんよりもよっぽど進んでいたことだ
コレには僕もリサちゃんもビックリだった。

「アニを助けたくて勉強してたら面白くなったのw」
と言ってたので多分持ち前の完璧主義のハートが暴走したのだろう
ミカのこういう一度決めたら病的にやりこむ性格は完成の域に達していた。
しかし、少しだけ先の話をすれば
コレだけの才能がありながら結局ミカは僕と同じ学校へ通うのだ
彼女にとってはソレが最大の目的なのだから仕方が無いけど
僕も含め両親も当時はかなり勿体無いと思った。

この頃の僕は完全にミカのそういう病的な僕への執着や
その為の尋常ではない努力が普通と違うと認識はしていたが
驚き、怖い、何で俺?と思いつつも
妹としての愛らしさや恋人としての愛しさを感じていて
恋人とかそういうものを超越した「こいつは人生の最後まで一番の味方だ」
という気持ちを抱き始めていたと思う
それにミカは僕の前以外ではそういう病的な部分をおくびにも出さないので
害がある訳でもなく、こういうミカを知っていたのは僕だけだったと思う

「何故俺なんだ」と随分後になって聞いてみたことがあるが
返って来た答えは割りと僕と同じ直感的な確信でしかなかった。
ミカはこう答えた
「昔、冒険家の人が何で危険だと解ってて山に上るのかって聞かれたの知ってる?」
「その人は、ソコに山があるからだって答えたんだよ・・ソレと同じ」

全く関係ない話のようだったが言いたい事は良く解った。
今思えば変に長々難しい単語を並べて
理屈をこねるよりも僕が直感的に理解しやすい偏差値の低い答えを
ミカはわざと選んでこういったのかもしれない

リサちゃんとミカはお互い大親友といって憚らないほど親しくなっていた。
年の差は気にならないようでお互い同じ年の友達のようにして仲が良い
家に遊びに来ると当然のように3人で机を囲んで談笑するが
流石に両方を付き合ってる僕は事あるごとにハラハラする

「私お茶いれてくるね〜」
その日も3人で勉強会の名目で集まり結局名目だけで終わり
楽しく談笑してたのだがミカがお茶を入れるために部屋を出て行くと
やっぱりというかリサちゃんが甘えてくる
「ねっアニ・・・」
悪戯っぽく笑いながらキスをねだる
「ミカいるし・・」
階下に居るミカが気になり躊躇する僕
正直ミカは僕とリサちゃんが隠れてキスしてるのは知ってるが
どうも知っているから余計に3人でいる時はしにくいのだ
「ミカは直ぐに来ないよ・・ねっ?」
この頃になるとミカもリサちゃんも
お互いをミカ・リサと呼ぶようになっていた。

リサちゃんに言われるままキスする
リサちゃんは情熱的に手を回してきて体を密着させる
胸を押し付けるようにしながら何度も短くキスしてくる
「もうミカきちゃうよ・・」
「うーんまだー」

コンコン
「おーいお茶持ってきたよー手が塞がってるんだからあけてー」
ミカが気を回してドアをノックしてくる
湯のみ3つなんだからその気になればドアくらいあけられるのに
僕とリサちゃんが何をしてるか解っててやっているのだ

「あーまって今あけるよ」
僕とリサちゃんはぱっと離れて服を調える
リサちゃんは服を調えると
何事も無かったようにドアを開けてミカを迎え入れる
リサちゃんは未だに隠しきれていると思ってるようだが
ミカにはバレバレ・・リサちゃんは天然なので
計算高いミカにはさぞ扱いやすいタイプだったと思う
ミカに悪意が無いのが救いだった。

「2人とも私が居ないからってHなことしてないでしょうねw」
ミカがニヤッと笑いながらからかう様に言う
「なっそんな事してないよ!」
リサちゃんが真っ赤になりながら言う
「なんだw別にいいのにw」
「もー!しないってば!」
リサちゃんがムキになってごまかす。
「つまんないのw」

リサちゃんはこの態度で本気で誤魔化せてるつもりだから逆に凄いと思う
2人は本当に真逆なタイプだ
でも、この位天然で鈍感なリサちゃんでないとミカのようなキャラクターと
付き合うのは難しいかもしれないと思う
それに僕としてもリサちゃんのこういうキャラには救われる部分も多い

「リサって本当に可愛いw私が男だったらぜったい付き合いたいかもw」
その日のベットの中で裸で抱き合いながらミカが楽しそうに言う
「後で2人だけの時聞いたけどあの子本当にしてないって言い張るのw」
「でも顔真っ赤なんだもんw」
「リサはアニと私がこういう関係なの絶対気がつかないかもねw」
ミカが腕を回してきます。
僕はその腕を掴み制します。
「ミカ・・そういう言い方はリサちゃんが可愛そうだろ」
調子に乗ってリサちゃんの事を話すミカに少し腹が立ちました。
さっきまでニコニコしていたミカの顔から笑顔が抜け落ちます。
しまった!自分としたことが!という感じです。
「ごめんなさい・・お兄ちゃん・・そういうつもりじゃないの私リサちゃんの事本当に好きなんだよ・・」
急におべっかを使うような言葉使いになって僕の機嫌を伺うような
自身の無い表情になります。
「解ったよ・・でももうそういう言い方は二度とするな」
「はい・・」
僕に叱られてションボリとします。

そんなミカを見て自分にも腹が立ってきます。
(ミカを怒る資格なんかない・・俺が一番酷いことしてるのに)

ションボリして元気をなくし不安げに僕を見るミカを抱きしめます。
「もう怒ってないよ」
不安げなミカに優しく声をかけます。
「本当?ミカの事嫌いになってない?」
ミカが様子を伺うように覗き込んできます。
こういうときのミカは酷く幼く見えます。
「ミカを嫌いになんてならないよ・・」
優しく抱きしめて頬にふれます。
「ごめんなさい・・ごめんなさい・・」
ミカが必死に抱きついて甘えてきます。

「今日大丈夫?」
「うん今日大丈夫、大丈夫、中でする?」
ミカがパッと明るい表情になります。
「・・・・先に口でして」
「うんw」
ミカが嬉しそうに布団に潜りこみます。

直ぐに暖かい息がアソコにかかります。
ミカの細い指先が僕のソコを這い回り
徐々に血液が集まるのを感じます。
ミカはその先端に優しく口付けすると
徐々に激しく舌をはいまわらせてきます。
竿の部分や裏筋・・先端の溝や凹凸を丁寧に舐めしゃぶってきます。
情熱的でミカの気持ちをダイレクトに感じるフェラチオです。

僕は布団を剥ぎミカがソコに吸い付いてる姿をさらします。
ミカは僕と目が合うと頬を染めながらも情熱的で挑発的視線を送り
一層激しくしゃぶりついてきます。
さっきの事を奉仕で帳消しにしようとしているように

僕はミカの頭を両手で押さえ激しく上下に動かします。
ミカはむせない様に器用に口をすぼめたりしながら動きに逆らわず
僕のされるがまま頭を動かします。
喉の奥に突き刺すような激しい動きもミカは懸命についてきます。
「ミカ・・出すぞ・・」
「んぐ・・・ぐ・・・」
ミカは目で答えます。
僕はミカの口の中に一回目を出し
出きった後もしばらく抜かずにミカの口の中でゆっくり上下に動かします。
ミカは丁寧に舌で口の中のソレを舐め尿道に残った精液を吸い取ります。

「お兄ちゃん頂戴・・もう準備できてるから・・」
ミカはそういうとお尻を向けてきます。
ミカのソコは太ももに滴るくらいに濡れていて愛撫は必要なさそうです。
僕は未だ硬さの残るソレを押し付けゆっくりと挿入します。
「はあぁあああ」
少しずつ入れていくとミカはそれだけでブルブルと震えます。
ミカの中は推し進めるたびに奥の方からトクトクと愛液があふれ
ウネウネと生暖かく蠕動する膣内は別の生き物のようです。
突き入れるときは僕を歓喜に迎え入れるように広がり
引き抜こうとすると今度は名残惜しむように締め付けてきます。

「お兄ちゃんもっと・・もっと・・」
つぶやくようにミカは催促し
「あっあっあっ」
突き入れる動きに合わせてミカは短くなきます。
「ミカ気持ち良い?お兄ちゃん!」
「気持ちいいよ」
「嬉しい・・嬉しい・・ああっ」
ミカは自分からお尻をグイグイと押し付けてきます。
しばらく動き続け時にはかき回しこすり付ける様に動きます。
体位を変え正常位で突きます。
ミカがキスを求めて確り抱きついてきます。
そのまま激しくついてスパートをかけながらキスします。
「ああっううっうっ」
「うううあああっ!」
ミカは激しく体をのけ反らせてイキます。
同時にミカの中が激しく絞まりキュッキュッと刺激してきます。
僕は震えながらミカの中に2回目をだします。
「ああぁ・・」
ミカはソレが解るのか恍惚とした表情で天井を見つめてトローンとしています。

僕は出し終わると離れようとしますが
ミカが抱きついて嫌々します。
しばらく入れたままで居たいときの合図です。
「きついよ・・」
正上位なので腕立て伏せみたいな体制できついです。
「乗っかって良いから・・まだダメ・・」
僕は言われるままミカに体重をかけます。
「苦しく無いの?」
「平気・・」
ミカは目をつぶって幸せそうに言います。
時々ミカの中が精液を飲み込むように動きます。

「リサちゃんとしてないんだね・・」
「出来るわけないだろ・・俺が好きなのはお前なんだから・・」
「リサちゃんの事も好きでしょう?」
「好きだからって両方となんて出来るかよ」
「・・・・」
「ねえ・・」
「なに?」
「もっかいキスして・・」
僕は言われたままキスしようとします。
それをミカは指で制します。
「お昼リサちゃんにした時の気持ちでして・・」
「・・・・・」
意味が良く解りませんでしたが出来るだけ
リサちゃんとする感じでして見ます。
「・・・・・・・」

そのあと言われるまま何度かキスして
眠りに付きました。

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3年生はあっという間だった。
勉強と勉強に挟まれながらその隙間でさらにミカとリサちゃんに挟まれて過ごした。

何時使うんだよという良く解らない数学を詰め込み
一生使わない気がする英単語と文法を一生懸命に覚える毎日が続き
そうこうしてる間に学校見学そして受験そして合格発表と矢のように過ぎて行った。

僕は努力が実り第一志望に合格
結構無理をしたおかげで県内でも上位の高校へ入る事ができた。
自宅からも近く目と鼻の先にある高校だけに両親からの
「出来ればアソコに行ってほしいな」という無言の期待にもなんとか答えられたと思う・・とかく良い高校が近所にあるというのは
子供にとってプレッシャーだと思う

しかも母が妊娠出産した事で僕とミカに新しく妹が生まれた。
桜の季節に生まれたのでハルと名づけられた。
小さい手で力強く僕の指を握り締めるハルに感動した。
「ああ、こんなに小さいのにこんなに力がある・・命がある」と感動した。
父も母も僕も嬉しかったが、特にミカの喜びようは凄くて、ハルに夢中になった。
幸せいっぱいの家族だった。

しかし、いい事ばかりでは済まなかった・・・

リサちゃんが県外の進学校へ行くことになったのだ
頭が凄くいい子なのでそれは当然だ
お馬鹿の僕が努力してソコソコ良い高校なのだ
それで同じ様に努力すれば当然自力の差が出る
余りにも遠いので寮生活となる・・つまり僕達はお別れとなった。
どんなに好きあってても将来を左右する進路まで
同じと言うわけには行かない・・ましては僕には後ろめたさもある
それが建前と本音だった。

「アニ君が同じ高校行こうって言ってくれたらそうしたのに・・」

駅のホームで新しい生活へ旅立つリサちゃんが最後にポツリと漏らした言葉がそれからしばらく僕の胸を締め付けた。

今にして思えば、お互い予兆のようなものは感じていたとおもう
1年間の受験勉強で中々遊ぶ機会が無かったし
その反面僕とミカの関係はより濃密になり成熟していった。
久しぶりに会うと、何故か何時も自然に出来ていたキスが出来なくなる・・
そのうち手をつなぐことも妙に意識して・・僕とリサちゃんは気まずくなっていた。
でも、それは俺の勝手な思いでしかない
多分リサちゃんはキスも手をつなぐ事もしたかったと思う
久しぶりに好きな人に会うんだ普通はキスも手もつなぎたいはずだ
ソレが普通だ・・
何時もためらって出来なかったのは僕に問題があった。
久しぶりにあうリサちゃんに何処か他人行儀な壁が出来ている自分に気がついていた。

駅でもはっきりと別れ話をしたわけじゃない・・
でも、悲しいかなそれで全てを悟れるほどには
お互いの事は良く理解しあえていた。
「終わったんだと」おもった。

リサちゃんとのお別れの後
気持ちを引きずりながらも高校生活に追われていた僕だったが
悪い事は終わっていなかった。

僕が晴れて高校へ通いだしてしばらくして
父が一人の女性と5歳位の女の子を連れて出張先から帰ってきた。

その女性と父は会社の先輩と後輩の仲で以前から不倫の関係があったようだ
数年前に女性の転勤で関係を解消したのだったが
女性は転勤した先で自分の妊娠を知り
そのまま父に内緒で出産していたのだった。
女性は直ぐに会社を辞めて実家に戻ったようだが
父の出張先で偶々再開・・懐かしんで話をするうちに結局女性は
子供の事を打ち明けたのだった。
女性はその頃には両親共に他界女で一つでパートをしながら
女の子を育てていたのだ

あとの流れはお決まりのものだった。
ショックを受けてふさぎこむ母と
父の裏切りに怒涛の如く怒り狂うミカ
母と僕達にすまないと思いながらも生まれた子供に対して
責任をとらんとする父・・修羅場だった。

結局結論から言えば僕達家族バラバラになった。
母はショックで寝込んでしまいソレを知った母のお父さん
つまりギン爺ちゃんが怒り心頭で母とハル・・
そして母とハルを心配したミカを連れて他県の実家に帰ってしまった。
母のお父さんであるギン爺ちゃんは
昔学校の先生をしていた大変厳格で厳しい人だ
オマケに母のことをとっても可愛がっている
その母を裏切った父への怒りはすさまじかった。

離婚については母は最期まで悩んでいたようだった
父は父で新しく生まれたハルと
女性との間に生まれた子供の間で迷った挙句・・
結局は身寄りの無い女性のほうを選んだ
正直どうする方法が正しいのかは解らないし
僕には父の選択を責めることが出来なかった。

母とハルとミカはギン爺ちゃんの家で暮らす事になった。
母への慰謝料や僕達への養育費など払うために
父は僕達の家を手放した・・女性も両親が残していた財産を手放し
それでも足りずに父は自分の両親に頼み込んでお金を借りたようだった。
その後どこか他県へ移り住み暮らしていたようだった。
僕は時々連絡を取っていたがミカはその後何年たっても父と会話すらしない時期が続くことになった。

僕も最初は母達と暮らそうかと思ったが
ギン爺ちゃんいわく
「お前はもう一人前の男なんだから」
「せっかく努力して受かった高校へそのまま行きなさい」という事で
元々住んでた家から近い父方の実家から通うことになった。
ミカは最後まで一緒に来てほしいと頼んだのだが
ギン爺ちゃんに
「お前がそんな事を言ってどうする!お兄ちゃんの将来のためだ」と
説得されて諦めたようだった。
しかし、アレだけ僕へ執着していたミカがそれだけで引き下がったのには
多分弱った母と生まれたばかりのハルの存在が有ったんだと思う

と、まあ父の実家に住むことになったので
僕と父が頻繁に連絡を取れたのはこういう理由もあったのだった。
父の相手の女性はマサミさんとしておくが
時々は父の実家に娘であるユキちゃんを連れて遊びに来ていた。
マサミさんは最初僕にも父の両親にたいしてもオドオドと
本当に肩身が狭そうにしていた。
僕の母は父の両親とも凄く仲が良かったから
当然といえば当然なのだけれど・・それでも父方の両親にとっては
ユキちゃんもマサミさんも家族ではあるのだ

僕はというと・・辛く当たってもいい立場ではあったのだけど
不思議とミカほどに怒りを示す事はできなかった。
ミカやギン爺ちゃんの父への怒りようはむしろ父が哀れに思えるほどだったし
父は十分に責任と呼べるものは果たそうと努力していた。
何よりユキちゃんというまだ小学校へあがったばかりの女の子を連れた
その哀れに痩せた身寄りのない女性を責めることが僕には出来なかった。
それは父方の両親も同じだった。
最初は距離感に戸惑っていた爺ちゃんたちも、それでも孫は孫なのだ
僕に遠慮がちであはあるがユキちゃんを可愛がるようになった。

父達は僕に遠慮するようにではあるが
行事事のたびに遊びに来るようになった。
父方の家は農家なので家のまつりごとは親戚が大勢集まる
そういうときのマサミさんとユキちゃんは本当に可愛そうだった。
親戚中から好奇の目で見られ
年配の方たちからは蔑みの目で見られていた。
食事の支度や何かで露骨にマサミさんをこき使う年配の女性陣に
素直にペコペコと従うマサミさんと親戚の同じ年くらいの男の子達に
仲間はずれにされるユキちゃん
反面僕はそんな中で異常にチヤホヤ大事にされた。
まるで2人へのあてつけのように・・・
父に言ったことがある
「あんなに酷い目に会うのに行事なんか来るなよ」と

そんな僕に、優しいなお前はと言った父はこう続けた。
「コレはお父さんとマサミさんがやった事に対する報いだよ」
「なおさらコソコソと逃げるわけには行かないんだよ・・」と

この時は完全に理解できなかったけれど、後になって思ったのは
ユキちゃんはマサミさんにとっては親戚といえるものはもう
父方の両親しかいないのだ、父自身何時まで生きているか解らない
ココでコソコソとしては何時までも2人は本当の身内が居ないままなのだ
どんなに責められてもそれに向き合う必要があったのだと今は思う

と、側で見ているからこそ僕は
2人の事や父の事も冷静に見ることが出来たと思う
ミカに言わせれば相手の事なんか知ったことじゃない、同情なんて出来ない!って訳だが
僕は立場上知ってしまった。
知ってしまった以上結局僕はユキちゃんやマサミさん達を
それとなく庇うようになっていった。

最初は恐々していたユキちゃんも
二度三度と実家に遊びに来るたびに打ち解けていった。
人見知りでオドオドしたユキちゃんはまるで昔のミカのようだったが
慣れてくると「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」と嬉しそうに懐いてくるようになった。
ユキちゃんにしては唯一仲間はずれにしない僕のそばが一番安心なのだ
色々と複雑な気持ちではあったが・・・しかし

後になって父とマサミさんに
「お前としては憎い相手かもしれんが・・あの子に罪はないんだ・・出来れば妹として可愛がってやってくれ」
と頭をさげて頼まれた。
父とマサミさんの経済事情では兄妹は望めないからだろう・・
ユキちゃんが不憫だった僕は「わかったよ」というほか無かった。
よくよく僕は押しに弱く流されやすいんだと思った。
随分後になってミカに優しすぎる・・ソコがよくもあるし悪くもあると
指摘されたからその通りだと思う

ミカは夏休みやちょっとした連休があると遊びにきていたが
一度父達とばったり遭遇してから寄り付かなくなり
休み前になると頻繁にコッチに遊びに来いハルが会いたがってるなどと
電話で僕を母方の実家へ引っ張り込もうとした。
要するに僕が父達やましてやマサミ、ユキちゃんと一緒に居るのが嫌なのだ
ミカは一度人を嫌うとその後一生嫌い続けるくらい執念深いのだと
この頃からうすうす感じていた。
愛情が深すぎるというのは反面そういう裏もあるのかもしれない
ギン爺ちゃんとミカはそういう部分が似ている

ミカが誘いの電話を入れてくるのは大抵が夏休みや冬休み
クリスマスにお正月とイベントごとの時だ
当然といえば当然だが、コレは当然マサミさんたちが
実家へ遊びに来るタイミングでもある・・
僕もミカやハルに会いたい気持ちは勿論あった。
凄く会いたいという気持ちは本当にあった。
でも、結局僕は殆どその誘いを断った。
親戚の子達の間で、遊び相手が居ない仲間はずれ状態のユキちゃんが心配だったのだ

ミカやハルや母達に悪いと思ってはいたがそれでも
実際腹違いではあっても半分は同じ血が流れているし
自分よりはるかに幼い女の子を目の前にして
ソレが可愛そうだと思うのは仕方がないと僕は思っていた。
ユカちゃんはどうやら通ってる学校でも友達が少ないようだ
そんな所も少し昔のミカを思い起こさせた。
僕はやっぱり女性に弱いんだと思う・・さすが父の息子だ
僕に父を責める事は出来ない

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ハルは順調に育っているようだ
たまにミカが送ってくれる写真でソレを確認していた。
そういう写真には必ず
「また遊びにきてね・・」と書かれていた。
ミカは進学してギン爺ちゃんの所から凄い偏差値の高校へ通いだした。
ギン爺ちゃんにとってもかなり自慢の孫らしい
会うたびに「兄のお前もウカウカできないな!ガハハ」と自分の娘のように
自慢するのだから相当入れ込んでいる
ギン爺ちゃんは引退した今でも県内の教育関係で広く顔が利く人なので
ミカのそういう話はそういう席では実に鼻が高いようだ
御婆ちゃんの話だと母達が実家に戻ってきて富に最近は機嫌がいいらしい
そういう意味ではハルやミカも幸せにやっているようで心配はなかった。
余計にそれが明暗を際立たせて両方の家庭を見ている立場の僕は
ユカちゃんたちに肩入れしてしまうのだった。

僕も高校生活は順調だ
実はこの頃高校の女の子とちょっと付き合ったり別れたりを
繰り返していた。
部活はサッカー部から陸上部に転向した。
サッカーよりそっちの方が向いていると思ったからだ
ソコソコ大会で記録も残した。ありがたい事に女の子にはソコソコもてた
しかし、長続きはしない・・大抵は僕に問題があったと思う
どうしてもミカやリサちゃんと比べて本気になれない自分がいたのだ
相手もソレを感じて徐々に冷めていく
時には僕から別れを切り出し、時には相手から別れようといわれ
時には自然消滅した。

さて高校3年生になってミカが高2ハルが3歳位ユキちゃんが小3
と時間はあっという間だった。
高校生活は部活と女の子や何かで忙しいし
2年になれば今度は大学受験だ忙しい上に他県のミカとあうのは難しい
一度せがまれて夏休みに会いに行ったがギン爺ちゃんたちの目もあったし
母は仕事も辞めて一日中家に居るので結局ミカも僕も本来の目的は
果たせなかった。
色々努力したのだがその努力が無駄に終わりなんだかふててしまった。
その後結局タイミングが中々合わず殆どをユカちゃんたちとすごした。
この頃になるとユカちゃんをユカと呼ぶようになり
ユカも僕のことを本当の兄のように慕ってくれていた。

ミカは、しつこい誘い方はしなくなったがそれでも
ミカの定期的な電話や手紙は止む事はなかった。

又少しだけ時間が過ぎ僕は県内の志望大学に見事に合格した。
その祝いの席で父が切り出してきた。
「今まで受験中で言い出せなかったが、頼みがある」と
父の話は財政的に困窮していてその負担を少しでも軽くするために
実家に家族で戻ってきたい・・だから僕には悪いが
一緒に実家に住むことを許してくれないかというものだった。

僕は二つ返事でそれを快諾した。
もうこの頃になるとマサミさんに対する変なシコリはなくなっていたし
別に構わないと思っていた。
実際僕はこの頃になると友達の家で集まって騒いだり
休みになると平気でバイト先や部活の友達と何日も遊びに行って戻らないことも多かったからだ

一緒に住むことになった事を知らされたユキは
僕の部屋に飛んできて嬉しそうにはしゃいでいた。
マサミさんは僕に申し訳ないといいつつも
「ユキ共々よろしくお願いします」と頭を下げた。
僕が大学へ通いだす直前に引越しが大急ぎで行われた。
引越しというから友達を呼んで手伝わせようか?と
父に言ったら「その必要は無いよ・・」と断られた。
「でも、色々重いものも多いだろ、マサミさん達じゃ色々・・業者では金も掛かるし・・」と言ったが、マサミさんも必要ないのよというばかりだった。

最初は遠慮しているのか?水臭いなと思ったが
実家に荷物を運び込む父達をみて納得が行った。
父の荷物は元々少ない人なのだが、家財道具は殆どなく
家具といえば小さいTVだけ冷蔵庫は処分したらしく少ない食器類を除けば
マサミさんもユキの荷物も衣類品だけで本当に微々たる物だった。
「処分したの?」と父に聞くと「いや、本当にコレだけなんだ」というのだった。
この時思えば遊びに来るユキちゃんの洋服は毎回数パターンだったと思った。
年の割りに背は小さいし細いのも食費を切り詰めていたからなのかもしれないと気がついたのだった。
改めて父とマサミさん達が背負ったものを垣間見て
2人はともかくとして罪の無いユキを不憫におもった。

ユキは初めての自分の部屋と僕のお古の勉強机を貰い喜んでいた。
ただ、元々狭いアパート暮らしで広い部屋に一人は落ち着かないようで
殆ど僕の部屋で過ごし寝るときも僕が居る時は僕の布団に
居ない時はマサミさんや御婆ちゃんたちと寝るようになった。
小さい子供が居ると家が明るくなる

ソレまで僕と爺ちゃん婆ちゃんだけで何処かガランとした寂しい家に
家族が3人増えてとても賑やかになった。
爺ちゃんも婆ちゃんも心なしか元気になったし
僕も家に居るのが楽しくなった。
ミカと一緒に過ごした賑やかな家族が戻ってきたようだった。

ユキは新しい学校に少しずつなれて行き
毎日楽しそうに学校であったことを食事の時間に聞かせてくれた。
宿題を見てあげたり一緒にTVを見たり一緒にお風呂に入ったり
家に居る時は大抵遊んであげた。
僕とユカはすっかり兄妹になっていた。

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僕が大学生になりほど無く父家族と実家暮らしになって数ヶ月
なんとも異質な僕達は意外なほど上手く行っていた。
マサミさんは何かと僕に気を使ってくれ逆にこちらが恐縮するくらいで
何よりユキは本当に良い子でとても良く慕ってくれる

離婚からずっと何処か暗い顔をしていた父や祖父達も元気になって
随分笑顔が戻ったと思う
最初は良い顔をしなかった親戚達も行事のたびに頑張るマサミさんに
少しではあるが対応が柔らかくなったようだった。

何よりユキはこちらへ引っ越してきてから経済的に楽になった分
少しポッチャリしてきて健康的になった。
「あの子良く食べるようになって太りすぎるわ・・」とマサミさんが心配するくらいに美味しそうにご飯を食べている
僕は、元々痩せ過ぎて体も小さかっただけにこの位でも良いと思ったのだが
マサミさんは少し心配していた。

コロッケとご飯を頬張って幸せそうにしてるユキ
僕は隣でホッペに付いた米粒をとってあげていると
ニコニコ笑いかけてくる
ソレを見ていたマサミさんが冗談で
「ユキ〜wあんまり食べ過ぎておデブになるとお兄ちゃんに嫌われるよ」
「ユキおデブじゃないもん!」
「ユキおデブじゃないよね!?」
ユキが必死で同意を求めてくる
「うん、ユキはおデブじゃないよw」
「女の子はこの位でいいよ」と父
「最近あの子お洋服が入らなくなってきてるのよ?」とマサミさん
「成長期だから仕方ないねぇ」お祖母ちゃんがシミジミといいます。

「でも、そろそろ服もくたびれて来たし新しいのを揃えないとな」
と父がマサミさんに言います。
「今度近くのデパートに連れていくつかお洋服選んでくるわ」
「デパート行くの?!」
そのやり取りを聞いてユキちゃんはその場で飛び跳ねるように喜びます。
何時も生活を切り詰めてきたマサミさんやユキにとっては
デパートはとても凄いところだったのです。
食事が終わった後もユキはよほど楽しみなのか
僕の膝の上でTVを見ながらデパートの屋上でアイスを食べるとか
前にニチーに行った時は、あの服を買ったとか話してくれました。

ところが、予定していた日になって急に親戚に不幸があり
祖父も祖母も父もマサミさんも揃ってお葬式の手伝いなどで
家を空けることになったのです。
楽しみにしていたユキは当然朝から大泣きです。
提出する論文の締め切りギリギリで徹夜明けの僕の所に
ユキが泣きながら飛び込んできました。

「ユキ!我侭言わないの!」
「デパートは来週連れて行くからね」とマサミさんや御婆ちゃんがなだめるのですが、1週間この日を楽しみに待っていたユキは聞きません
そんなやり取りを見ていて僕はひらめきます。
「デパートには僕が連れて行くよ」
「どっち道、葬式にユキは連れて行けないんだろ?」
「俺も時間あるしどうせユキと2人でご飯だから外で食べるついでにデパート行ってくるよ」
「いいの?アニさん徹夜で疲れているんじゃない?」マサミさんが遠慮深く言います。
「しかし、お前女の子の着る服とかわかるのか?」
と父が言います。
「大丈夫、なんなら大学の女の子誘って行くし」
ユキが無言で僕の足元でギュッとズボンを掴んできます。
「それじゃあアニに頼むか」と父
「アニ、頼むよわし等の分も買ってやってくれ」と祖父が財布からお金を出そうとします。
「そんな、おじいちゃん困ります。お金は私達で十分に・・」
マサミさんが焦ります。
「孫にこのくらいの事はさせてくださいよ」叔母ちゃんは優しくマサミさんに言います。
しばらくお金のやり取りでモメたあと
父と祖父達から食費と洋服代を預かりいくらか小遣いも貰いました。
「子供の服って結構高いから選ぶ時は出来るだけ大きめのサイズでね」
と色々とマサミさんから教えて貰います。
ユキはデパートに行けるとなるとすっかりご機嫌に戻り
嬉しそうに着ていく服をタンスから出して嬉しそうにしています。

イソイソと準備すると一足先に父の車で皆出かけていきました。
僕は軽くシャワーを浴びて遅い朝食を軽くトーストで済ませ
すっかり準備を整えたユキちゃんと2人で電車で都内のデパートを目指します。
デパートは大学の近くにあるので途中友達の女の子の何人かに電話をかけ
事情を説明すると、たまたまデパートの近くで遊んでた先輩の加奈子さんが捕まった。
加奈子さんはショートカットで下はジーンズにシャツという動きやすいスタイルが多い感じのサバサバした人で男子にも女子にも人気がある
姉御肌で面倒見が良く下ネタとかでも笑ってくれるタイプのおしろい人だ

「よーアニ!可愛い子だね!何処からさらってきたの?」
待ち合わせのマクドナルドでユキと2人シェイクを飲みながら
話していると
急に後ろから首に腕を回されヘッドロックをかけて登場した加奈子さん
何時もこうして急に人を驚かしたり、何かとスキンシップの多い人なのだ
「もー先輩そんな大声で人聞きの悪い事言わないでくださいよW」
僕は周りの視線を感じて慌てて大声で訂正します。
「ハハwごめんごめんw」
そう言いながら僕を奥の席に押し込めるように押して
隣にドカドカと座ってきます。

「もー先輩そんなだから男が出来ない・・・イテッ」
無言で太ももをつねってきます。コレが加奈子先輩の得意技です。
そんな僕と加奈子先輩とのやり取りを見ていたユキは
よっぽど面白かったのかクスクス笑っています。
「はじめましてアニの彼女の岩瀬加奈子ですw」
「ちょっと先輩何言ってんですか!」
加奈子先輩は冗談を言いながらユキと握手をします。
「へへw」
ユキはこの面白い先輩が気に入ったらしく嬉しそうに自己紹介します。

加奈子先輩はこういう感じで誰とでも
直ぐに仲良くなってしまう変な魅力があるのです。
という事で3人で早速デパートに行きます。

加奈子先輩とユキはすっかり仲良くなり
デパートの中ではあっちがいいコッチがいいと
2人して僕を引っ張りまわしては、服やアクセサリをつけて
あーでもないコーでもないとはしゃぎます。
女の買い物というのはアッチコッチいくのですが中々決まらないもので
同じ店を行ったりきたり
あっちが良かったとかコッチが良かったとグルグル回るのです。
そういえばミカやリサちゃん達と買い物行く時もこんな感じだったなぁ
と思い出します。

「ねーどっちがいいと思う?」
黙って付いて回る僕に突然加奈子先輩がふりかって聞いてきます。
来た・・と思いました。
「えーと・・コッチかな・・」
ドキドキしながら言います。
「えーコッチ?」
(やっぱりな)と思います。
この場合ドッチと答えても余り良い結果にならないのです。
正解のない二択を男に選ばせるのは辞めて貰いたい
そもそも本人がどっちかと決めかねているので正解が無いのでドッチを選んでも結局迷うのです。

加奈子先輩とユキは2人で楽しそうに洋服を選んでいきます。
色々選び終えてそろそろ予算がつきかけてきたところで
ユキがあるワンピースの前で立ち止まりズーッと見つめているのです。
綺麗なフリルの付いた白いワンピースです。
「ユキコレがほしいのか?」
「・・・・・」ユキは黙っています。
「でもコレ凄く高いよ・・ここのテナントはキッズブランドだし」
加奈子先輩が店の名前を確認しています。
案の定値札は今まで見て回ってきたお店より0が一桁多いのです。
「お母さんも言ってた・・ココは高いからダメだって・・・」

ユキは前に来た時もここのお店の服が気に入ったけど
マサミさんに高いからダメだよといわれたのです。
「どうしよう・・アニ君に言われた予算ももう殆どないよ?」
加奈子先輩が耳打ちします。
しばらく沈黙が続きましたが

ユキは何を言うまでも無くすっと立ち上がると
僕の手を握り「お兄ちゃん行こう・・」といいます。
僕達は3人で屋上のレストランで昼食を取ることにしました。
3人でハンバーグやスパゲティを頼むと今日買った服などの話題で楽しそうにしています。
「・・・・・・」
注文していた品をユキが美味しそうにほおばるのを見ながら僕は
さっきのワンピースを見つめるユキの横顔を思い出していました。
僕は2人より先にスパゲティを片付けると加奈子先輩にユキをお願いして
席を立ちました。
「お兄ちゃんおトイレ?」
「うん、ちょっと行って来るから加奈子先輩とまっててな」
「うん!」
「きばってねーw」加奈子先輩はケラケラと冗談を言います。
「やだお姉ちゃんw」
ソレを聞いてユキも笑います。

僕は急いで階下に下りると
ATMを探します。僕は自分のバイトで稼いだ貯金からいくらかをおろします。
かなり厳しい金額ですがまたバイトして稼げばいい事だと思い決心しました。

レストランに戻ると二人はハンバーグを食べ終わり
今度は一つのドデカイパフェを2人で突いていました。
「先輩そんなの食うと太りますよ?」
「お、お帰りw遅かったねぇw出た?」
「物食いながらそういう冗談辞めてくださいよw」
「大丈夫だよ私幾ら食べても太らないし」
「いいなぁ・・」ユキが羨ましそうに加奈子先輩を見ます。
「ユキちゃんはそんなに太ってないでしょw可愛いよw」
「本当?!」ユキが嬉しそうに言います。
「うんwだからアニに気をつけなよwロリコンだからw」
「ちょ!先輩なに言いだすんですか!」
「だって私みたいな大人の魅力全開の先輩を前にしてちっともその気にならないじゃないw」
「本気で言ってんですかw」
「へへw」

「お兄ちゃん何か買ったの?」
ユキが目ざとく僕の握ってる紙袋を指差して言います。
「うん、一寸ねw」
「何なに?何をかったの?」ユキが興味深々で聞いてきます。
「秘密w家に帰ったら教えてあげるw」
僕はユキの驚く顔が目に浮かびニヤニヤしてしまいます。
「はは〜んw」
紙袋のロゴを見て加奈子先輩が意味深に言います。
「やっぱりロリコンだ・・」
加奈子先輩がニヤニヤしながらボソッといいます。

それから夕方近くまで3人で先輩のおごりで映画館に行ったりして過ごし
寝てしまったユキをおんぶしながら加奈子先輩と駅で別れます。
別れ際「いいお兄ちゃんしてるみたいじゃんw」
と加奈子先輩は肩を軽く叩いて反対側のホームへ
「今日はありがとうございました!」
後姿に声をかけると、無言で手を上げて男前に答えてくれます。
多分後日色々おごらされるんだろうなと思いました。

沢山の紙袋とユキを背中に抱え何とか家に戻ります。
はしゃぎ疲れて眠るユキをベットに寝かせると
自分も流石に徹夜明けの疲れで眠くなってきてしまいユキと2人で
ベットで寝てしまいました。

何時間過ぎたのでしょうか外がすっかり暗くなった頃
ふと、目が覚めます。
「ユキ?」
隣にユキが居ません・・何時起きたのでしょうか?
僕は心配になり1階に下ります。
「ユキ〜」
家の中で呼ぶと
ユキがリビングから走ってきて抱きつきます。
「どうした?」
ユキは何処か不安げで怯えています。
「知らないお姉ちゃんが・・」
ユキが泣きそうに言います。
ユキと手をつないで僕はリビングへ行きます。
リビングには見覚えの無い女物の大きなバッグが置かれています。
皮製でブランド品の立派な奴です。

台所からはカレーのようなにおいがして
トントントンと包丁がまな板を打つ音がしています。
僕は恐る恐るリビングを抜けて台所へ行きます。

その女性は台所で実に手際よく料理をしていました。
ポテトサラダにカレー・・そのほか沢山の料理が
テーブルに並んでいます・・・全部僕の好きなものです・・

女性は僕に気がつくと振り返ります。
凄く高級そうなブランドの服の上に見慣れたあのエプロンドレスを着て
何処かの雑誌のモデルのように綺麗に髪をセットし
化粧も完璧なミカがそこに立っていました。
1年以上ぶりでしょうか・・
本当に久しぶりに見たミカは何処かの女優のように綺麗で目にした瞬間息を呑みました。
余りにも研ぎ澄まされた美というのは時に刃物のような
鋭利さで見るものを刺す・・といえば言いのでしょうか
ミカの綺麗さは臨戦態勢を感じさせるくらいに鋭く感じます。
何のためにソコまで研ぎ澄ますのか・・そこがミカの怖さなのです。

「ごめんなさい、久しぶりに遊びに来たら誰も居なくて」
「カギはいつもの所だったから勝手に上がらせてもらったのw」
「買い物行ってる間にアニ帰ってきてたけど凄く疲れて寝てたし」
「それで、暇だったからアニに食べさせたかったものを色々作ってたら止まらなくなっちゃったw」
ミカはニコニコとなんでもないかのように話します。
「皆葬式で出かけてるんだ・・もう直ぐ帰ってくるんじゃないかな・・」
「そうなんだ・・あの人たちも?」ミカが冷たく言います。
明らかに僕に対するトーンと違います。
「うん・・」
「一緒に住んでるんだ」
「うん・・・」
「全然知らなかったよ」
「うん」
ユキも僕の様子が可笑しい事を悟ったのか握った手をギュッとして
不安げにしています。

「そうそう・・アニがおきてくる30分くらい前から私の事後ろで見てたんだけど・・その子・・何?」
ミカが明らかに冷たい目で無感情にユキを見て言います。
「・・・・」
「その子があの女の子供?」無感情なトーンで言います。
「そんな言い方はよせ・・妹だぞ・・」
「・・・・・・・フン・・」
ミカはそれ以上何も言わずにきびすを返すと
トントントンと料理の続きを始めます。

「お兄ちゃん・・あのお姉ちゃん怖い・・」
ユキが怯えてコッソリ言います。

その時家の外で車が止まる音がして程なく玄関の扉が開き
父達が帰ってきました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「よぉ〜アニ!ユキちゃんは喜んでいたかね?」
予定の講義を終えて荷物をまとめていると加奈子先輩が声をかけてきた。
「あ、こないだは助かりました。」
「まあまあw可愛い後輩の頼みだし良いってことよw」
おばちゃんみたいに手をヒラヒラさせながら加奈子先輩は笑った。
「ははw」
2人で廊下に出ると話をしながら本館の方へ歩きます。
「まあ、どうしてもお返ししたいなら飲みに連れてってもらおうかな〜」
「いいですよまたサークルの連中誘っていきましょう」
「んw・・それでユキちゃん喜んでくれた?」
飲みにいく話を軽く頷いたあと話を切り替えるように先輩が言う
「あ、・・ああハイw」
僕は一瞬本当の事を言いそうになって焦ってしまった。
加奈子先輩というのは常に自然体なので付き合うこちらも自然にガードが下がりツイツイ本音を言ってしまいそうになる
僕のように秘密が多い、特にいえない秘密が多いタイプには結構気の抜けない相手だ
「そうかそうかw良いお兄ちゃんしてるねぇw」
幸い気がついていないのかニコニコ頷いている
「まあ、年が離れてますからね可愛いですよ」
「そっかー私は兄妹いないからねぇ羨ましいねぇ」
「先輩世話焼きなのにねw」
「やっぱそう見える?」
「見えますよ確りしてるじゃないですか」
「・・・まあそう見えちゃうよねw」
「?・・ああ、で、どうします?希望の日があればその日に調整して仲間集めますけど?」
「え?何が?」先輩が行き成り何の話か解らないという顔で聞いてくる
「や、だから飲み会ですよ」
「あ、ああちょっと今わかんないやwそのうち又連絡するよwじゃね!」
「あ、そうですかじゃあメール又下さい」
「んwじゃねw」

そう言うと先輩はまたヒラヒラを手をふって又別館の方へ戻っていきました。
(危ない危ない)
先輩の後姿を見送りながらこないだの夜の出来事を
危うく先輩に相談しそうになった自分に冷や汗をかいていました。

ミカと僕の関係をどうやって他人に相談するんだ
今の僕の状況を他人に説明するなんて自殺行為に近いじゃないか・・
そんな事を思いながら僕は駅前のレンタルショップに歩いていきます。

そこは大学からも近くサークルのOBの紹介などで
同じ大学の子も多数働いています。
その日はそこで働く友人の都合が悪くなり
そこの店で以前働いた経験がある僕が
代わりに3時間だけ働く事になったのです。
元々その友人にこのバイトを紹介したのが僕なので
店長も軽く了承してくれました。
元々は困った友達の代わりではあったのですが
今の僕は、少しでも家に戻るのが遅れるほうが助かると思い進んで引き受けたのです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ミカと台所で1年と数ヶ月ぶりに顔を見ながら直接話したあの日
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